京都市職員が市政改革のアイデアを市民に公開する発表会「トライ!京舞台」が18日、左京区京都会館で初めて開かれた。区役所周辺地図作成など職員の発案が相次いで紹介されたが、市民の姿は少なく、職員から「頑張る職員の姿を知ってほしかった」との声も聞かれた。
 市は1955年から業務改善アイデアを募る職員提案制度を導入しているが、最近の提案数は年間140件程度にとどまっていた。提案数を増やすため、2007年度に表彰制度などを見直して積極的な提案を呼び掛け、711件にまで急増した。これを機に、市役所改革を多くの市民に知ってもらおうと、公開の場で優秀なアイデアを発案した職員の発表会を企画した。各区役所や地下鉄駅などでチラシを配布するなど周知したが、一般市民の参加はほとんどなく、区役所周辺地図を作成した北区役所改革実践チームや、職場関係向上のためのあいさつ運動を寸劇調でアピールする消防局職員らの報告を、今年採用された新人職員らが聞いた。市行政改革課は「次回からは、1人でも多くの市民にやる気のある職員の姿を見てもらうよう工夫したい」としている。

京都市職員が市民の立場から仕事に取り組んでいるかどうかという問いに、そう思う職員は9割だが、市民は3割にとどまる−。市が14日まとめた「公務員倫理アンケート調査」で、行政サービスの受け止め方で市職員と市民の間に大きなずれがあることが分かった。市幹部は「市民感覚がいかに厳しいかよく分かった」と厳粛に受け止めている。
 調査は、服喪休暇の不正取得が発覚、大量処分した直後の昨年11月に職員の接遇や法令順守など9項目の共通質問を設定し、市民と市職員それぞれ3000人を対象に初めて行った。回収率は市民40・3%、職員82・3%。 市職員が「市民の立場に立って仕事に取り組んでいる」と答えた職員は91%だったのに対し、市民は29%にとどまり、逆に「していない」と感じている市民は51%と半数以上に達した。 「法令を守り公正公平に仕事を進めているか」でも、職員のほぼ全員が「している」と回答したが、市民の43%は「していない」と答え、認識に大きな差が出た。「電話の応対で所属と氏名を名乗っているか」でも、職員の79%が「している」と回答したが、「していない」と答えた市民は34%だった。 意見の記述では、市民から「市民より職員が上という意識がある」「市民のための仕事という認識も能力もない」などの厳しい指摘があり、職員からも「公務員としての自覚がない」「応対が無愛想」といった自戒の声が多くあった。市人事部は「厳しい結果を踏まえ、全職員に認識を改めるよう徹底させ信頼回復につなげたい」としている。

4月18日付の記事では,京都市で職員提案型の公開報告会を開催した様子を紹介.提案内容よりも,公開で報告会を行ったものの,市民の出席が少ないことに力点が置かれた記事.一方,4月15日付の記事では,同じく京都市で,職員と市民に対して「公務員倫理アンケート」を実施した結果,両者間で,職員の接遇,法令遵守の点で「ズレ」があることを紹介.市民による回答はより厳しい結果となっていることに力点がある記事.同一市内での市民及び自治体職員の意識(思い)と現状を示す事例としては興味深い.
恐らく,4月18日付の記事にある改善提案の紹介は,自治体行政に精通又は関心が高い市民にとっては関心がが持たれやすい.一方で,大半の市民にとっては,これらの改善提案は,技術的又は微細(はたまた,遣って当然)との思いがあるのか,関心は持られ難いことと思う.むしろ,4月15日付の記事にあるような休暇の不正取得等の不適切事例を如何に改善するのかということであれば関心を持ち易い.改善事例についても,提案に止まらず,提案を受けてどのように改善したのか,更には,市民の側から更なる改善点を求め,「見える化」で実現の成果をも分かる取り組みであれば,参加の意欲も湧くというもの.このような個別具体事例自体への対処方策自体が意味をもつ,いわば「事件の政治学*1ならぬ「事件の自治行政学」を通じこそ,「住民の「市民デビュー」」*2の端緒となり,市民と自治体の相互理解に結びつくのではないだろうか.

*1:飯尾潤『民営化の政治過程』(東京大学出版会,1993年)7頁

*2:金井利之「自治体経営」『特別区職員ハンドブック2004』98頁