高度成長期に集中的に建てられた公共施設が老朽化している問題で、横浜市は、地区センターや福祉施設など市民に身近な建物1500カ所程度の傷み具合や利用実態、コストなど「実像」の本格調査に乗り出した。2013年3月までに、市民に分かりやすい「白書」として公表する。施設の維持や廃止も含めて地域住民と話し合う基礎データとする考えだ。
 厳しい財政下で老朽化する「ハコモノ」の更新や保全費の増大は全国的な課題になりつつある。高度成長期の人口急増に伴い、多数のインフラを整備してきた横浜市が「人口減少社会」にどう対応するのか。試みは注目を集めそうだ。市はすでに09年3月、学校や庁舎など計約2300カ所の建物や下水、道路など公共施設の保全費が市全体では、09年度から20年間で約3兆円に上る試算を出している。そのうち、市民税などが財源の一般会計で支出する額は18年度で1100億円に上り、08年度比の約2・3倍となる見通しだ。そのため施設を長寿命化し、集中する財政負担の分散化を推進している。白書では、コミュニティーハウスや公会堂、図書館、スポーツや文化施設など最大1500カ所程度を対象に調査する方針。建物の安全性や、利用状況と運営費などの「費用対効果」を示す。今秋には素案を公表。市民意見を踏まえ、12年度中に正式にまとめる予定だ。来春以降は、職員が白書に基づき各地域を訪問し、施設利用費の値上げや統廃合の是非なども含めて将来像を検討する予定だ。市財政局は「高齢化で福祉に財源がますます必要となる中で、更新費の増大は財政をさらに圧迫する。市民に客観的なデータを分かりやすく示し、共通認識を持ちたい」と話している。
 政令指定都市ではさいたまや浜松、県内では藤沢、秦野、小田原の各市などが白書を作成。一部の自治体が既存施設の廃止や新設中止など対策を進めている。 

本記事では,横浜市における公共施設に関する白書の作成方針を紹介.同方針に関しては,現在のところ,同市HPでは確認ができず,残念.公表後,要確認.
同市では,「横浜市公共施設の保全・利活用基本方針」を2009年3月に策定.同基本方針からも,同市の公共施設の現状は窺うことができる.例えば,同基本方針の策定現在では,建築物は同市で「約2,300施設」を保有.その内訳は,「市民利用施設」が「約1,000施設」,「庁舎・事務所」が「約660施設」,「学校」が「約530施設」,「市営住宅」が「約110施設」である,という.また,建築物以外にも,公共施設の範囲からは,土木・プラント系施設が「約6,000施設」,「下水道管きょ」が「約11,000km」,「水道管」が「約9,000km」,「道路」が「約7,500km」も保有されている.同基本方針内に,あわせて掲載されている「供用開始年代別割合」を拝見させて頂くと,学校の70%が1980年以前からの供用開始とあり*1,同表に掲載されている他の公共施設(道路橋りょう,水道管,ポンプ場,公園,市営住宅,港湾岸壁,下水管きょ,水再生センター,鉄道,焼却工場)と比べても,長期にわたり利用されていることが分かる.ただ,学校以外の「建築物」の現状は,同基本方針では必ずしも判然とはしない.
本記事で紹介されている「白書」は,ただ,その施設数からも,決して「自動販売機型(the vending machine model)」*2のように即座に作成可能なものではないものの,施設の「事実の提示」*3も期待されそう.今後,策定される「白書」の内容は,要確認.

*1:横浜市HP(各局の紹介財政局組織公共施設・事業調整課公共施設の保全・利活用)「横浜市公共施設の保全・利活用基本方針」4頁

*2:Kettl,Donald F. (2011).The Politics of the Administrative Process Fifth Edition,CQ Press.p.213.

Politics of the Administrative Process

Politics of the Administrative Process

*3:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),95頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)