利用客の減で苦境が続くスキー場。自治体が運営から今季限りで撤退する動きが相次いでいる。
 不況に財政難や合併などの影響が色濃い。スキー場支援で早期健全化団体に転落する町もある。冬の貴重な雇用の場でもあり、閉鎖を巡って山あいの街が揺れている。「平日は1人の客も来ないこともあるよ」。3月末で廃止が決まった新潟県魚沼市営大湯温泉スキー場で、1960年の開業時から管理人の桜井宣雄さん(68)は嘆く。2月の週末も、新雪に恵まれたゲレンデに客の姿はまばらだ。
 魚沼市は2004年に6町村が合併し、5か所の市営スキー場を抱える。赤字は08年度に計1億1200万円に達し、すべての経営から撤退を打ち出した。規模の大きな1か所は民間の譲渡先を探すが、残りも来季で閉鎖する。地元説明会では批判が相次いだ。山本慎一・市観光振興室長は「いま手を打たないと、未来にツケを回す。もっと早く撤退すべきだったが、地域経済や雇用への影響が大きく、引きずってきた」と語る。
 山形県米沢市も市営小野川スキー場を今季で閉鎖する。管理を民間委託するなど努力を続けたが、年約1300万円の赤字。地元では「住民と協力して活性化策を」と存続させる会が結成された。1月下旬の住民説明会で議論は平行線をたどった。
 青森県大鰐町は、大鰐温泉スキー場を運営する第3セクターへの支援で財政が圧迫され、10年度に早期健全化団体に転落する。
 スキー場支援を巡って町は二分。二川原和男町長(68)は「雇用や温泉街への経済効果を考えれば、閉鎖は考えられない」と3セク支援を盛り込んだ補正予算を提案、議会は1票差で可決した。しかし、来季も営業を続けるためには、スキー場支援と町の財政再建の両立を国に示さなくてはならない。そのタイムリミットは3月に迫る。3セクはスキー場拡張などで債務が約60億円に上る。町は約8割を損失補償しており、前途多難だ。(新潟支局 大藪剛史、青森支局 岡部雄二郎)
 長野県は財務分析を開始
 スキーの本場・長野県は、公認会計士らからなる経営支援会議を設立し、1月からスキー場の財務分析などを始めた。多い時に県内で110あったスキー場は94か所(昨季)に。一方、利用客はピーク時(1992〜93年)の3分の1。「すべてが現状のまま存続していくことは困難」。スキー場の今後について県の検討会がまとめた提言は、関係者に衝撃を与えた。財務分析などは提言を受けた取り組みだ。県観光振興課は「どう改善すれば良いのか迷っている経営者は多い」と話す。経営支援会議の結果次第で、スキー場の統廃合が進む可能性もある。(長野支局 太田誠)

本記事では,自治体におけるスキー場経営の状況を紹介.2010年2月12日付の共同通信による配信記事では,「来年の国体冬季大会の開催地」に関して「スキー競技について開催を受け入れる自治体が依然としてない」*1状況が紹介.本日から「第21回冬季五輪バンクーバー大会」が「開催」*2される一方で,本記事を拝読すると,国内におけるスキー場の持続経営の困難さは悩ましい.
本記事でも紹介されている,長野県におけるスキー場経営支援会議は,同県が設置した「スキー場の今後の展開に関する検討会」が2009年1月に取りまとめた『スキー場の今後の展開に関する提言』に基づき,「長野県内104か所のスキー場はどこも,規模,設置の経緯,地域特性,周辺事情,地権者,経営形態など,その置かれている状況は千差万別である.スキー場経営が極めて厳しい中で,複雑な権利関係を背景に経営改善が図られず,今後どう経営改革をしていけば良いのか,廃止しなければならないのかという,今後の経営展開について迷っているスキー場が少なくない」との現状認識から,「今後のスキー場の要望に応じて,その財務分析,潜在的可能性,地域経済への影響などをふまえて,経営指導をはじめ経営統合や廃止に至るまで今後の経営展開について総合的な視点から専門家に相談できる機関」として設置*3
「平成21年9月18日」から「平成21年10月9日」*4までの募集結果を踏まえて,「平成21年度」は,2009年11月に「経営課題の整理及び今後の進め方」を行い,2010年1月には「現地調査財務分析・潜在的可能性等」,3月に「現地調査地域経済への影響等」,5月には「調査分析結果の確認・シミュミレーションによる将来予測等」,6月に「今後の経営展開に関する方向性の検討」を図り,7月迄には,「総括(まとめ)」*5が予定されている.その結果,「経営展開の方向性」については,「スキー場の経営改革」と「スキー場の廃止」という何れの選択肢も想定されている模様.
設立時点での現在と影響力が及ぶ将来時点という「異時点間の二面性の使い分け」*6の様相が如何に把握されるか,興味深い.要経過観察.