東京都杉並区は自宅の敷地の一部を提供して広げた道路に、住民が置いた花壇などの私物を区が撤去できる条例を作る。個人の財産権を侵害するとの指摘もあったが、区の有識者審議会が5日、「制限は可能」との答申をまとめた。区は2015年度中の条例制定を目指す。道路拡幅のため財産権の一部を制限する条例は全国初になるという。
 対象は消防車などが通りにくい幅4メートル未満の「狭あい道路」を拡幅した道。区内の住宅地に多く、建て替えや増改築の際に、所有者の協力を得て建物や塀を後退させ道路を広げている。ただ、区は土地を買い取らず私有地のままのため、自転車や花壇などを置く例が少なくない。
 現在は区が強制的に撤去できず、災害時に緊急車両が通る際の妨げにもなっていた。審議会は憲法学者らの議論で、公共の福祉のためであれば、私物の撤去は可能と判断。近く田中良区長に答申する。
 区は今後、どのようにして障害物を撤去するかなど、条例の実効性を確保する手法を詰めていく考えだ。

本記事では,杉並区における狭あい道路整備に関する検討結果を紹介.
「杉並区狭あい道路拡幅整備条例」に基づき,「建築確認前」には「道路拡幅に関する事前協議を進め」てきた同区.同条例に基づく現行制度では, 「区による整備と建築主等が整備する自主整備が選択できる」ため,「自主整備」が選択された場合,「建物や塀が後退しL 形側溝などはそのま ま存置され」「道路が拡幅されていない状況」もあったことを受け,「条例改正を進める」*1目的に,同区では 2014年7月10日に第1回の「杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会」*2を開催.本記事では,2015年11月5日に開催された第6回の同審議会において,同審議会の「これまでの審議会の取りまとめ」*3がまとめられたことを紹介.
同とりまとめでは,「私有財産である土地を道路状に区が整備する場合」の「憲法29条」の「財産権」 との「関係」については,「将来に向かって」「建築物の建替え時に道路空間が確保されている部分を杉並区が拡幅整備する」,「条例改正前に建築物の建替えを行った者で,道路空間が確保されている部分を杉並区が拡幅整備する.」という「内容を条例に規定し」「財産権を制限すること」は「4メートルの拡幅整備の範囲であれば」「補償を要するものではない」*4との見解が示されている.あわせて.実効性の確保手段としては,「道路空間の確保」には「代執行まで想定した強い義務を条例に規定できる可能性があ」るとはしつつも「拡幅整備まで範囲を広げることは」「難しい」とし,「例外的に自主整備の途を認めるなどという選択肢を残すとともに」「指導・勧告,氏名公表程度までの罰則規定による」「道路空間の確保よりも緩やかな義務を課すことはできる」*5との見解も示されている.
「条例による財産権規制」*6となる同条例.条例案としての改正後,要確認.

*1:杉並区HP(区政資料会議録杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会第1回 杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会)「狭あい道路の拡幅整備について (諮問)

*2:杉並区HP(区政資料会議録)「杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会

*3:杉並区HP(区政資料会議録杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会第6回 杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会)「これまでの審議会の取りまとめ」(杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会,平成27年3月)

*4:前掲注3・杉並区(これまでの審議会の取りまとめ)11頁

*5:前掲注3・杉並区(これまでの審議会の取りまとめ)12頁

*6:礒崎初仁『自治政策法務講義』(第一法規,2012年)153頁

自治体政策法務講義

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