秋田県大仙市は2012年度の予算編成から、県内の自治体では初めて、「インセンティブ予算制度」を試行的に導入することを決めた。
 11年度に市民サービスを低下させず、職員の自発的な創意工夫で予算の節減や歳入確保を図った部局に対し、削減分の全額か一部を12年度の当初予算に追加配分する。従来の「予算を使い切る発想」を改め、インセンティブ(奨励金)で職員のコスト意識を向上させるのが狙いだ。
 同市財政課によると、具体的には、工事工法の見直しや業務の整理統合、市民協働参加などによる経費節減のほか、新たな手法による税の収納率の改善などを想定している。公共工事の入札差額や契約差額、燃料単価の値下がりなど外的要因は制度の対象外になる。
 制度導入の背景には、東日本大震災の発生などによる地域経済の低迷や、2005年度から適用されている合併特例期間が残り3年に迫ったことがある。税収増が見込めない中、合併特例措置で優遇されていた交付税の差額分約44億円が15年度から段階的に減らされ、19年度を最後に廃止されるためだ。大仙市はこれを踏まえ、「限られた財源の中で最大の効果を出すためにどのような方法があるか」と検討してきた。試行的に導入して問題点を洗い出し、運用基準を定め、本格実施に備える。
 読売新聞が大仙市を除く県内24市町村に取材したところ、インセンティブ予算制度の導入を検討している市町村はなかった。ただ、財源確保や支出の削減は共通の課題で、各市町村の財政担当者は「ゼロベース編成で無駄を省く」「経費削減の数値目標を設定している」などと話した。大仙市財政課では「経費節減だけでなく、職員の意欲も上がると期待している。それが、市民サービスの向上につながってほしい」としている。

本記事では,大仙市における予算制度改革の取組を紹介.
2011年12月5日付の同市議会定例会における同市長による市政報告のなかで,「平成24年度当初予算の編成」では,同「市の厳しい財政状況を職員一人一人が改めて認識し,限られた財源の中で最大の事業効果を発揮する」ことを目標に,「各部局の創意工夫を最大限に発揮させた予算編成」*1として,いわゆる「インセンティブ予算制度」を試行されることを報告されている.具体的な内容に関しては,公表後,要確認.
いわゆる「インセンティブ予算制度」は,しばしば,「スペンダー」とも目される各部局に「ガーディアン」*2としての役割をもつことになり,いわば,ヤーヌスとしての制度の仕組みを企図することなる.確かに,「予算編成の過程で財政課の担当者が査定する段階では,既に多くの事業の実施が意思決定されていて,事業を取捨選択して健全財政を担保するような予算編成の余地が最初からない」とされ,「財政にきたときには終わっている」*3との現状や,「財政課主導の財政課目線」での「予算の中身を決めるには限界」*4と,予算編成段階で実際にはヤーヌスの顔ももつことからすれば,2011年10月15日付の本備忘録にて記録した横浜市の「予算におけるメリットシステム」の毎年度節減額でも,制度導入当初の時期は,確かに節減が図られたことからも,一定効果が見込めそう.一方で,横浜市の毎年度節減額からは一定期間を経過すると,毎年度の節減額が漸減傾向となる様子も窺えなくもない.同市において同制度が導入された後知の運用状況は,要経過観察.

*1:大仙市HP(市長紹介市政報告)「平成23年第4回大仙市議会定例会 市政報告」(平成23年12月5日,大仙市長 栗林次美)17頁

*2:田中秀明『財政規律と予算制度改革』(日本評論社,2011年)331頁

財政規律と予算制度改革  なぜ日本は財政再建に失敗しているか

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*3:小西砂千夫「政策実現を促す自治体財務のマインド」『ガバナンス』No.127,2011年11月号,23頁

ガバナンス 2011年 11月号 [雑誌]

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*4:松木茂弘『自治体財務の12か月』(学陽書房,2010年)172頁

自治体財務の12か月

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