広島市は16日、市税の滞納対策を強化するため、収納対策部を新設した。本庁の税務部職員に加え、全8区役所の滞納整理業務と担当職員を、市役所近くの賃貸オフィスに集約し、109人体制で徴収を強化する。一方、兵庫県宝塚市役所では財産差し押さえを逆恨みしたとみられる放火事件があったばかり。安全対策が新たな課題に浮上している。
 収納対策部は市役所から国道54号を挟んだ大手町平和ビル(中区)の8〜10階に入る。浜本克己・税務部収納対策強化担当部長がトップに就き、本庁税務部の特別滞納整理課の20人、区役所の収納課整理係の88人を集めた。情報や差し押さえなどの専門知識を共有し、徴収業務を強化する。2012年度の市税収納率は99・1%。この10年間で5・1ポイント改善した。一方で滞納額は前年度からの繰り越し約48億円を合わせて約68億円。浜本部長は「税は公平負担が原則。滞納を一刻も早く解消したい」と話す。8区役所に残る税務の管理係は10月、市税事務所か市税務室のどちらかに再編される。必要に応じ収納対策部の職員が出向き対応する。収納対策部とつなぐテレビ電話の設置も検討する。
 宝塚市役所の放火事件は今月12日に起きた。逮捕された男は兵庫県警の調べに、固定資産税の滞納に伴う預金などの差し押さえへの怒りを口にしているという。広島市の収納対策部でも「心配だ」「窓口に防護パネルを」との声が上がる。市税務部には11年秋から元警察官1人が週3回勤務している。だが、不在時には職員が腕をつかまれたり、机をたたかれるなどのトラブルが起きている。これまでも2人一組で窓口対応するなどの対策を取ってきた。特別滞納整理課の小村幹夫課長は「安全確保はまだまだ不十分。元警察官の増員などの対策を考えたい」と話す。

本記事では,広島市における収納対策部の設置を紹介.
以前は,同市の財政局内に「市税,児童福祉施設徴収金及び下水道事業受益者負担金並びにこれらに係る附帯金」のうち「市長が定めて告示する基準に適合する徴収金の滞納整理及び収納に関する」業務を分掌するために設置された「税務部特別滞納整理課」*1から,収納対策「部」へと再編.部レベルでは「新設(initiation)」*2となる.
本記事によると「本庁の税務部職員に加え」て「全8区役所の滞納整理業務と担当職員」を「集約」されたためか,同部では「徴収第一課」「徴収第三課」「徴収第三課」「特別滞納整理課」と4課を設置し,さらに徴収第一課から徴収第三課では,それぞれ「第一」から「第四」までの「整理係」*3を新たに配置.「109人体制」の所帯.ただし,現在のところ「広島市事務組織規則」では,同組織再編が反映されていないため,個々の課の分掌が確認できず.残念.
「「死」と同様,誰も逃れることができない「税」を徴収」*4するため,「納税者たる市民」から「課税権力の行使」を「委託」*5された自治体の徴収部門.組織再編による滞納額の動向は,要経過観察.

*1:広島市HP(市政全般広島市例規類集)「広島市事務組織規則」(昭和55年3月11日,規則第5号)第7条第7項

*2:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)164頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*3:広島市HP「各課直通電話・FAX・Eメールアドレス

*4:猪木武徳『経済学に何ができるか』(中央公論新社,2012年)17頁

*5:諸富徹『私たちはなぜ税を納めるのか』(新潮社,2013年)193頁

私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)

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