藤沢市は8日、同市議会で行政運営の最上位に位置づけている現行の「総合計画」(2011〜30年度)を廃止する方針を明らかにした。当初計画の20年間をより短期的な3〜4年に改める。時代の変化に柔軟に対応することなどが狙い。専門家は「全国的に前例のない取り組み」としており、他自治体からも注目を集めそうだ。
 市は現行の総合計画について「施策や事業が総花的になり形骸化している。策定自体が目的化しやすい」と指摘。その上で「急激な社会情勢の変化に対応しにくい。選挙公約などで具体的な施策提言がされた場合、現行計画と整合性もとりにくくなる」と廃止理由を説明している。13年度末までに総合計画に代わる新たな行政計画「市政運営の総合的な指針」を策定し、14年度から実施する。計画期間は3年間(14〜16年度)、次期(17〜20年度)は4年間で首長任期を基本に置く。市長任期の初年度に次期4年分の指針を策定するのが特徴だ。
 新指針では「長期展望・目指す将来像」を掲げ、これを基に「市民との約束(市長公約など)」を据える。現市政の場合、「法とモラルを守る藤沢」「ずっと安心して暮らせる藤沢」などが盛り込まれる。これを受けて「重点政策」「主要な施策」を設ける。これらの上位計画を前提に、具体的な事業計画へ落とし込んでいく。階層に分ける構造は大きく変わらないが、計画の対象期間が大幅に短縮される上、策定作業も市職員が主導することでコスト縮減も図れるという。
 ◆総合計画 1969年の地方自治法改正で地方自治体に策定が義務付けられた。理念や大方針を示す「基本構想」(期間10年前後)、各分野の施策を示す「基本計画」(同5年)、具体的な事業を示す「実施計画」(同3年)の3層構造で構成する自治体が多い。2011年に地方自治法が改正され策定義務規定が削除された。自治体によって策定義務を条例化したり、3層構造を2層化したり、と対応が分かれている。

本記事では,藤沢市における総合計画廃止の方針を紹介.
地方自治法第2条第4項の改正後の基本構想(総合計画)制度に関する制度選択では,「積極的」な基本構想・総合計画制度の策定「廃止」路線,「慣性」による基本構想・総合計画制度の策定「継続」路線,「積極的」な基本構想・総合計画制度の「改定」路線という,3つの路線選択*1が想定されたなか,本記事によると,同市では「廃止」路線を改めて選択.廃止後は,「市政運営の総合的な指針」「事業計画」という政策体系を設ける模様.ただし,その期間は,現行の「2030 年度(平成42 年度))まで」の「20 年」*2から,「3〜4年」とし,「市長任期の初年度に次期4年分の指針を策定」する模様.「短期化」*3を図ることになる.これにより,本記事によると「策定作業も市職員が主導する」ことで「コスト縮減」も企図されている模様.
確かに義務付けがなかった都道府県では,マニフェストに基づく県政運営や総合計画自体の策定を廃止した自治体はあったなかで,市レベルでの廃止は,義務付けの廃止による効果としても,興味深い.なお,同市では,2010年2月1日付の本備忘録でも記録したように,「討論型世論調査(Deliberative Poll)」を用いて,現在の総合計画を策定*4.今後は,廃止に関する議論,そして,新しい体系に関する議論は,これらの方々とのどのように関わりの場を持つのだろうか.今後策定される「市政運営の総合的な指針」の内容と運営過程は,要経過観察.

*1:松井望「総合計画制度の自由度と多様性」『自治体法務Facilitator』Vol.24.2009年10月号,21-22頁

*2:藤沢市HP(総合案内統計・データ集総合計画 )「「私たちの政府」が創る、いまも未来も住み続けたいまち「湘南ふじさわ」(2011年4月)5頁

*3:松井望「第10章 政策体系と政策過程」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房,2012年)208頁

地方自治論入門

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*4:藤沢市HP(総合案内統計・データ集総合計画 )「新総合計画の策定