大阪維新の会」代表で前大阪府知事橋下徹氏が19日、大阪市長に就任し、市役所に初登庁した。「大阪都構想」を先取りする形で、市内24区長の全国公募を同日から始めた。全区長の公募は政令市で初めて。更に、都構想の制度設計を担う「大都市制度改革監」の新設など、89人の人事異動を発令した。午後から3日間の日程で上京し、閣僚や各党幹部らと面談、都構想実現への協力を求める。
 橋下市長は登庁後、平松邦夫前市長(63)との引き継ぎに臨み、「平松さんが力を入れた市民協働をしっかりと引き継いでいきたい」と述べた。平松氏も「これからも効率的な市政運営をぜひよろしくお願いします」と応じ、握手を交わした。続いて橋下市長は就任会見で「大阪市の財政は優良ではない。収支改善の目標額を出す」と述べ、財政再建への意欲を示した。
 橋下市長は就任前の今月5日から、市役所で幹部らと面談し、次々と指示を出してきた。区長の全国公募もその一つで、区長ポストを一般職トップの局長級より格上げし、民間出身者の年収は1400万円とする。区ごとに募集し、庁内からの応募は課長級以上。任期は来年4月から4年だが、成果が上がらなければ途中で免職にする方針だ。また、橋下市長は新体制の人事を発令、組織改革に着手した。【小林慎、林由紀子】

 「国が地方の意見を聞かないなら、政治闘争しかない」。19日に就任した橋下徹大阪市長は、大阪都構想や市政改革に意欲を示すとともに、教育改革や生活保護制度の改革をめぐっても「一世一代の大勝負だ」と強調。国に戦いを挑む姿勢を鮮明にした。「橋下劇場」の第2幕が始まった。
 午前9時前、市役所正面玄関に到着した橋下氏は、市職員ら約500人の出迎えを受けた。ホールで女性職員から花束を受け取ると、笑顔を見せた。初登庁の気持ちを報道陣に尋ねられた橋下氏は「(約4年前の)知事就任日は大海原にゴムボートで放り出された気分だったが、今は全然違う。自分が船長になった気分で(市役所に)入れた」と語った。
 午前11時から始まった記者会見は、冒頭から「橋下節」が全開となった。就任のメッセージとして「今の日本をなんとかするには統治機構を変えなければ」「決定できない、責任を取らない民主主義を、決定できる、責任を取る民主主義に変えたい」などと語り、政治・行政の意思決定の仕組みを見直す考えを強調した。一方、市職員については「職員は優秀。面従腹背は大歓迎。ダブル選で出た民意の方向性に向かうならなんでもいい」と述べた。

