前橋市の職員が、一般市民の環境保護活動をリードしようと始めた取り組みが、成果を上げつつある。年明けには、ゴミ減量のために本庁舎内の個人用ゴミ箱を撤去。二酸化炭素(CO2)排出抑制に向け、4月からは通勤手当を見直して自転車通勤を推奨している。実践しやすいものが中心で、企業や家庭でのエコ活動の参考になるかもしれない。
■885個一気に
 本庁舎の各部屋に、個人用のゴミ箱はない。職員はゴミを捨てる時、自席を立って、決められた場所へ。「近くになければ、ゴミは減る」と考えた環境課が主導し、今年1月15日にゴミ箱885個を撤去した。
 その結果、2〜5月のゴミは前年同期に比べて23%(2・14トン)少ない計7・21トンに減少。同課の関孝雄課長補佐によると、最も減ったのは紙ゴミで、職員が再利用することが多くなったという。今年3月に職員754人を対象に同課が実施したアンケートでは、4割に当たる300人が、ゴミ箱撤去後にゴミを出す量が減ったと回答した。「マイはし」や「マイカップ」の使用も勧めている。アンケートでは、3割が「使うようになった」とし、「もともと使っていた」と合わせると、約7割がマイはし利用者になった。昼食時の出前で届く割りばしは、使われないまま業者に返されるケースが多い。
■公用車でも
 今年4月には職員の通勤手当を改定し、自転車通勤者の優遇策に乗り出した。従来は、片道2キロ以上5キロ未満で月額4000円の一律支給だったが、改訂後は自転車5000円に対し、車やバイクは1000円と、5倍もの差をつけた。車利用のケースは3000円の減額になった。
 その結果、初日の4月1日時点の自転車通勤者は、その1か月前の1・5倍近い656人に。車などから自転車に切り替える職員が現れたためで、その分、削減できるガソリンは、環境課の試算で年間4万9948リットル、CO2排出量では約116トンに上るという。昨年10〜12月には、公用車の使用法の改善策として職場対抗の「エコドライブコンテスト」を開催。期間中、「急な発進、停車、加速をしないよう心がけた」という市立前橋高校事務室は、平均燃費を前年度から59%もアップさせて部門優勝した。対象となった115台全体でも、9・3%の向上が確認されたといい、コンテストという動機付けが奏功したようだ。

同記事では,前橋市における,庁舎内での職員個人用のゴミ箱撤去及び,職員による自転車通勤への優遇策に関する取組状況を紹介.
前者については,2009年1月にゴミ箱を撤去した結果,「前年同期に比べて23%(2.14トン)」の減少となったとのこと.まさに「デフォルト・ルール」という「選択アーキテクチャー」により「選択者が自分自身の判断で選択するようにしむける」「義務的選択」「命令的選択」*1によるその効果.
一方で,後者である,2009年4月から実施された自動車通勤から自転車通勤への優遇策に関しては,2008年8月8日付の本備忘録で取り上げた富山県における「職員の通勤時の自動車利用の自粛」への対応として「妄想」してみた(下名,同日付の本備忘録では,「エコ交通手当」と勝手に名称付けておりました),職員の「通勤手当」の改正という,いわゆる「経済手法」*2を採用された模様.特に,自動車利用者に対しては,前年度までよりも大幅に通勤手当の減額されるという「ネガティブな誘因(disincentives)」(167頁)が整備されている.これらは,職員の皆さんの居住地や,日々の天候次第ではあるものの,その利用行動は変化を促すことは想定されるものの,同記事からは「自転車通勤者は,その1か月前の1.5倍」あるとも紹介されており,同手法による効果を同記事からは読み取ることができる.
両課題に対する手法の多様性を考える上では,非常に興味深い記事.

*1:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)143頁

実践 行動経済学

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*2:日高昭夫「政策手法の再編」今村都南雄編著『日本の政府体系』(成文堂,2002年)167頁

日本の政府体系―改革の過程と方向

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