茅ケ崎市の職員採用試験が人気だ。県内の他の自治体の多くが最初に筆記試験でふるいにかけた上で面接などを実施している中、同市は、筆記の前に集団面接などで「やる気」や「コミュニケーション能力」を見る方法を採用。さらに都内で開かれる合同企業説明会に担当者が出向くなど、“攻め”のリクルート活動を実施していることも受験者増に効果を挙げているようだ。
 同市が職員採用試験の手法を見直したのは2006年度から。より良い人材を確保するため、「公務員=試験勉強」のイメージを払拭(ふっしょく)した試験を検討。公務員志望だけでなく、民間企業を志望する学生らも受験しやすいようにした。
 同市も従来はペーパー試験の点数を重視し、論文と教養試験の合格者が面接に進む方式を採っていた。それを06年度から、提出されたエントリーシートで受験者のやる気を見極めた上で、集団面接や集団討論でコミュニケーション能力を測り、終盤に一般教養を問う試験方法に変更した。例年、1次で教養試験と専門試験を実施している県人事委員会も「一般的な採用方法ではなく、珍しいのでは」と指摘する。手法変更の効果はすぐに表れた。06年度以前の同市の採用試験の競争率は事務職でみると、10倍台で推移してきた。ところが、06年度実施の採用試験で26・7倍、07年度で21・4倍、08年度で24・1倍。09年度は35人程度の募集に対し、1571人が受験し、競争率は44・9倍にまではね上がった。
 募集の人数や条件などの違いもあり単純には比較できないが、湘南や県央、県西にある自治体では5〜10倍台が多く、茅ケ崎市の人気は突出している。市職員課は「09年度は世界同時不況などの影響が考えられる」としつつも「採用法を変更してから受験者は確実に増加した」と説明。「点数だけでは決まらない試験になり、受けやすくなったのでは」と分析する。また、市は茅ケ崎をPRして応募者数を増やそうと、“攻め”の採用活動にも尽力。市のホームページと広報紙でしか見られなかった募集要項を就職・転職情報サイトにも掲載したほか、東京ビッグサイトで開かれた合同企業説明会に民間企業に交じって参加し、主に大学3年生に「就職は茅ケ崎市へ」とアピール。結果、北海道から沖縄まで全国から受験生が集まってきているという。
 市職員課は「これまでは公務員志望者を各自治体で奪い合う構図だったが、より優秀な人材を採用するためには民間企業志望者もターゲットに入れるべきだと考えた」と説明する。

同記事では,茅ヶ崎市における職員採用試験の取組を紹介.2011年度の採用試験スケジュールについては,同市HPを参照*1
同記事にも紹介されているように,同市資料を拝読すると,4月末から5月上旬に実施される「1次試験」の選考は「エントリーシートのみ」とあり,重ねて「「受験勉強」は全く必要ありません」「事前に出題する内容について,主体的に調べ,考え,アピールしてください」(前掲注1・4頁)とも記されている.その後は,6月上旬に「2次試験」,7月上旬に「3次試験」,7月中旬に「4次試験」そして,「最終合格」と複層的な選考過程が整備され,「個人面接・集団面接・集団討論」と「教養試験」が行われることになる.
このように,いわば「縁故採用排除への幾重もの仕掛け」*2への配慮とともに,何よりも,「筆記試験を重視した採用基準」よりも「面接試験,人物試験が極めて重要な判定材料となっている」(前掲注2・稲継2008:76頁)ようでもある.また,試験日程に関しても,2009年5月17日付及び同年7月26日付の両本備忘録でも言及した「試験日程」の「早期化」*3の様相も窺うことができる.
「通常」とされてきた「採用試験」*4における「成績主義」という「ドクトリン」*5を考えるうえでも,興味深い取組.少し考えてみたい.

*1:茅ヶ崎市HP(市の組織職員課職員採用試験情報職員採用パンフレット)「採用スケジュール、市役所情報」4頁

*2:稲継裕昭『プロ公務員を育てる人事戦略』(ぎょうせい,2008年)78頁

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

*3:福島貴希「都市自治体における職員採用」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)155頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)202頁

ホーンブック 地方自治

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*5:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)20頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)