東北一の繁華街、仙台市青葉区国分町に市が建設した地下駐輪場の利用の低迷が続いている。有料化して1年以上経過したが、収容力1000台に対し、1日平均の入庫は200台以下にとどまる。6億円の巨費を投じた放置自転車対策の切り札は一転して、お荷物になりつつある。
 駐輪場があるのは、国分町交番隣の元鍛冶丁公園。2008年12月に開設し、機械式で地下に収容する。24時間営業も売りだ。駐輪場の利用は、周知期間として無料だった開業当初から伸び悩んだ。昨年4月に有料化し、今年3月までの1年間の1日平均入庫数は184台。がらがらの状態が続いている。料金は1回24時間までで50円。単純計算では建設費はおろか、年間維持費(約1600万円、09年度見込み)を賄うことすらままならない。
 不人気の一因には、駐輪場の知名度不足に加え、事前登録など敷居の高さが指摘される。「結局、路上駐輪で金を掛けない方がいいのだろう」と利用者の1人が話すように、自転車マナーの改善が進まないことも背景にあるようだ。
 ただ、駐輪場の使い勝手の評判は必ずしも悪くない。近くで飲食店を営む男性(48)は「国分町で働く人間にとって使いやすく、ありがたい存在。ほぼ毎日利用する。定期で月1000円という料金も不満はない」と合格点を与える。
 市が駐輪場建設を決断したのは06年。当時の梅原克彦市長は、夕方から夜にかけて放置自転車が最大2000台程度に達する状況の打開を目指した。開業から約1年半。「切り札」は、奏功していないのが実情だ。市道路管理課は「地元団体と連携して周知活動を繰り返している。放置自転車は減ってきたが、駐輪場の利用は浸透するまで時間が掛かる」と引き続き理解を求める。国分町地区は市の条例で自転車やバイクの放置禁止区域に指定されており、市は放置自転車を定期的に撤去している。月2回程度の夜間撤去は本年度も継続する方針だ。

本記事では,仙台市において設置された地下駐輪場の利用状況を紹介.本記事で紹介されている駐輪場は,「元鍛冶丁公園駐輪場」.詳細については,同市HPを参照*1
同駐輪場における自転車の「収容台数」は「1,008台」.その料金は「一時利用」が「24時間ごと」に「50円」,「回数券利用」の場合,「一時利用12枚組」で「500円」と,毎回支払う場合よりも金額としては2回分を多く利用することが可能,「定期利用」の場合には,「1ヶ月」「1,000円」,「3ヶ月」が「2,900円」,「6ヶ月」が「5,600円」とされている.
ただし,本記事でも紹介されているように,その利用に際しては,「不完全なコミットメント(imperfect commitment)」*2を回避されるためであるのだろうか,「機械式駐輪場のため,利用できる自転車に制限」が設けられており,「事前に利用可能な自転車であることを確認し,利用可能であることを表す『ICタグ』を自転車に取り付け」る,「受付(車検)が必要」*3とされている.本記事では,「1日平均の入庫は200台以下」と報道.駐輪場利用の料金に関しては,同市における他の駐輪料金とも均一*4であることから想定すると,唯一異なる要因である「利用方法」において,利用前の車検手続が介することにより,結果的に,1回のみの短期的利用者はその手続費用を回避することになり,回数券利用者,定期券利用者という長期的契約者の利用に限定されている,とも窺えそうか.
同車検手続に際しては,「情報提供」「利益誘導」に分類される「直接顧客に働きかける方法」*5として,「受付の所要時間は3分程度」,「受付に要する費用は無料」を提供されているものの,本記事を拝読すると,「選択者が自分自身の判断で選択するようにしむける」*6にまでは,至っていない模様.2010年4月11日付の本備忘録でも記した,本年度の学部演習における共通研究課題の一つでもあり,自治体における公共交通に関する政策執行の観察対象として,考えてみたい課題.

*1:仙台市HP(交通・道路仙台の道)「元鍛冶丁公園駐輪場をご利用ください

*2:ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ『組織の経済学』(NHK出版,1997年)32頁

組織の経済学

組織の経済学

*3:前掲注1・仙台市(元鍛冶丁公園駐輪場をご利用ください)

*4:仙台市HP(交通・道路仙台の道)「市営自転車等駐車場の利用料金及び利用方法

*5:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)63頁

許認可行政と官僚制

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*6:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)143頁

実践 行動経済学

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