東日本大震災で被災した合併市町村を対象に、合併特例債の発行期限を5年間延長する法案が今国会で成立する見通しになった。総務省は被災地以外の市町村についても延長できるようにする方針で、地震津波対策の見直しを迫られる全国の合併市町村も国の支援を得られそうだ。
 法案は11日の衆院本会議で可決、参院に送られた。延長対象は被災地の69市町だが、震災の影響で公共施設の建設計画が遅れるといった場合、「被災地以外の合併市町村においても、類似の特例措置を政府として講ずるべきである」との決議も委員会で可決された。

本記事では,「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律案」の審議状況を紹介.
2011年8月10日付の時事通信により配信されているように「民主,自民,公明3党による議員提案」*1による同法案.衆議院*2参議院*3ともに,現在のところ,同法案が掲載されていないため,詳細は把握できず.残念.2011年8月12日付の日本経済新聞に報道されているように,「合併特例債」が現在「発行期間は合併から10年間」であるなか「被災した69の自治体を対象に期限を延長」*4するもの.2011年8月11日に衆議院の決議の際に,「被災地5年間」「というものがいいのかどうか」,「被災地以外の自治体について、類似の措置をする必要がないかどうか」*5があわせて決議された模様.2011年8月12日に開催された記者会見においても総務相からも「少なくとも被災地以外のところで」「延長できるような仕組みを作らなければいけないのではないかという認識」が示されている.
2009年6月16日にまとめられた第29次地方制度調査会の答申では,「平成11年以来の全国的な合併推進運動については,現行合併特例法の期限である平成22年3月末までで一区切りとすることが適当」*6と判断が示され,2010年6月22日に閣議決定された「地域主権戦略大綱」では,「今後は,市町村合併のほか,広域連携の手法等を充実させ,多様な選択肢から最も適した仕組みを市町村自ら選択することによって行財政基盤を強化することが求められる」*7と,「市町村自身が行財政基盤を強化するための方策を自主的に選択」し「市町村合併は,多様なメニューの中の1つ」*8とも解されていた市町村合併.上記の決議での目的から窺えば,必ずしも既合併市町村のみに該当するものではない,とも考えられなくはない.その場合,いわば,「非災/未災自治体」への「奇妙な「エビデンス・ベースト」」*9ともなるのだろうか.今後の具体化の過程も要経過観察.

*1:時事通信(2011年8月10日付)「合併特例債延長法案が衆院通過

*2:衆議院HP(第177回国会 議案の一覧)「議案名「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律案」の審議経過情報

*3:参議院HP(第177回国会(常会)(平成23年1月24日〜 )議案情報)「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律案

*4:日本経済新聞(2011年8月12日付)「合併特例債、被災地以外も延期を 総務相

*5:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年8月12日)

*6:総務省HP(以前の新着情報(会議資料・開催案内・他))第29次地方制度調査会『今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申』(平成21年6月16日)6頁

*7:内閣府HP(内閣府の政策地域主権改革地域主権改革に関する基本文書・閣議決定・工程表等)「地域主権戦略大綱」(平成22年6月22日,閣議決定

*8:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)44頁

地方自治法概説 第4版

地方自治法概説 第4版

*9:金井利之「「想定外」の地方自治の行方」『ガバナンス』No.124,2011年8月,18頁

ガバナンス 2011年 08月号 [雑誌]

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