民主主義の条件

民主主義の条件

砂原庸介先生より,ご恵与賜りました.誠にありがとうございました.
「意思決定をおこなうとき,どのように多数派を作るのか」という問いを選挙制度,政党論から説き明かされた御著書『民主主義の条件』(東洋経済新報社,2015年)では,統一地方選挙を迎えた現在,選挙で何を実現するかを考えるうえでは,まずは手に取るべき作品です.なによりも本書の魅力は,しっかりと腰を落ち着けながら,共通の利益を実現するための選挙制度とは,漸進的ではあってもどのように作り上げるのかという問いかけを広く提供された点にあると存じました.複雑な選挙制度を,圧倒的な同分野の研究蓄積を背景に置きながらも,明解なロジックと文体で論じられた御著書は,選挙制に関心をもつものに限らず,民主制のなかで意思決定を実践するもの全てに読まれるべきと存じました.
御高論「庁舎と政治 都市の中心をめぐる競合と協調」を寄稿されております御厨貴井上章一編『建築と権力のダイナミズム』(岩波書店, 2015年)は,県庁所在市に置かれた,県庁と市役所という二つの政治的中心の位置取りをめぐる政治学,とも呼ばせて頂きたくなる論攷に,知的刺激を多く頂きました.特に,時代の移行により,従来は中心であった県庁(舎)が,開発の関心から郊外へと移転をし,「都市自治体の庁舎が都市の中心を占め続ける」との理解には,ほそぼそと庁舎を観察しております下名にとりましても,共感をさせて頂く結論でございました.このような都道府県と市の庁舎の位置取りをめぐる議論からは,都道府県と市という自治体としての役割の推移もまた感じました.そのため,やはり,庁舎とは自治(体)そのものであるという感を強く抱きました.両著ともに,研究としてのみならず,広く長く読まれ続ける御著書になると拝察いたしました.
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.