横浜市は六日、障害者がバスや地下鉄を無料で利用できる「福祉特別乗車券（福祉パス）」について、年額千八百円に有料化する条例案を、開会中の市議会十二月定例会に提案した。有料化をめぐっては反対の意見も根強く、この日、市内の障害者団体が、林文子市長と市議会議長に条例案の撤回を求める緊急声明を提出した。
条例案は常任委員会の審議を経て、最終日の二十五日に議決される。可決されれば、来年十月から実施される予定。福祉パスは、障害者の社会参加を促すため、七十歳未満を対象に無料で交付している。近年申請が増加しており、本年度の交付は過去最多の約五万一千八百枚、事業費として約二十七億円を計上した。
条例案では、新たに軽度の知的障害者約八千人にも対象を広げ、サービスを拡充する一方で、事業費を抑制するため利用者に一律の負担を求めている。市は当初、年額三千二百円の負担を検討していたが、市民からの意見募集で三割近くから反対意見が寄せられたため、最終的に千八百円に減額した。障害者団体のメンバーらは「わずかな年金と福祉作業所での工賃で生活している障害者にとって、年間千八百円でも重い負担。有料化になれば引きこもりになる懸念もある」と訴えた。 （中沢誠）
本記事では，横浜市における「福祉特別乗車券」*1の有料化案を紹介．
同市では，「１〜４級の身体障害者手帳を持っている方 」，「知能指数50以下の方（愛の手帳Ａ１〜Ｂ１）」， 「１〜３級の精神障害者保健福祉手帳を持っている方」の「いずれかに該当する70歳未満の方」で「福祉タクシー利用券の交付を受けていない方 」を対象に「福祉特別乗車券」を交付．同券を利用することで，「市営バス・地下鉄全線，金沢シーサイドライン全線，「市内を運行する民営バス（一部市外区間を含む）」は「無料」となる．
同市では，2012年6月11日(月)から8月17日(金)の期間，「障害者の外出支援制度」に関する「アンケート調査を実施」．同調査では，４つの設問を設け，問3と問4では，同制度改正案への理解度を尋ねている．具体的には，問３では，「福祉パスの交付を希望する対象者には，全員一律」の「年額3,200円」とする「見直し案」を提示し，「福祉パス、福祉タクシー券の見直しの考え方について、どう思いますか」という設問を置く．回答は，「よく理解できる」「 おおむね理解できる」「あまり理解できない」「全く理解できない」からの4択となる．続く，問4では「障害者の外出支援制度は，市民の税金によって運営されています．今回，横浜市では，対象範囲の拡大など，必要な人に必要な支援が行われることと，ある程度の負担や制限によって，持続可能で安定した制度となることのバランスを重視しながら制度全体の見直しを考えています．この考え方について，どう思いますか（いずれか一つ）』*2と，「財源面での資源」の「確保」*3の観点からの設問を設け，問3と同様に理解度を4択で尋ねている．
同アンケートの調査結果は，2012年10月に『「障害者の外出支援制度見直し案」に関する市民意見募集 報告書』に集約．二つの設問への回答は，まず問3では，「よく理解できる」が20.9％，「おおむね理解できる」が41.4％，「あまり理解できない」が16.3％，「全く理解できない」が12.0％，無回答が9.3％*4とある．問4では，「よく理解できる」が18.9％，「おおむね理解できる」が44.6％，「あまり理解できない」が16.０％，「全く理解できない」が10.3％，無回答が10.2％とあり，「制度全体の見直しについて回答者別にみると，「障害者の家族」の「よく理解できる」と「おおむね理解できる」をあわせた「理解できる」が回答者全体と比較し多くなっている」と整理されている．ただし，回答属性毎での理解度についても明記されており，「支援者あるいは一般市民からの意見と考えられる「その他」では「あまり理解できない」と「全く理解できない」をあわせた「理解できない」が多く」*5あると，同報告書では述べている．
結果，当初の見直し案から，本記事にて紹介されているように「年額1800円に有料化する条例案」と改められた同制度案．制度見直し後の「外出」行動への影響は，要確認．
*1:横浜市HP（健康福祉局：障害福祉部：行動範囲の拡大：交通）「外出を支援するサービス／福祉特別乗車券（バス・地下鉄乗車券）の交付」
*2:横浜市HP（健康福祉局：障害福祉部：行動範囲の拡大：交通）「意見募集用紙データ」
*3:松井望「第10章 政策体系と政策過程」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』（ミネルヴァ書房，2012年）208頁
*4:横浜市HP（健康福祉局：障害福祉部：行動範囲の拡大：交通）「「障害者の外出支援制度見直し案」に関する市民意見募集 報告書」（横浜市健康福祉局障害福祉課，平成24年10月）12頁