本記事では,大阪市における区長職公募の取組を紹介.2011年12月19日の市長就任日から同職の公募の開始となり,極めて迅速な対応.同取組の詳細は,同市HPを参照*1
いわゆる「区レベルでの正当性の欠如」の「解消」*2の観点からは,準公選制度という制度選択も考えられなくはないものの,まずは,同市では公募制度を選択.同職の公募に関しては,2011年11月18日付の本備忘録にて記録した,堺市で2区で同職公募.同市では,全て区長職を公募される.2008年12月28日付以来の断続的観察課題である自治体人事管理における「半開き(semi-open system)化」仮説の観察の関心からも,極めて興味深い取組.
「空席公告」*3ともいえる,「大阪市区長公募要綱」を拝読させて頂くと,同市で「今回公募する区長」職は,「現在の区長よりも権限(予算に関する権限など)を強化」され,「一般職のトップである局長級のさらに上位職とし」「市長に次ぐ職責を担うこと」を想定.同職は「平成24年4月1日から平成28年3月31日まで」の「任期付職」として募集.募集される方は「1人につき,1区」*4と限定されており,応募者の申請に基づく特定の区の区長職のみに対する選考となる.なるほど.特定の区長職としての採用となり,選考後,一般的に区長職としての適性がある,と判断された場合でも,例えば,他の区長職で,その選考要件に満たさないとの結論に至った場合にも,募集された区以外での区長職としての採用や配置は行うこともないのだろうか,要確認.
公募要件は,「組織マネジメントの経験のある人」であること.具体的な「例」として,「国,地方公共団体,民間企業等での管理職経験者」を持つ方を想定されている.あわせて,同「市職員が応募する場合は,課長級以上の職員」であることも明記.これにより,現在の同市職員も応募が可能となる.同市職員が募集し採用された場合,その年齢により扱いが異なる.まず,「56歳以上の本市職員」の場合は,「一旦退職し,任期付職員として,市外部からの応募者と同じ勤務条件のもと働く」こととなる.「55歳以下の本市職員」の場合は,「現在の身分を継続したまま」で,同職の「勤務条件(本市職員の場合)のもと働」き,「当該区長職としての任期を満了した際」は「原則,元の職位に戻る」*5とも明記.なるほど.
同職の「勤務条件」のうち「給与」に関しては,「市外部からの応募の場合」には「年収(税込)1,400万円程度」ではあるものの,同「市職員の場合」には,「年収(税込)1,200 万円程度」となる.「56歳以上の本市職員」の場合には「退職」されるものの同「市職員の場合」として扱われるのだろうか,要確認.また,「6月,12月支給」の「勤勉手当」は「業績に応じた支給」と業績給であることも明記.
「選考方法」は2段階で実施.「第1次選考」は「書類選考」となり,「所属」,「役職等」,その「期間」と「職務内容」の記載が求められる「職務経歴書*6,「資格等」とともに,「実務経験において,あげた成果及びその手法を具体的に記載」を求められる「実績調書」*7,論文等」に基づき「職務に対する適性,能力,意欲等」が審査.論文では,「①現在の区政の課題とその解決策について」と「② 「①」の実現に向けた「区長マニフェスト」について」が「課題」として提示.ただ,同論文では「内容」も明確に指定されており,「応募する区が抱える課題を分析し,区長として,その課題をどのように解決していくのかについて,財源の裏付けも行った上で論じ」ること.そして,その 「方策を具体化するための「区長マニフェスト」を,「住民サービス編」と「改革編」に分けて作成」することが求められている.「提出された論文は,公開を前提」*8ともあり,公表後,要確認.同「選考結果」,「最終選考」となり,「平成24年1月下旬」から「2月上旬に実施予定」となる.今後の選考過程に関しては,要観察.
なお,蛇足.昨日の午前中は,1年生向けの講義であったため,第2記事で報道されていた「記者会見」*9も,その終わり近くの部分から拝聴.同会見内で,「決定できる,責任を取る民主主義」を強調された点が印象深い.嘗て,都知事であった美濃部亮吉は,「たとえ橋一つつくられるにしても,その橋の建設が,そこに住む多くの人の合意が得られないならば,橋は建設されないほうがよい」と,いわゆる「橋の哲学」を述べ「多数決の原則に従うべきことを言ったつもり」ながらも,「「一人でも反対するものがいたら」と読み誤った」理解からの「攻撃材料」*10とされたことを回顧されている.同市長は大阪府知事の仕事を回顧した記述からは,「僕自身がやってきたことは,大阪府庁の仕事全体からすると分量的にはおそらく1%程度いやそれ以下だと思います.残りの99%は,日々の着実な行政実務として組織が粛々と仕事をしている」,「実際のほとんどの行政の仕事は,行政組織がきっちりとやっているのです」,「ただし,僕が直接関与したその1%は,組織のあり方や,組織全体の方向性を決める質的に重要な1%」*11とも述べられている.「橋の哲学」の語呂に倣えば,「決定できる,責任を取る民主主義」という「橋下の哲学」では,「重要な1%」が如何に具現化されていくのか.こちらも要観察.

*1:大阪市HP(職員等採用募集中の職員採用情報一覧)「大阪市区長を公募します

*2:金井利之「「大阪都構想」とは何か」『世界』No.824 ,2011年12月号,120頁

世界 2011年 12月号 [雑誌]

世界 2011年 12月号 [雑誌]

*3:稲継裕昭「アメリカ合衆国の公務員制度」『公務員制度改革』(学陽書房,2008年)53頁

*4:大阪市HP(職員等採用募集中の職員採用情報一覧大阪市区長を公募します)「大阪市区長公募要綱」(平成23年12月,大阪市総務局)1頁

*5:前傾注3・大阪(大阪市区長公募要綱)2頁

*6:大阪市HP(職員等採用募集中の職員採用情報一覧大阪市区長を公募します)「職務経歴書

*7:大阪市HP(職員等採用募集中の職員採用情報一覧大阪市区長を公募します)「実績調書

*8:前傾注3・大阪(大阪市区長公募要綱)3頁

*9:大阪市HP(市長の部屋)「市長記者会見

*10:美濃部亮吉都知事12年』(朝日新聞,1979年)90頁

*11:橋下徹堺屋太一『体制維新』(文藝春秋,2011年)116頁

体制維新――大阪都 (文春新書)

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