広島市中区基町の広島県庁内で、半世紀以上にわたって職員や周辺住民に親しまれてきた売店「物資部」が、来年3月末で閉店する。売り上げの低迷や、職員向けの物資確保という本来の目的が薄れたため。市中心部の「身近なスーパー」の閉店に、常連客からは惜しむ声も出ている。
 物資部は、県庁敷地の南側に位置する農林庁舎地下1階にある。「民業圧迫」を避けるため看板はない。ほぼワンフロアを占める約580平方メートルの店内には食料品や日用品、衣服、書籍、化粧品など商品が所狭しと並ぶ。物資部は1952年、地方職員共済組合県支部が開店した。職員に生活必需品を供給することを目的に掲げる一方、住民の利用も受け入れてきた。県は、職員の福利厚生を理由に庁舎使用料を免除。同組合は営利を追求せず、商品の多くを割引価格で提供する。
 来店客は基町、白島地区の住民に加え、市民病院の通院患者も多い。バスを待つ間に訪れる呉市江田島市の常連客も。高齢の女性が目立ち、会話を楽しむ場にもなっている。ピークの91年度には地方事務所の店舗も合わせ約60億円を売り上げた。しかし、コンビニ出店の影響や職員利用の低迷などで昨年度は約17億円に減少。将来にわたり経営することが困難として閉店に踏み切ることにした。

本記事では,広島県に設置されていた物資部が閉店される予定であることを紹介.同部の配置に関しては,同県庁舎の配置図を参照*1.本記事にて紹介されているように,同庁舎敷地内の最南に配置された農林庁舎の地下一階で運営されている模様.更になる詳細は,共済組合による運営であるためか,同県HPでは把握できず,残念(随分と前に,同県庁を伺った折に,訪問しておけばよかったですね,残念).
本記事を拝読させて頂くと,「職員向けの物資確保」から「身近なスーパー」への目的の転移が生じるなかでも,周辺店舗への配慮,そして,同部の利用される「対象者のための最良の利益あるいは最大多数のための最大のためと主張される」「公式」あるいは,又は「非公式の政策」となるよう「看板はない」運営がなされており,見方によれば同部を認知されている方に限定された,「対象者に対する差別待遇」*2が図られてきたとも整理できなくはない.広告に対する自制的な方針も十分に理解ができるのの,2010年8月25日付の本備忘録にて紹介した宮城県知事による,庁舎は「県民の財産」という認識の顰に倣えば,多くの同県民に広く利用されるような,案内の可能性もあったのではないだろうか.
同部閉店後の同庁舎空間の利用に関しては,2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを試みた本備忘録における妄想的・断続的観察課題のひとつである「庁舎管理の行政学」の観点からは,「民業圧迫」ならぬ民業優先により,民間事業者の出店を図ることで,「第5章:財源としての庁舎」としての可能性を検討されることも一つの路線とも考えられなくもない.また,本記事でも紹介されているように,「高齢の女性が目立ち,会話を楽しむ場にもなっている」ことからすれば,同部の規模を縮小しつつ,又は,運営主体を変更するなどにより,同部的機能の空間を持続され,「橋渡し型」*3としての空間利用の設計も検討されることも一つの路線として考えられそうか.同部の閉店後の同空間の利用方針も,要経過観察.

*1:広島県HP(県庁のご案内アクセス・庁舎配置・連絡先等県庁建物別各室(課)配置)「農林庁舎フロア別各課(室)配置

*2:マイケル・リプスキー『行政サービスのディレンマ』(木鐸社,1986年)161〜162頁

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*3:ロバート・パットナム『孤独なボウリング』(柏書房,2006年)20頁

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