福岡市は15日、児童虐待防止への取り組みを強化するため、2011年度に弁護士1人を職員として雇用すると発表した。市によると、全国の自治体では初の試み。児童相談所にあたる「市こども総合相談センター」(中央区)に常駐し、虐待を受けた子どもを親から引き離す「職権保護」など法的な対応が必要なケースで、助言や支援を行い、迅速な対応を目指すという。
 同センターによると、児童虐待防止法では、虐待が深刻な場合、児相所長の権限で親の同意なしに職権保護できるが、拒否する親が少なくない。法的根拠を説明しても理解が得られず、保護した後、親権を主張して、強引な引き取りを要求する親への対応に苦慮してきたという。数年前から月2回弁護士に来てもらい、対応について相談していたが、虐待から子どもを守るためには踏み込んだ対応が必要だと判断、常駐することになった。今後は親との面会などで職権保護や親権の制限について法的な根拠を弁護士から説明してもらったり、虐待の疑いが強い家庭への立ち入り検査や、臨検・捜索などで必要な法的手続きについて助言を受けたりする。
 市条例に基づき、専門家を期限を定めて雇う「特定任期付職員」として雇用する。任期は5年で給与は月40万―50万円を想定。県弁護士会を通じて人選中で、4月1日の配置を目指す。市によると、市内の職権保護の件数は年間十数件で推移していたが、07、08年度が各29件、09年度は47件と急増。10年度は1月末時点で61件に上っている。同センターの藤林武史所長は「法的な対応に頭を悩ませていた。弁護士が身近にいてくれると心強い」と話している。

本記事では,福岡市において,「児童相談所」に弁護士を1名常駐される方針であることを紹介.
同市の「平成23年度当初予算案」を拝読させて頂くと,「児童虐待防止事業」として「児童虐待防止体制の強化」*1を図り,加えて「法的対応など専門性の向上を図るため」に,「弁護士資格を有する職員を配置」*2される内容として,3958,000円が計上(本記事で掲載されている当該職員の「給与」は,当該予算に該当されるのでしょうか,要確認).
「現在のわが国の児童虐待対応は,児童相談所と保護者との対立が限界に近いところまで達している」*3とも解されるなかで,本記事を拝読させて頂く限りでは,特に,「親権の壁」*4を考慮されて配置される方針の模様.「専門職的権威と当事者主体の間」の「ジレンマ」*5の解消にも資することも期待されそう.同職,常勤となる場合,同所内に配置されている,「職人気質」的に「独自に経験的に身に付けた」*6「独自のノウハウ」*7に習熟された既存の専門職との間での日常的な業務分業・協業においては,その専門性から「個室主義」*8的な運営となるのだろうか.予算成立後に配置された同職の執務状況は,要観察.

*1:福岡市HP(市政情報財政・市債・公売予算平成23年度の予算平成23年度当初予算案)「平成23年度予算案の特色・新規事業・完了事業」12頁

*2:福岡市HP(市政情報財政・市債・公売予算平成23年度の予算平成23年度当初予算案)「平成23年度予算案の特色・新規事業・完了事業」11頁

*3:川崎二三彦「児童虐待の実情と課題 対応現場で見えるもの」『ジュリスト』no.1407.2010.9.15,85頁

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

*4: 安道理『走れ! 児童相談所』(文芸社,2009年)158頁

走れ! 児童相談所

走れ! 児童相談所

*5:本多勇,木下大生,後藤広史,野村聡,後藤広史,内田宏明『ソーシャルワーカーのジレンマ』(筒井書房,2009年)74頁

ソーシャルワーカーのジレンマ―6人の社会福祉士の実践から

ソーシャルワーカーのジレンマ―6人の社会福祉士の実践から

*6:前掲注4・安道理2009年:193頁

*7:前掲注4・安道理2009年:61頁

*8:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)183頁

ホーンブック 地方自治

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