県は4日、公共交通の空白地域の移動手段について検討する「県生活交通確保対策会議」を発足させた。牛尾長生副知事と県内全60市町村の首長で構成。県内の過疎地域では、バス運営会社が赤字路線を廃止する動きが相次いでいるため、代替となるコミュニティーバスを市町村が連携して運営するなど、生活交通の確保を目指す。
 県によると、2006年−09年度までにバス事業者から廃止の申し出があったのは98路線189区間。うち147区間の廃止が決定している。自治体は代替策としてコミュニティーバスなどを運行しているが、09年度の運営費は総額約10億円と5年前の約2倍に膨れ、年間約5千万円を負担する自治体もあるという。
 この日の初会合には、60市町村のうち約半数の首長が顔をそろえた。冒頭、麻生渡知事が「公共交通が撤退する一方で、高齢者が取り残される地域がある。住民の(交通)需要を把握し、持続可能な対応を検討してほしい」と呼び掛けた。会合では、(1)住民の交通需要の把握(2)他県の先進事例の分析(3)コミュニティーバス普及に向けた課題の検討(4)NPO法人との連携‐などに取り組むことを確認。同会議の下部組織として、自治体の課長レベルでつくる幹事会と、県内を15の地域に分けた地域別会議を設け、きめ細かな対応に努めていくことも決めた。行橋市の八並康一市長は「コミュニティーバスの広域運行など、一つの自治体ではできないことが協力すれば可能になる。会議で方向性が見いだせれば」と期待した。

本記事では,福岡県に位置する60市町村と同県により構成される「生活交通確保対策会議」が開催されたことを紹介.同会議の詳細に関しては,同県HPを参照*1
同会議では,「公共交通の利用者が減少し路線バスの減便・廃止が相次」現状とともに,「地域住民」には「最も身近な移動手段であるコミュニティバス等生活交通の維持確保」が「県民が快適に生活する」うえで「ますます重要な課題」との課題認識に立ち,「市町村」では「コミュニティバスの運行や路線バスへの運行費助成など様々な取り組みが進め」つつはあるものの,「単独市町村だけでは解決困難な問題」があるとの課題認識から,「より広域的な観点から県と市町村が連携して生活交通に係る諸施策を立案し,実施」*2することを目的として,設置.
その「構成」は,「副知事,市町村長」となり,「推進体制」としては,「副知事,市町村長」から構成される「福岡県生活交通確保対策会議」,福岡「県広域地域振興課長・企画交通課長,市町村生活交通担当課長」から構成され,「各地域別会議の協議結果をとりまとめて整理するととも」「市町村共通の課題について,検討・協議を行い,対策会議に報告」する「幹事会」,そして,福岡「県広域地域振興課長,福岡県広域地域振興圏域を基本とした圏域毎の市町村生活交通担当課長」から構成され(「広域地域振興圏域」は「通勤・通学等の人口動態,地理的状況,歴史的経緯等を総合的に勘案の上,生活圏域としての実態を踏まえ県内を15圏域に分類」),「圏域毎の実態を踏まえ」,「圏域毎に継続可能なコミュニティバス等生活交通確保方策」を「検討・協議を行い,幹事会に報告」する「地域別会議」*3の三層から構成される.
本記事でも紹介されている,同会議の「検討・協議事項」としては,まずは,「生活交通体系の現状分析」と「先進事例の調査・研究」を進めるとともに,「コミュニティバス普及のための課題」として「市町村域を超えた広域的運行等」を検討され,加えて,「地域の実情に応じたコミュニティバス運営方法のあり方」として,「乗合タクシー・デマンド運行等多様な運行形態の導入」「NPO法人やボランティア団体との連携」「スクールバス等既存の交通資源の利活用等」,「県と市町村の役割分担」*4を検討・協議される予定とのこと.
2010年5月18日付の本備忘録で取り上げた,青森県における「路線バス」に関する「バス路線再編」の取組に対して,本記事では,福岡県内に位置する市町村で運行されている「コミュニティバス」の「広域的運行」検討の取組.県レベルにおける,狭域に限定されず,広域的観点からの「広域調整機能」*5を通じて,「コミュニティバス」ならぬ,いわば,「リージョンバス」(又は,「リージョナルバス」)とも呼べそうな取組.興味深い.
2010年6月4日に国土交通省において開催された「行政事業レビュー」*6では,「コミュニティーバスなど地域の足の確保を支援する「地域公共交通活性化・再生総合事業」(40億円)」に関しては,「いったん廃止し,より効果的な支援策を検討」*7される方針が報道されるなかで,国からの「補助」を前提とされた「政策選好」*8がないなかで,「自治体間の横の連携」*9により,既存の「路線バス」との相補性を図りつつ,線的配置される「コミュニティ」の間を結び,より面的な連携を図るることとなるか,要観察.
同課題,本年度の学部演習における共通研究課題として,自治体における公共交通への政策提案の検討を進めるなかで,昨日開催された回のなかで,「コミュニティバス」がもつ課題への対策としても,意見として同案.実際にも取り組まれるとなると,これまた,興味深い.検討状況は,要経過観察.

*1:福岡県HP「「福岡県生活交通確保対策会議」を設置

*2:前掲注1・福岡県(「福岡県生活交通確保対策会議」を設置)

*3:前掲注1・福岡県(「福岡県生活交通確保対策会議」を設置)

*4:前掲注1・福岡県(「福岡県生活交通確保対策会議」を設置)

*5:岩崎忠「タクシー新法と協議会(1)」(『自治実務セミナー』第48巻第12号,2009年12月号,38頁

*6:国土交通省HP(政策・仕事予算・決算・税制等平成22年度行政事業レビュー)「公開プロセス

*7:共同通信(2010年6月4日付)「救急相談窓口整備を廃止 4府省が行政事業レビュー

*8:金井利之「国・自治体間関係における法制と財政」『ジュリスト』No.1387,2009.10.15,164頁

Jurist(ジュリスト)2009年 10/15号 [雑誌]

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*9:田口一博「自治体間の横の連携」森田朗・田口一博・金井利之『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)154-155頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

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