東京都は29日、税財政について話し合う有識者会議「東京と日本の成長を考える検討会」の締めくくりの会合を開き、報告書をまとめた。羽田空港の機能強化など国際競争力の向上に向けた投資により、経済波及効果が31兆4000億円発生するとの試算を盛り込んだ。そのうち11兆3000億円は都以外の地方としている。都の成長が地方を含めた日本全体に波及することをうたった。
 小池百合子知事は会合後、記者団に対し「国際競争が激動化していく中でこうしたことを考えるのは重要だ」と述べた。報告書では(1)羽田空港の機能強化(2)東京外郭環状道路の整備(3)鉄道網の整備(4)ユニバーサルデザインの促進(5)外国人の受け入れ環境の向上(6)集中豪雨への対策――の6分野の投資項目を提示し、東京が国際都市としての競争力を高めるためには大きな財政需要が存在していると強調した。
 国は税財源が都に偏っているとして地方に再分配する「偏在是正措置」を検討している。2019年度税制改正での実施が予定されており、税制改正論議が活発になる前に、都の主張を明示した報告書で論議に一石を投じたい考えだ。一方で地方との「共存共栄」を掲げ、地方と連携して地方税体系の議論を進める考えも示した。都は報告書を受け、近く「大局的な視点から」(小池知事)、都としての見解書をまとめるとしている。

本記事では,東京都における地方税財政に関する検討の取組を紹介。
2018年5月29日付の本備忘録で記録した同検討会の設置。同検討会では,同年10月30日に『東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜』*1と題する報告書を公表。本記事では,同報告書の内容を紹介。
同報告書では,「東京が置かれている現状,東京を取り巻く環境の変化」*2を踏まえて,「国境を越えて移動するグローバルな人や資本の流れを自国に取り込む」「国際競争力」の「向上」*3を提唱。「具体的」には「羽田空港の機能強化」*4,「外かく環状道路の早期整備」*5,「鉄道ネットワーク等の強化」*6,「ユニバーサルデザインの促進」*7,「外国人受入環境の向上」*8,「多発する集中豪雨への対応」*9の「6分野」が提示され,同検討会の検証では「経済波及効果」は「都のみならず都外にも約11.3 兆円の効果」,「約1,200億円の地方税収等の確保」が「期待」*10されると同報告書では提示されている。
そして,「地方税財政」に関しては「偏在性の小さい地方税体系の構築」,「国際競争力向上に資する地方税制度自体の見直し」,「法人事業税の外形標準課税の充実・改善」,「地方交付税制度の抜本的な改革」「など」「さまざまな論点が提示」されたことを示しつつ,「人口減少社会における日本の持続的発展を実現できる地方税財政制度の確立に向けて,抜本的な改革を進めていくことが必要」*11との認識が示されている。地方税財政制度の「根本的な課題」*12への今後の議論は,要経過観察。

*1:東京都HP(都政情報都政組織情報東京都の組織・各局のページ財政局財政情報::東京と日本の成長を考える検討会)「東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜」(平成30(2018)年10月)

*2:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)4頁

*3:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)24頁

*4:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)25頁

*5:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)27頁

*6:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)28頁

*7:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)29頁

*8:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)30頁

*9:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)31頁

*10:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)32頁

*11:前掲注1・東京都(東京と日本の成長を考える検討会報告書 〜地方自治 真の処方箋 〜)46頁

*12:沼尾波子・池上岳彦・木村佳弘・高端正幸『地方財政を学ぶ』(有斐閣,2017年)270頁

地方財政を学ぶ (有斐閣ブックス)

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