宮城県石巻市が、閉店した百貨店の空きビルを3月に新庁舎として復活させた。新設に比べ費用を大幅に軽減。JR石巻駅前という立地を生かして中心街の活性化も狙っており、同様の移転問題を抱える全国の自治体から視察団が訪れている。
 「年金や税務申告など、よく利用する窓口が2、3階に集まっており、使い勝手が格段に良くなった」
 6階建てビルの2〜6階を市が使用。地元スーパーに貸した1階部分の入り口近くには住民票などの自動交付機を設置した。各フロアには中央部のエスカレーターを取り囲むように各課を配置。仕切る壁はなく、見通しは良い。市は「窓口サービスは改善した」と自信を見せ、訪れた市民らの評判も上々だ。
 石巻駅の南約1・5キロの旧庁舎は1958年に建設された。老朽化に加え、業務拡大に伴い分庁舎が四つとなって市役所機能が分散。2005年には1市6町が合併して現在の石巻市が誕生したが、旧6町からのアクセスの悪さも不評だった。合併をきっかけに移転を検討していたところ、08年1月に「さくら野百貨店」が閉店を発表。床面積など条件を満たしたため、約半年後に移転を決め、百貨店側から無償で建物を譲り受けた。

本記事では,石巻市における庁舎に関して紹介.
テレビ朝日ナニコレ珍百景」の「2010年8月4日」に「珍百景No.683」「リサイクルな建物」*1として放映された同市庁舎.2010年6月4日付の本備忘録で取り上げた,甲州市によるショッピングセンターの「改装」による庁舎利用と同様に,同市においても,民間空きビルの庁舎化の取組.興味深い.同市本庁舎の画像及び各階の配置に関しては,同市HPを参照*2(桃色の壁面が印象的ですね).
各階のフロアーは広く,「一所の執務空間」*3の「大部屋主義」であることは勿論,2010年5月2日付の本備忘録で取り上げた立川市のように,「職場組織」の物理的「形成原理」としての「大床主義」とも整理ができそう.上記の甲州市では,「地下1階」に「店舗入居用スペース」を設けられた一方で,同市の6階建ての「本庁舎」の「1階」では,「執務スペース」としては,「総合案内コーナー」「証明書自動交付機」「夜間休日受付」「石巻市図書館返却ボックス」が配置されているものの,その大半は「商業スペース」*4.また,庁舎西側には,各階に併設するように「立体駐車場」が配置されており,「立体駐車場」に関しては,「60分まで無料」「以降30分ごと150円」の一方で,「窓口申請などの来庁者は無料」*5とされているものの,2008年6月24日付同年12月6日付2009年1月9日付同年12月21日付2010年1月25日付の各本備忘録にて取り上げた,2006年の地方自治法改正(第238条の4第4項)による行政財産の貸付範囲の拡大の運用次第では,更なる利用料収入も見込めそうか.2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを試みた本備忘録における妄想的・断続的観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」の観点からは,「第5章:財源としての庁舎」,「終章:行政財産の転換期とその可能性」と位置付けることができそう.興味深い.
「行政の一線に立つ人たちの“文化”が新しいオフィスで変容することもある」*6とすれば,「百貨店の空きビル」を利用された同庁舎においてもまた,建物の「その場に宿るもの」*7を反映し,執務文化の変容を観察することができるのだろうか.要確認.

*1:テレビ朝日HP(バラエティ)「珍百景コレクション 2010年8月4日OA

*2:石巻市HP(石巻市のご紹介庁舎案内)「本庁舎案内図

*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)73頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*4:石巻市HP(石巻市のご紹介庁舎案内本庁舎案内図)「本庁舎1階配置図

*5:前掲注2・石巻市(本庁舎案内図)

*6:御厨貴『権力の館を歩く』(毎日新聞社,2010年)18頁

権力の館を歩く

権力の館を歩く

*7:佐藤彰「第4回地霊 場に宿るもの」鈴木博之東京大学建築学科編『近代建築論講義』(東京大学出版会,2009年)74頁

近代建築論講義

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