高槻市内の違法建築物の行政指導を巡り、元市議が関与したあっせん収賄事件を受け、公正な職務確保と再発防止を目的に、市が4月に導入したコンプライアンス(法令順守)条例。市民からの要望を原則、記録することを義務づけ、職員とのやりとりを録画する専用部屋を設けるなど、オープンにした。その効果を検証する。(山本慶史)
 天井に円形カメラ、テーブルにマイク、別室には監視モニター……。「この部屋には 映像音声記録装置を設置」と掲示された市役所本館の会議室は、条例施行を機に設けた録画部屋だ。市民と職員とのやり取りを映像に収め、録音。別室では、別の職員がモニター画面を注視する。市役所には、同様の部屋が秘書課など計3か所あり、市が雇用する府警OB8人のうち、最低1人が同席する。担当者は「トラブルや不当要求に発展しそうなケースは、訪れた市民の了解の上で案内している」と話す。この部屋を使ったのは計7回。対応した職員は「電話や窓口でどなっていた人が、部屋ではトーンが下がる」。担当者も「見られているという意識が、一定の抑止につながっている」とみる。

 条例では、市に対する要望を▽法令に反する「不当要求」▽特別な取り扱いを求める「特定要求」▽いずれにも該当しない「通常の要望」――などに分類。4〜9月の記録件数は4120件で、公園や街路の草木の手入れの要望が多い建設部(3018件)が最多で、保護者の声を聞く市教委(476件)と続く。
 大半は通常の要望(3259件)で、不当要求25件、特定要求14件とごく一部。不当要求は、職員の罷免、障害等級の変更、保育所入所の優先などで、トラブルに発展したケースはないが、ある職員は「対応した職員だけで処理しようとしていたが、遠慮なく記録も取れて安心感が違う」と、条例の利点を話す。

 一方で、課題もある。記録内容の詳細は公表されず、要望者が一般市民か、市議など公職者かの区別もない。同様の条例のある神戸市が区分を設けるように、どういった立場の人の声なのか、公にする必要がある。
 また、“問い合わせ”程度は、「例外」として記録を必要とせず、その判断は対応した職員に委ねられるため、不正な案件が紛れ込む恐れもある。市の組織全体で情報を共有し、外部の目でもチェックできるか。条例を形骸(けいがい)化させないことが不可欠だ。

同記事では,高槻市における,「高槻市公正な職務の執行の確保等に関する条例」(いわゆる,「コンプライアンス条例」)の取組状況を紹介.同条例については,同市HPを参照*1
同条例では,第6条第1項において,「職員は,要望等を口頭により受けたときは,その内容を確認し,簡潔に記録をするものとする」とされている.勿論,同条同項では,「この場合」の「当該記録をするに当たっては,不実又は虚偽の記載をしてはならない」とも留意も示されている.同条同項でいう,「簡潔に記録」の内容は,同条第2項からも窺うこともでき,つまり,「職員は,要望等の意図及び内容を正確に把握するために,要望等を行ったものに対し,その要望等の内容を記録した書面又は電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識できない方式で作られた記録をいう)の提出を求めることができる」ともあり,「要望等の内容を記録した書面」又は,「電磁的記録」*2とされている.
「電磁的記録」を行うために,同記事では,同市では「職員とのやりとりを録画する専用部屋」を設け,2009年4月1日施行後,現在までに「7回」利用された,という.書面記録に止まらない,「事実は語尾に宿る」*3記録も可能にもなり,更に,「眼差し」*4という規律を通じて,同記事にもあるように,同条例第2条第3号でいう「要望等」,第5号でいう「特定要求」,第6号にいう「特定要求」の分類のうち,「不当要求」に対する「抑制」効果をも想定された取組でもある模様.興味深い(同市庁舎*5を拝見すると,7階建の「本館」内には,計8つの会議室が配置されているものの(ただし,同記事にもある「秘書課」がある2階については,市長室や議場があるためか,確認できず),何れの会議室が3箇所ある「録画部屋」に該当するかは,当然ながら,明記はされてはいない模様).
ただ,同条例第8条にもあるように,「要望者は,職員に対し」て,同条例第6条第1項「前段の規定による記録の内容について確認を求めることができる」とされており,「この場合」は,「職員は,速やかに要望者に対し,当該記録を提示しなければならない」とある.これは,同条例第6条第2項においても,「要望等の意図及び内容を正確に把握するため」と目的が定めらている.ただ,同提出後の対処に関しては,下名の読み方が不正確なのか,同条例は沈黙しているように窺える.そこで,同条例の「要望等の処理フローチャート」」*6を拝読すると,まずは,「要望者から記録内容の確認の申し出」が前提とされ,「記録票の内容の訂正の必要」との判断をされた場合,「記録票の内容を訂正する」ことも想定されている模様.この場合,確かに「要望等の内容を記録した書面」であれば,文章表現等の「訂正」が可能かと思われるものの,「電磁的記録」の場合,仮に「訂正」が求められた場合,どのような対処をされるのだろうか(「録り直し」となるのだろうか).要確認.