国の文化審議会宮田亮平会長)は19日、高岡市金屋町と金屋本町のそれぞれ一部からなる「高岡市金屋町伝統的建造物群保存地区」(約6・4ヘクタール)を重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定するよう文部科学相に答申した。早ければ年内にも正式決定する。文化庁によると、鋳物師(いもじ)町としての選定は全国初。
 重伝建地区となる金屋町周辺は約400年前、加賀藩2代藩主・前田利長が高岡を開くにあたり、砺波郡西部(にしぶ)金屋(現在の高岡市戸出西部金屋)から招いた鋳物職人たちが住み着いたことから、「高岡鋳物発祥の地」とされる。サマノコと呼ばれる千本格子などの意匠を凝らした町家のほか、作業場や土蔵など歴史的な町並みが残る。
 今回は主屋や作業場といった伝統的建造物111棟、塀などの工作物12件、樹木3本が保存すべき物件として指定され、修復する際は国、県、市から補助金が出る。県内からの重伝建地区選定は4か所目。市は選定に向け、2008年から、町並み保存に関する住民アンケートや現地調査、有識者からの意見聴取を重ね、地権者の同意を得るなどしてきた。高橋正樹市長は「鋳物、銅器の町としての歴史が高く評価された。伝統産業が息づく高岡にとって非常に有意義」とのコメントを出した。金屋町まちづくり協議会の般若陽子会長(72)は「道幅を広げるべきだとの意見も一時期あった中で、約30年間歴史的景観を守ってきた。今後は住民の生活との調和を図りながら、観光客に年間を通じて訪ねてもらえる街にしたい」と抱負を語った。

本記事では,高岡市に関して,文化庁に設置されている文化審議会より,金屋町を重要伝統的建造物群保存地区に選定するよう答申されたことを紹介.同答申に関しては,同庁HPを参照*1
同町の選定は,「高岡城下の建設に伴い鋳物師が集住して形成された町並みが今日までよく継承されていること」「意匠的に優れた外観や質の高い造作をもつ町家場や土蔵など鋳物製造に関わる建物がともに良く残」ることから「特色ある歴史的風致を良く伝え」*2ているとして,3つの「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」のうち,「伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの」*3に該当すると判断.
同市では,「商家町」である「山町筋」も「重要伝統的建造物群保存地区*4に選定されており,2012年10月20日付の朝日新聞が報道するように「約500メートルで近接」しており「回遊」*5可能な距離(下名も,2012年9月11日付の本備忘録で記録しましたが,両地区の「回遊」を楽しみました).
「人々の記憶の最大の器」*6としての建造物.その保存とともに,「保存によって所有者等に生じる経済的負担」*7も悩ましい課題.同市では,2005年11月に制定した「高岡市重要伝統的建造物群保存地区における高岡市市税賦課徴収条例の特例を定める条例」第2条に基づき固定資産税の減額が図られており,具体的には,「伝統的建造物である家屋の敷地」に対しては「税額の2分の1」の「額を減額」する.また,「伝統的建造物でない家屋の敷地」と「修景済みの空地として市長が認める土地」に対しても「税額の5分の1の額を減額」*8する.本記事中頃で紹介されている「地権者の同意を得る」過程は,要確認.

*1:文化庁HP(報道発表資料)「重要伝統的建造物群保存地区の選定について」(平成24年10月19日)

*2:前掲注1・文化庁重要伝統的建造物群保存地区の選定について)3頁

*3:前掲注1・文化庁重要伝統的建造物群保存地区の選定について)1頁

*4:文化庁HP(文化財文化財の紹介伝統的建造物群保存地区)「重要伝統的建造物群保存地区一覧

*5:朝日新聞(2012年10月19日)「鋳物師町で全国初

*6:藤森照信『フジモリ式建築入門』(筑摩書店,2011年)15頁

フジモリ式建築入門 (ちくまプリマー新書 166)

フジモリ式建築入門 (ちくまプリマー新書 166)

*7:後藤治『都市の記憶を失う前に』(白揚社,2008年)36頁

都市の記憶を失う前に―建築保存待ったなし! (白揚社新書)

都市の記憶を失う前に―建築保存待ったなし! (白揚社新書)

*8:高岡市HP(高岡市 例規集)「高岡市重要伝統的建造物群保存地区における高岡市市税賦課徴収条例の特例を定める条例」(平成17年11月1日,条例第57号)