政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)は14日の会合後の記者会見で、地方税財政改革を柱とする首相への第3次勧告の提出時期について「秋までにはしなければいけないが、6月上旬には間に合わないだろう」と述べ、当初予定から大幅に先送りする方針を初めて明言した。
 分権委は当初、政府が6月下旬に策定予定の「骨太の方針」に反映させるため、5月中にも勧告する予定だった。しかし国直轄事業費の一部を地方自治体が負担する制度の見直し議論に時間を費やしたことなどから、勧告内容について委員間の意見集約が進んでいなかった。
 丹羽氏は「できるだけ早くやらなければいけないし、中間過程で何らかの結論が得られれば、意見表明や勧告も必要かもしれない」と述べ、議論の進ちょく状況に応じて第3次勧告の内容の一部を前倒し勧告することなども検討する考えを示した。この日の会合では、今後の議論の進め方について、地方消費税の拡充などにより国と地方の税源配分を現在の6対4から5対5に近づける税源移譲の在り方を優先して検討すべきだ、との意見が出た。

首相の諮問機関である地方制度調査会が6月にも提出する答申の素案が14日、明らかになった。「平成の大合併」について「市町村合併特例法の期限の来年3月末で一区切りとするのが適当」として、国主導の合併推進策の打ち切りを明記。住民サービス確保のため、小規模自治体の事務の一部を都道府県が補完する仕組みも盛り込んだ。
 ただ、合併推進の見直しを掲げる一方で、人口1万人未満の小規模市町村が全体の4分の1以上を占める現状を踏まえ、「合併は行財政基盤の強化に今後もなお有効」とも指摘。合併に向けた知事の関与を強化した現行の特例法の期限後、新たな特例法の制定を求めた。また小規模市町村については、住民サービスや行政効率化の観点から「周辺市町村との広域連携や都道府県による事務補完など多様な選択肢を用意し、最適な仕組みを選び取れるようにすべきだ」とした。
 しかし全国町村会が、事務補完による市町村自治の縮小や、事務負担の軽減に伴う地方交付税の削減などを懸念しており、反発も予想される。答申素案は自治体の議会や監査機能の強化策にも言及。地方自治法で定める議員定数の上限を撤廃したり、監査委員事務局を複数の市町村が共同で設置できる制度の導入を提言している。答申素案は、15日の専門小委員会に提示して最終調整に入り、6月の地制調総会で答申を決定、首相に提出する予定。

両記事では,地方制度調査会と地方分権改革推進委員会における答申及び勧告の提出予定時期について紹介.「「多極分散型」分権論議*1とも評され,その「所掌事項の分担関係を明確」(212頁)にすることを設置当初には指摘もされた両機関.明確さ(又は「分散さ」)ゆえか,その審議結果は各々自立的な状況.
第一記事では,地方分権改革推進委員会の『第三次勧告』の提出時期について,昨日開催の第83回委員会終了後の記者会見において委員長より言及があった旨を紹介.同回に提出された資料*2を拝読すると,「財政分権に関連し,委員会としての基本姿勢をどこに置くかを検討」ともあり,未だ理念及び各種見解の取りまとめ的な資料段階で止まっているようでもあり,実質的且つ現実的な議論を行うとすれば,同委員会としての「遅滞」*3の判断は現実的か.同判断に至るのは,2008年11月8日付の本備忘録でも触れた,委員会当初での「経済財政諮問会議との連携」*4から,経済財政諮問会議における議員構成が改められたことを受けた,同委員会と経済財政諮問会議の関係性(又は,各々の「場」の配置)の変化も一つの要因なのだろうか.
ただ,審議内容及び時期に関する進行管理については,外部の観察からではよく分からないものの,『第1次勧告』内で「平成21年度中の出来る限り早い時期に「新分権一括法案」を国会に提出することを目指し,政府として講ずべき必要な法制上又は財政上の措置等を定めた地方分権改革推進計画を作成すること」*5を目途としつつも,『第2次勧告』の審議途中及び提出以降では,2009年1月24日付の本備忘録でも取り上げたように,やや「輻輳」状況にあることからすれば,同勧告の提出時期が延伸されることで,『地方分権推進計画』の作成時期や2010年の通常国会地方分権一括法』の提出時期については,現在のところ,どのように設定されているのだろうか.
第二記事では,2009年4月15日付の本備忘録でも触れた,同調査会の答申提出時期とその内容にほぼ合致した予定である模様依然,同調査会HP*6が更新されていないため,同委員会への提出資料及び審議内容を把握できず,残念.同記事では,市町村合併の「一区切り」と答申内で言及されるともあり,いわゆる「政策終了」*7論の一つとして整理できそう.ただ,市町村合併の前提が自主合併であることからすれば,国レベルでの「政策終了」は兎も角,今期での各自治体内での合併に向けた審議の「一区切り」が,「全面的終了」又は「段階的終了」(同頁)となるのか,更には,「全面的終了」か「部分的終了」(453頁)となるのかは,要経過観察.

*1:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)207頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*2:地方分権改革推進委員会HP(第83回:2009年5月14日開催)「資料1税財政関係資料資料1−2

*3:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝村松岐夫『講座行政学第2巻 制度と構造』(有斐閣、1994年)322〜323頁

制度と構造 (講座行政学)

制度と構造 (講座行政学)

*4:地方分権改革推進委員会HP『中間的なとりまとめ』(2007年11月16日)3〜4頁

*5:地方分権改革推進委員会第一次勧告 生活者の視点に立つ「地方政府」の確立』(2008年5月28日)40頁

*6:総務省HP(審議会・委員会地方制度調査会)「会議資料

*7:真渕勝『行政学』(有斐閣,2009年)452頁

行政学

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