札幌市は健康志向の高まりなどを背景に通勤に自転車を利用する層が増えたことなどから、今後10年間で実施すべき施策をまとめた「札幌市自転車利用総合計画」を策定した。都心部で駐輪場の足りない状況を改善するため、駐輪場を整備する事業者向けに助成金を支給するなどの促進策を検討する。歩道に駐輪するケースが増えていることから、放置禁止区域を拡大することも盛り込んだ。10日に公表する。
 現在、大型の商業施設を新設する場合は条例で駐輪場を設けるよう定めているが、オフィスビルにも対象を拡大することを検討する。さらに、新設の施設だけに駐輪場の設置を義務付けるだけでは「整備に数十年の長い年月が必要」と指摘し、関係者と協議しながら既設の建物でも集客施設が入居した場合などには整備を義務付けることも課題とした。近隣の事業者が協力してつくる共同駐輪場や、1台の自転車を複数の人が共有して利用するコミュニティーサイクル制度も推進する。これらへの優遇策としては、助成金のほか低利融資制度も視野に入れる。
 同市の調査では通勤・通学などで自転車を利用する人がこの20年間で約3.4倍増えたが、都心部では駐輪場の許容台数が全利用台数の半分程度にとどまっている。

本記事では,札幌市において策定された「札幌市自転車利用総合計画」の取組方針を紹介.同計画に関しては,同市HPを参照*1
本記事でも紹介されている2002年から施行されている同市の「札幌市自転車等駐輪場の設置等に関する条例」の執行状況に関しても,同計画内で紹介されており,「平成20年度末」で「4,597台」分が整備されるものの,「地下鉄・JR駅周辺における公共駐輪場の整備台数約48,000台の10分の1」*2の現状.ただ,「現行制度だけでは整備が進まない状況」*3に対して,同条例が規定する基準は,他都市よりも「基準が緩やか」として,「対象施設,原単位,足切り基準」*4「条例の見直しを行う」とともに,「駐輪場整備への支援・優遇策」「共同駐輪場の整備支援など,様々な手法を組み合わせた」*5,いわゆる「ポリシーミックス」*6を通じて,「民間による駐輪場整備を促す」方針の模様.
同条例基準の見直しと金銭的誘因の整備とともに,「ポリシーミックス」のなかでも,民間企業においてもまた,存外,駐輪場整備による「レピュテーション(評判),慣習等の規範」*7の役割もまた一定の効果が期待できそうか.整備状況とその駐輪状況は,要経過観察.

*1:札幌市HP(くらし・手続き交通交通計画・施策自転車札幌市自転車利用総合計画)「札幌市自転車利用総合計画」(札幌市,平成23年5月)

*2:前掲注1・札幌市(札幌市自転車利用総合計画)18頁

*3:前掲注1・札幌市(札幌市自転車利用総合計画)53頁

*4:前掲注1・札幌市(札幌市自転車利用総合計画)55頁

*5:前掲注1・札幌市(札幌市自転車利用総合計画)53頁

*6:奥真美「政策法務の理論と実践」首都大学東京都市教養学部都市政策コース編, 和田清美監修『逆発想の都市政策』(ぎょうせい,2011年)59頁

逆発想の都市政策

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*7:前掲注6・所収(白石賢「政策決定とインセンティブ」)271頁