国学力テストの市町村・学校別データの開示の是非をめぐり、鳥取県教委は五日、市町村教委や校長会との意見交換会倉吉市の中部総合事務所で開いた。ほとんどの出席者が非開示を支持。教育現場からは、学力調査がきっかけとなって教師が批判にさらされた事例などが報告された。
小中学校から校長二十九人、市町村教委から教育長ら二十六人が出席。中永広樹県教育長は非開示の理由に挙げられている過度な競争や序列化について「具体的な例があれば聞きたい」と求めた。これに対し、東部の中学校長は二〇〇三年度の県基礎学力調査の際、結果が悪かったために保護者や地域から教科担任に批判が寄せられ教員が転勤した事例を紹介。別の中学校長は「結果が悪かったことで生徒が自信を失い、対教師、生徒間暴力が頻発した」と明かした。具体事例が挙がる中、「(過度な競争や序列化が)起こってからでは遅いのではないか」との指摘もあった。智頭町の藤原一彦教育長は「テスト前は非開示という約束だった。県教委と現場との不信感が生まれてくるのではないか」と信義を重視、鳥取市の中川俊隆教育長は「教育論で押し切ってほしい」と要望するなど、ほとんどの教委が非開示を支持した。一方、南部町の永江多輝夫教育長は県情報公開審議会の「開示すべき」との答申を踏まえ「県条例に規定された審議会の答申は県民の願いであり、住民の思い。学校教育を理解していただくチャンスととらえるべき」と開示の正当性を主張。大山町の山田晋教育長は「理解が得られれば柔軟に対応すべき」と開示に一定の理解を示した。開示の可否は十一日の臨時教育委員会で決定される。

同記事では,鳥取県教育委員会が,全国学力テストの開示に関して,県内市町村の教育委員会と校長会との間で意見交換を行ったことを紹介.
7月10日付の本備忘録でも取りあげた鳥取県情報公開審査会による同テスト結果の非開示取り消しに関する答申のその後.市町村教育委員会等は非開示が大半であった模様.同記事では記載されていないものの,読売新聞の報道では,同県の情報公開条例の「改正」を述べた参加者もいたことも紹介*1.一般行政からの独立性とともに,系統性が重視されて整備された教育委員会制度*2.同発言からは,市町村と都道府県間という「限定された系統」間での「序列化」意識は比較的解消されつつはあるのかなあと思いつつも,その一方で,「一般行政」である執行機関間,そして,執行機関と附属機関との間での(意識面での)「序列化」はあるものかなあとも思う.
なお,同テスト.東京新聞の報道では,自民党に置かれた無駄遣い撲滅プロジェクトチームが,構想日本とともに開始した「政策の仕分け」の結果が紹介されており,「不要」とも判断された模様*3.同判断に至った「根拠」は,同報道のみでは十分に把握ができないが,文書として開示はされるのだろうか.
「「規律・監視」の装置」として「見られる」*4ことを想定し開始された試験制度.「人々をとらえ,記述し,記録し,分類し,比較し,規格化し,排除し,あるいは選別する「技術」として」「社会に共通した制度であり,装置」(381〜382頁)であるとすれば,その形式は変えつつも,今後はいかなる形態で共通化されるのだろうか.

*1:読売新聞(20008年8月6日付)「「序列化」懸念 反対が大勢

*2:紱久恭子『日本型教育システムの誕生』(木鐸社,2008年)194頁

日本型教育システムの誕生

日本型教育システムの誕生

*3:東京新聞(2008年8月6日付)「文科省のムダ自民が点検 全国学力テスト“落第点”

*4:天野郁夫『増補試験の社会史』(平凡社,2007年)

試験の社会史―近代日本の試験・教育・社会 (平凡社ライブラリー)

試験の社会史―近代日本の試験・教育・社会 (平凡社ライブラリー)