岩手県西和賀町の細井洋行町長(60)が、合併した旧湯田町と旧沢内村の住民融和を進めようと、執務場所として湯田の本庁舎、沢内の分庁舎を曜日によって使い分ける試みを始めた。行政トップの居場所が「曜日替わり」というのは全国でも異例。合併から4年が経過した今も旧町村意識が強いとされる町内では、町長のアイデアに対し、期待する声と効果をいぶかる声が交錯している。
 細井町長が曜日替わり登庁を始めたのは、初当選から2カ月後の今月4日。「月、水、金」は湯田庁舎で、「火、木」は沢内庁舎で執務する。火、木曜日は決済の関係で、夕方には車で20〜30分かかる湯田庁舎に戻る。
 人口約7000の西和賀町は2005年に誕生した。合併前の湯田町沢内村はほとんど同じ規模で、旧町村の庁舎に新町の機能を分散する「分庁舎方式」を採用している。細井町長は昨年12月、前町長時代に両庁舎に1人ずつ置いていた副町長を1人制に変更した。副町長は現在、湯田庁舎に常駐するため、「沢内庁舎に副町長がいなくなり、住民に不安もあるだろう」と、自身の曜日替わり登庁を考えついたという。旧湯田町長だった細井町長は、合併に伴う町長選で落選。再挑戦した昨年11月、新人2人の争いを制した。2度の選挙とも、旧町村からそれぞれ候補者が立ち、激しくぶつかり合った。
 細井町長は「旧町村意識が住民や職員に残っている。自分が動けば住民との対話の機会が増え、現場で職員の意識改革もできる」と説明。今回の試みを1年程度は続ける考えだ。「平成の大合併」で自治体再編が進んだ結果、役所と住民との距離が遠くなったとの声は多い。首長が定期的に各地を回って住民の声を聞く自治体も増えているが、東北各県は「西和賀町のような方法は、聞いたことがない」(岩手県市町村課)と言う。
 細井町長の取り組みに、住民の反応は「行動力がある」「非効率ではないか」とさまざまで、今のところ「お手並み拝見」といった構えの人が多い。まちづくりにかかわる30代男性は「旧町村どちらにも偏らないという選挙公約の表れだろうが、執務室を替えるだけでは住民の声はすくえない。中身のある住民対話や役場改革を一層進めてほしい」と注文している。

本記事では,西和賀町における町長の執務日程について紹介.
2008年7月1日付同年9月18日付2009年4月17日付の各本備忘録でも見た,いわゆる「分庁方式」.「西和賀町役場の位置を定める条例」では,同町役場の「庁舎」としては「西和賀町役場湯田庁舎」と「西和賀町役場沢内庁舎」の2つを規定.地方自治法第4条の「地方公共団体の事務所の位置に関する規定」では,「ここにいう事務所とは,その主たる事務所」*1と解されることもある.「分庁方式」を採用された自治体の場合には,何れの庁舎を「主たる」基準に合致すると判断し,条例上規定されるものなのか,下名,市町村合併関連については,制度及び実態を含めて,皆目観察を進めていないため,よく分からない課題の一つ.同町の場合,同条例第1条において,「事務所の位置」*2としては,湯田庁舎の住所を規定されている.
両庁舎の執務状況としては,湯田庁舎では,「総務課」「政策推進室」「観光商工課」「建設課」「税務会計課」「教育委員会生涯学習課」が配置されており,沢内庁舎には,「町民課」「保健福祉課」「医療保険室」「農林課」「議会事務局」「監査委員事務局」「教育委員会学務課」「農業委員会事務局」*3が配置.単純に,配置されている部署の「数」で見てみると,沢内庁舎が8課・事務所,湯田庁舎が6課事務所と,沢内庁舎において多く配置されている(職員数は,別途,要確認).では,「町長室」の有無なのだろうかと,両庁舎を確認させていただくと,「町長室」との名称をもつ執務室は,湯田庁舎と沢内庁舎の双方に配置されている.ただ,湯田庁舎では,その設置場所が,同庁舎の「2F」*4であることに対して,沢内庁舎では,「1F」の「正面玄関」から入り目前の「保健福祉課」等の執務空間のその奥に「町長室」*5が配置されていることは,少し異なる.また,「議場」に関しては,沢内庁舎の「3F」に配置されており,湯田庁舎には,議会に関連する空間は配置されていない模様.
果たして,同法同条の解釈にいう「主たる」が持つ含意としては,恐らくは,「なるべく事務所,行政機関というものの場所を,一箇所に便利な所に集中させて,それによって住民の利便を図るようにする」*6と解されているものの,同基準がもつ意味は,2008年12月7日付の本備忘録にて項目立てを試みた本備忘録の妄想的・断続的観察課題の「庁舎管理の行政学」の観点(「第1章:建築と維持のポリティクス」と「第4章:執務と憩いの空間としての庁舎」でしょうか)からも,考えてみたい.

*1:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)65頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*2:西和賀町HP(町の概要西和賀町例規集)「西和賀町役場の位置を定める条例」(平成17年11月1日条例第1号)

*3:西和賀町HP(町の概要)「業務内容と連絡先

*4:西和賀町HP(町の概要役場の案内 )「湯田庁舎・保健センターレイアウト

*5:西和賀町HP(町の概要役場の案内 )「沢内庁舎レイアウト

*6:小岩正貴「地方公共団体の名称,事務所の位置」伊藤祐一郎編著『最新地方自治法講座1 総則』(ぎょうせい,2003年)228頁

総則 (最新地方自治法講座)

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