二〇〇九年度から納税率全国ワーストが続いてきた県は、滞納整理に精通した職員を「徴税マイスター」に選任し、高額案件の処理や人材育成に力を入れている。地道な取り組みで納税率は順調に上昇が続いており、一七年度は最下位を脱する見込みだ。
 「新たな判例を頭に入れて、回収方法を考える必要があるよ」。十一月、川越県税事務所で、マイスター第一号の藤村滋治主幹(58)が熱心に若手職員を指導していた。
 一四年の制度導入から藤村さんら四人がマイスターに選ばれ、市町村では対応が困難な高額事案の指揮や市町村での研修を担当してきた。
 地方税では全国的に、市町村が徴収を担う個人住民税の納税率が低い傾向がある。
 県は、県税に占める個人県民税の割合が課税ベースで39・3%(一七年度)と全国平均の27・7%(同)より高く、納税率全体を押し下げている。
 滞納整理は関係法令が多い上、滞納者との折衝もあり、この道二十二年で豊富な知識と経験を持つ藤村さんには、多くの相談が寄せられる。
 藤村さんは「滞納者と向き合い、時には一緒に納付の計画を考えるなど、粘り強さが必要だ」と強調。感情のこじれを生む差し押さえは「最後の手段」という。財産がなければ、納税猶予や債権放棄の手続きをすることも必要な仕事だ。
 「『税金で生活しているくせに』などと罵声を浴びせられることもあるきつい仕事だ」と藤村さん。「若手職員には、滞納者に自発的に納めてもらえるようになることが一番のやりがいだと伝えたい」と、技能伝授に走り回っている。

本記事では,埼玉県における徴税機構の取組を紹介。
2014年に「納税業務に精通し」「そのノウハウを経験の浅い職員に伝授するために配置される職員」として設置した「徴税マイスター」*1の取組。「比較的規模の大きい事務所やレベルの高い滞納整理に精通した人材が特に必要と思われる事務所」*2への配置方針が示されている。本記事では,同取組の状況とともに,滞納整理による「財源調達」*3の結果を紹介。今後の「技能伝授」の継承は,要観察。

*1:埼玉県HP( くらし・環境税金統計税務統計の小部屋埼玉県税務概況平成27年10月 埼玉県税務概況)「平成27年10月 埼玉県税務概況」10頁

*2:前掲注1・埼玉県(平成27年10月 埼玉県税務概況)10頁

*3:金井利之『行政学講義 日本官僚制を解剖する』(筑摩書房,2018年)335頁

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