和歌山県は、景観を悪化させている廃虚などを住民の要請を受けて所有者に撤去するよう命令できる条例案を14日開会の県議会6月定例会に提案する。施行は来年1月予定。新築ではなく現状の建物について規制し、命令を出せる制度は全国でも珍しいという。
 名称は「景観支障防止条例」。従来の景観条例などでは、新築や増築など新たな行為が規制の対象だったが、今回の条例ですでにある建物に対しても規制できるようにした。条例では、建物の外観が周辺に悪影響を及ぼさないように規制し、景観に支障を与える廃虚とならないよう維持保全するように所有者の責任を明確にする。破損や腐食の著しい建物については、当該建物の周辺住民が共同で所有者に除去や修繕を行わせるように知事に要請できる。景観審議会で要請を受けた建物の景観について検討した後、知事が所有者に対して撤去などの措置をするように勧告する。勧告を受け入れない場合は、一段と厳しい命令を行うことができる。命令にも従わず、公益に反していると認められた場合には、行政代執行による撤去などが行われる。
 条例が施行される以前から廃虚状態の建物についても、命令の対象になる。規制は、さかのぼって適用できないが、撤去することで生じる地価の上昇などを差し引いた上で、県が所有者に対して損失補償することで命令を可能にしている。県都市政策課によると、2008年度の調査で県内の空き家率は9・1%で、全国1位。県内にある建物の総数のうち約1割が空き家状態で、人口減少が進む中、適切な維持管理が課題となっていた。

本記事では,和歌山県における廃虚となった建物対策に関する条例案の提出方針を紹介.同条例案の概要に関しては,同県HPを参照*1
条例案の名称は「建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例案」.「建築物等を廃墟にしないように最低限の規範を規定」されており,「建築物所有者等の責務」として「建築物等の外観」を「周辺の良好な景観に支障となる廃墟とならないよう維持保全維持保全に努めなければならない」とされ,あわせて,「建築物等の状態規制」が置かれ,「建築物等の外観」に関しては「著しい破損,腐食等」で「周辺の良好な景観と著しく不調和な状態(景観支障状態 景観支障状態)であってはならない」ことが基本的な方針.加えて,本記事でも紹介されているように「周辺住民からの要請をもって必要な措置の勧告や命令を発出」できることと規定されており,まずは「景観支障状態である廃墟の周辺住民」が「除却などの措置をとるよう共同で要請」し,次いで,「必要と認められ」た場合「除却などの措置をとるよう勧告」,そして「勧告に従わない場合で特に著しい景観支障状態のものについては命令」*2に至る手順が規定されている模様.
「除却等の措置に係る費用」は「原則,所有者等の負担」*3ともあり,廃墟の所有者に対しての「環境公益」*4からの措置.そのため,「景観支障状態」「景観支障状態」をいかに確定され,「機能不全」*5とも指摘されることもある「代執行」を実施されることを想定されているのか,提出される同条例案は要確認.

*1:和歌山県HP(わかやま県政ニュース景観支障防止条例(案)について (県土整備部都市住宅局都市政策課)公開日6月7日)「建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例案 (通称:景観支障防止条例)

*2:前掲注1・和歌山県(建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例案 (通称:景観支障防止条例)

*3:前掲注1・和歌山県(建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例案 (通称:景観支障防止条例)

*4:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)52頁

環境法

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*5:櫻井敬子『行政法のエッセンス』(学陽書房,2007年)160頁

行政法のエッセンス

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