全長約360キロの活断層帯「中央構造線」周辺で病院や学校などを新築する際、事業者に活断層調査を義務づける「徳島県震災に強い社会づくり条例」が19日、制定された。
 直下型地震の被害を最小限にとどめる狙いだ。予定地の真下に活断層が見つかれば、県は条例に基づいて建設中止を勧告できる。米カリフォルニア州では活断層付近の建物建設を法律で禁止しているが、国土交通省によると、国内では、活断層を理由にした土地利用規制の条例は都道府県で初めてという。
 県は、南海トラフ巨大地震津波被害が想定される沿岸部についても、条例による土地利用規制を準備している。条例では、活断層の位置がほぼ特定されている中央構造線の県内部分約180キロのうち、断続的に確認されている延長計60キロ(同県鳴門市〜三好市)について、活断層から片側20メートル(全幅40メートル)を「特定活断層調査区域」と指定。最大約240ヘクタールに上る見込み。
 同区域内で▽病院▽介護福祉施設▽学校▽3階建て以上で延べ床面積1000平方メートル以上のマンション――などを新築か改築する際、事業者は開発前に予定地で活断層の有無を調査し、県に報告しなければならない。県は、専門家の助言を受けて活断層の存在を認めた場合、事業者に建物建設を避けるよう勧告できる。従わなかった場合は事業者名を公表する。条例に罰則はなく、小規模な建物や既存建築物は条例の適用外としている。県は来年度、地元7市町と協議したうえで同区域を決定する。
 県南海地震防災課は「土地利用を規制することで、少しでも活断層による直下型地震の被害を抑えたい。活断層の真上で耐えられるような建築技術がない以上、建物の新築を避ける動きが広がるきっかけになれば」としている。中央構造線 関東地方から近畿、四国を経て、九州まで延びる断層で、このうち奈良県南部以西の約360キロが活断層帯。エリア別に6区間に分けられ、徳島県は「讃岐山脈南縁〜石鎚山脈北縁東部区間」。1596年の慶長伏見地震を最後に活動していないといい、国の地震調査研究推進本部の長期評価では地震の発生確率は30年以内がほぼ0〜0.3%、100年以内がほぼ0〜2%とされる。

本記事では,徳島県における「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」の制定を紹介.
同県では,「徳島県震災対策推進条例(仮称)」*1として,2012年9月13日から同年10月12日までパブリックコメントを実施.同素案では,本記事で紹介されている「特定活断層に対する土地利用の適正化等」に関しては,「特定活断層調査区域に学校,病院その他規則で定める建築物等」の「新築,改築又は移転」を「しようとする者は,特定活断層の直上への当該特定施設の新築等を避けなければならない」と規定.そして,「新築等をしようとする者」が出た場合,「当該新築等に係る建築工事又は開発工事を計画する際に」は「氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名」「特定施設の名称及び所在地」「特定施設の目的」「その他規則で定める事項事項」を「知事に届け出て,知事と協議しなければならない」*2と素案段階では提案.本記事を拝読させていただくと,2012年12月19日に可決された模様.同条例では,事業者が報告しない場合,勧告に従わない場合には「事業者名を公表」することを規定.「特定活断層調査区域」と指定された区域が公表されるなかで,改めて事業名が公表されることによる「制裁的公表」*3としての効果は,要確認.

*1:徳島県HP(組織危機管理部南海地震防災課徳島県震災対策推進条例(仮称)素案のパブリックコメントの実施結果)「「徳島県震災対策推進条例(仮称)

*2:前掲注1・徳島県(「徳島県震災対策推進条例(仮称))6頁

*3:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)175頁

環境法

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