豊田市議会/条例案 議員提出へ
 豊田市議会の議会条例検討特別委員会は4日、市都市計画マスタープランなど市の五つの行政計画を策定する際には、議会の議決を必要とすると定めた条例案を決定した。全員協議会などを経て、市議会3月定例会最終日の18日に議員提出する。可決される見通しだ。4月1日からの施行を予定している。岩月幸雄委員長は「議決によって行政計画が実現しやすくなる」と話している。(黄茢)
●権限強化 実現促す
 同市議会は昨年5月、議会を市執行部との二元代表制の一翼と位置づける議会基本条例を制定。これを受けて設置した同特別委員会は1年近くかけて、議会の権限を強化するための取り組みとして、議論を重ねてきた。
 議決対象として、計画が複数の部署にまたがり、市民生活に重要な影響を与えるもののうち、期間が5年以上に及ぶものを検討した。その結果、同市の62ある行政計画から、「都市計画マスタープラン」「新・健康づくり豊田21計画」「教育行政計画」「環境基本計画」「子ども総合計画」の五つを対象とした。これらの計画が4月1日以降、新たに策定、変更、廃止される場合、議決対象とする。また議会による審査は、計画の中の基本方針などについて実施する。個別の事業は含めない。ただ特別委員会では、自治体の最上位計画で、豊田市の場合、「基本構想」と「実践計画」の二段構えになっている「総合計画」の扱いも議論した。だが、具体的な施策を示す実践計画については対象外とした。市の将来像や計画理念を示す基本構想は、地方自治法の規定に基づき、引き続き議決対象とした。
 行政計画の議決に関する条例をめぐっては、市長との対立が続く名古屋市議会が2月25日、総合計画を下位の「実施計画」まで含めて議決対象とする条例案を全会一致で可決した。これに対し、河村たかし市長が「市民の前での議論無しに決めるのはおかしい」と反発し、審議のやり直しを求める事態になっている。こうした状況に対し、豊田市議会の関係者からは、「政治対立が背景にある名古屋市議会の動きと、1年以上の議論を重ねて条例制定にまでこぎ着けた豊田市議会の取り組みを一緒くたにして欲しくない」との声も聞かれる。岩月委員長は「条例には、執行機関を監視する機能があるのはもちろんだが、一方で、計画が議会によって議決されれば、『役所内でまとめた案』以上の公的性格を持つことになり、実効性は高く、行政にとっても事業を進めやすくなる」と話している。

本記事では,豊田市議会における議決事項として,5つの行政計画を議決対象とする方針を紹介.本記事を拝読すると,同条例内では「総合計画」に関しては,対象外とされた模様.
2010年3月5日に閣議決定*1された「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(地域主権改革一括法案)内に含まれる,地方自治法改正案により,同法第2条第4項の「市町村基本構想の策定義務」は「撤廃」*2こととなる(結果的には,「努力規定」ではなく,「撤廃」とされたとの理解でよいのだろうか.国会に提出される法案が楽しみ,要確認).
2009年12月17日付の本備忘録でも言及したように,執行部側には,①「積極的」な基本構想・総合計画制度の策定「廃止」路線,②「慣性」による基本構想・総合計画制度の策定「継続」路線,③「積極的」な基本構想・総合計画制度の「改定」路線という,3つの路線選択*3が想定される.ただ,②「慣性」による基本構想・総合計画制度の策定「継続」路線と③「積極的」な基本構想・総合計画制度の「改定」路線は,内容による区分であるため,制度選択における路線に際しては,外形的には同一の結果とも想定されなくもない(また,分類上は,④「慣性」による基本構想・総合計画の策定「廃止」路線も選択可能ですが,結果的には,①とも大差はないため,以下では除外).
そして,②又は③のいずれかの路線を選択する場合,議会議決の「対象」とする路線(②-1,③-1),「非対象」とする路線(②-2,③-2)に分岐する.そして,議会議決の「対象」路線(②-1,③-1)を選択する場合,その対象化の範囲が,従前の地方自治法上における規定を慣行的に順守され,策定される計画内で(敢て,三層構造的な整理を援用しますと),「基本構想」的な部分を「限定的」に対象とする路線(②-1-1,③-1-1)と「基本構想」的な部分「以外の部分」を対象とする路線(②-1-2,③-1-2)に分岐する.そして,更に,「基本構想」的な部分「以外の部分」を対象とする路線(②-1-2,③-1-2)に関しては,「基本計画」的な部分を「限定的」に対象とする路線(②-1-2-1,③-1-2-1),それ以外の部分(つまり,「実施計画」的な部分)も対象とする路線(②-1-2-2,③-1-2-2)に分岐することが想定される.
以上の制度選択の路線整理からすれば,地方自治法改正の下での基本構想・総合計画制度としては,(②と③の路線を同一と捉えるならば)5つの制度選択の可能性が想定できそう(路線①,路線②-1-1,路線②-1-2-1,路線②-1-2-2,そして,路線②-2).
本記事内でも紹介され,2010年2月25日付の中日新聞にて報道された,名古屋市議会にて「委員会や本会議での議論もなく即日」「全会一致で可決」*4されたものの,同年3月3日には「不服として,再議を申し立」*5られた,「市の総合計画の策定に議会の議決を必要とする条例」*6に関しては,上記の路線選択では,路線②-1-2-2に該当しそう.「仕組みとしての地方自治」による義務付けから,「個々の仕組み」*7による制度選択の下において,今後,各自治体では,基本構想・総合計画制度において,いずれの制度選択を進められるか,要観察.

*1:首相官邸HP(官房長官記者発表平成22年3月)「平成22年3月5日(金)午前

*2:内閣府HP(地域主権地域主権戦略会議会議開催状況地域主権戦略会議(第2回)(開催日平成22年3月3日(水)議事次第・配布資料)「参考資料5地方自治法の一部を改正する法律案の概要」2頁

*3:松井望「総合計画制度の自由度と多様性」『自治体法務Facilitator』Vol.24.2009年10月号,21-22頁

*4:中日新聞(2010年2月25日付)「名古屋市議会、議員提案条例を初可決 市総合計画に議決必要

*5:読売新聞(2010年3月4日付)「市長、議会改革3案提示市会議運 再議申し立ても

*6:前掲注4・中日新聞(2010年2月25日付)

*7:金井利之「地方自治のミ・ラ・イ第3回 「「歪み」を排した住民投票制度は可能か」『ガバナンス』No.86,2008年6月号,83頁

ガバナンス2008年6月号

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