足立区役所は6日、入職6年目までの若手職員を対象にした区長への提言発表会を初めて実施した。役所内の風通しを良くするために、近藤弥生区長が考えた企画。「区のイメージアップにつながる政策」をテーマに、16人の若手職員が、知恵を絞ったアイデアを、近藤区長や幹部に披露した。
 足立区では、これまで、中堅職員を対象とした研修は行ってきたが、若手に的を絞った研修は初めて。「『上司に何を言っても聞いてもらえない』という硬直した空気が若手職員の間に広がっている」と感じた区長が、自由にものを言える職場作りをしようと発案した。参加した16人は、事前に足立区の弱点や企画立案の方法についての講義を受けたうえで、企画を検討。日暮里・舎人ライナーが3月に開通する舎人地区に大学サッカーを呼び込んで活性化する方法や、区独自の政策研究機関の設置など七つのアイデアを、区長や幹部らの質問を受けながら、緊張した面もちで発表した。近藤区長は、「今日の提言をきっかけに、皆さんに続く職員が出てくるのを信じている。足立区の有意義な人材としてさらに飛躍して」と激励。2年目の戸籍住民課係員、千葉裕太さん(24)は「トップに意見を聞いてもらえる機会ができたのはうれしい。今後も続けてほしい」と喜んでいた。

同記事では、足立区で入職6年までの職員による、区長に向けた政策研修を実施したことを紹介。
集合型研修も多様である。以前のようなただただ聴講することを強制された「囚われの聴衆」(大森彌)であることを求める形式から、より自己学習・自己啓発を求める「自学」*1の要素を加味する研修が広がっている。例えば、各自治体でも、調査する自治体職員・物言う自治体職員の育成のために、政策形成型研修が用いられている。政策形成研修では、研修の成果を首長や理事者に向けてプレゼンテーションを行い、その内容を評価するという構図が一般的。
政策形成型の研修は、言うまでもなく研修者への効用を期待したものである。ただ、見落としがちであるが、同研修は、評価する側にも政策形成感覚の育成の機会でもあるはずだ。つまり、政策提案の実効性、意義、真贋を判定するためには、評価者側にこそ現実的な感覚が求められ、研修者以上に当該政策提案への内在的な理解が求められるからだ。それは、単なる職務経験を超えて、評価者側にも「自学」を求めるともいえる。と考えると、単なる「上訴の機会」とするのではなく、評価者側にも「自学」を求める職員全体の育成機会となることが期待される。
なお、巷間言われるところの「若手」職員とは不思議な概念である。いつまでが「若手」であるのだろうか。

*1:稲継裕昭『自治体の人事システム改革』(ぎょうせい、2006年)94頁

自治体の人事システム改革―ひとは「自学」で育つ

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