府政や府職員への不満や疑問を20日程度で調査して回答します――。府がこんな触れ込みで、2006年に全国で初めて導入した「府民簡易監査」の利用が、低迷している。地方自治法に基づく住民監査請求の簡易版という位置づけで、請求人の住所や有効期限に制限がない。行政を監視するオンブズマン関係者は「せっかくの便利な制度がもったいない。府政の透明性を高めるために、もっと活用した方がいい」と実践講座を企画している。(沢野未来)
 通常の住民監査請求では、請求対象は公金の支出など過去1年以内の府の財務会計関連業務に限定されている。証拠書類の提示が必要で、請求人は府民のみ。税理士、府OB、府議2人の計4人の監査委員が調査し、結論が出るまでに約60日かかる。請求は少なく、05年度は2件だった。
 このため、府はスピーディーで手軽に利用できるようにしようと、06年6月に府民簡易監査を始めた。府の担当する事業ならすべてについて調査を求めることができ、証拠書類の提示も必要ない。請求人の資格も限定しない。府民簡易監査室の事務局員が担当課の聞き取りや実地調査を行い、代表監査委員が判断。受け付けから20日程度で結果が通知される。
 府によると、これまでの申し立てでは、道路や府営住宅に関する建設事業、生活保護といった福祉施策など、身近な生活に関するものが多いという。07年度には、府警が管理する伏見区の道路のパーキングエリアについて、「表示がわかりにくく、時間制限を超えて駐車違反になった」という申し立てがあり、「60分を超えると駐車違反になる」と大きな文字で書き換えた。また、「府営住宅を申し込む際に、プライバシーに配慮してほしい」という訴えもあり、受け付ける部屋とは別に待機場所を置いたり、仕切りを設けたりした。ただ、請求件数は年間約10件にとどまり、導入時からの総数は48件。同室の中本晴夫室長は「数は予想より少ない。府政を正すきっかけにするためにも、より多くの人に利用してほしい」と話す。
 9月に市民団体「京都・市民・オンブズパースン委員会」が中京区で開いた情報公開に関する勉強会では、制度を紹介した府の担当者に対し、参加したオンブズマン関係者が「周知が不十分なのでは」「『簡易監査』という名前が固い。愛称をつけるなど、親しみやすいイメージにしては」などと指摘。同委員会では12日に、制度を実際に利用する実践講座を開く予定だ。
 NPO法人行政監視機構(城陽市)の半田忠雄理事長は「必要なデータを1か月足らずで入手することができた。市民感覚でおかしいと思って担当課に問い合わせても理屈で丸め込まれることがあるが、第三者の目が入れば、問題の本質が浮かび上がりやすい。行政を是正する手段として活用できる」と話す。府政に関する日頃の疑問を、同制度を活用して解決してはどうだろうか。

同記事では,京都府における「府民簡易監査」制度の実施状況について紹介.同制度については,同府HPを参照*1
同制度の手続は,「「府民簡易監査調書」の様式に必要事項を書いて申立」,「持参」「郵送」「FAX,Eメール」の何れでも受理され,これを受けて,「府の関係機関を調査し,その結果を回答する」こととなる.そして,提出する「府民簡易監査調書」*2においては,まず,「事前確認」として,「既に裁判等で確定している内容」であるか,「裁判で係争中の内容」であるか,「所管部局との接触はあ」るか,「所管部局への調査の際に匿名を希望」するか」の4つに「「はい」または「いいえ」の欄に○」」印を記入することとなる.これにより同制度の該当者が選別されることとなり,前二つの質問に○印が当てはまる,いわゆる「異議申立者」*3としての申出者に関しては,同制度の該当外となる.あわせて,申出者は,「件名」「氏名」「住所」「電話」そして「府民簡易監査内容」を記入することになる.非常に簡便な制度であり,下名も,各講義ノート内でも,監査制度及び住民による統制に関する課題のなかで紹介させて頂いている同制度,
「2006年度」の導入以来「48件」の請求状況にあるという.一部,同記事でも紹介されているものの,その請求内容は,例えば,14件の請求があった平成20年度*4では「府民生活部消費生活安全条例の運用について」(1件),「健康福祉部特別児童扶養手当の支給について」(1件),「アルコール依存症の対策について」(1件),「建設交通部公共工事(砂防、草刈)の実施について」(2件),「里道の管理について」(2件),「教育委員会高校入試の進路指導について」(1件),「警察本部交番の勤務体制について」(1件),「不法駐車等交通取締について」(3件),「所管外介護保険料還付金について」(1件),「社会福祉協議会の運営について」(1件)とある.
「監査の爆発的拡張(the audit explosion)」*5傾向も制度面では窺えるなかで,まずは「物事を監査可能にすること」*6もまた肝要となりそうか.

*1:京都府HP(府政運営・方針京都府監査委員)「府民簡易監査の概要

*2:京都府HP(府政運営・方針京都府監査委員:「府民簡易監査の概要)「「府民簡易監査調書」様式」

*3:鈴木潔『強制する法務・争う法務 行政上の義務履行確保と訴訟法務』(第一法規,2009年)2頁

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

*4:京都府HP(府政運営・方針京都府監査委員府民簡易監査の概要)「平成20年度府民簡易監査の状況

*5:Power,Michael.(2007)“The theory of the audit explosion”Ewan Ferlie, Laurence E., Jr. Lynn, Christopher Pollitt(eds),The Oxford Handbook of Public Management.OxfordUP::326

The Oxford Handbook of Public Management (Oxford Handbooks)

The Oxford Handbook of Public Management (Oxford Handbooks)

*6:マイケル・パワー『監査社会』(東洋経済新報社,2003年)119頁

監査社会

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