国が地方自治体の仕事を法令で縛る892項目の「義務付け」見直しを求めた政府の地方分権改革推進委員会の第3次勧告が7日決定したのを受け、地方側からは勧告内容の早期実現を求める声が相次いだ。勧告が提言した「国と地方の協議の場」についても「具体化に向け実質協議を速やかに始めるべきだ」との指摘が出ている。
 全国知事会など地方6団体は同日、義務付け見直しについて「地方の創意工夫を生かした住民本位の施策を推進する上で必要不可欠。早期法制化を強く求める」との共同コメントを発表。政令指定都市でつくる指定都市市長会も勧告内容について「まちづくりや子育てなどの項目も含まれており評価する」との談話を出した。
 知事会関係者は義務付け見直しが実現すれば「自治体はこれまで通りの国頼みではなく、地域の実情に合った行政運営をどう進めるかについて大きな責任を負うことになる」と話した。国と地方の協議の場は鳩山政権が法律に基づく設置を約束しているが、具体的な制度設計が進んでいないのも事実。ある自治体関係者は「勧告は、国と地方の代表が早く腹を割って話せというメッセージだ」と述べ、早期設置に期待を示した。

同記事では,2009年10月7日に開催された第97回地方分権改革推進委員会において『第3次勧告』(案)が了承されたことを紹介.案については,字句修正を踏まえて,同日付の時事通信による配信記事において報道されているように,本日「8日にも鳩山由紀夫首相に提出する」*1予定とのこと.
2008年5月29日付の本備忘録では『第1次勧告』,同年12月9日付の本備忘録では『第2次勧告』と,首相への提出された勧告に対する報道状況を紹介してきたものの,『第3次勧告』に関しては,同委員会における了承と首相への提出との間に時間的なラグがあるため,まずは一記事のみの紹介(勿論,明日の報道状況次第では各紙の報道状況を見てみたいとも思ってはいますが).
『第3次勧告』(案)の内容において,2009年9月25日付の本備忘録でも取り上げたように,いわゆる「義務・枠」に関する部分は,既に第96回の同委員会において了承済み.第97回では「第2章地方自治関係法制の見直し」,「第3章国と地方の協議の場の法制化」に関する文案が提出され,あわせて了承されている.同部分における内容としては,まず前者については,教育委員会・農業委員会の「在置」に関して「任意に選択できるようにすることができるように改める」方針が明記されている.そして,特に前者のいわゆる「選択制」に伴い,「教育の政治的中立性を確保を万全なものとするための具体的な措置」についても言及されており,具体的には「長による教員任用の適否を事前に審査する専門的な審査機関を設けることも,十分に値する」*2との見解が示されていることも特徴(か).同審査業務を担う行政組織の形態については,行政委員会から審議会等まで多様性が考えられそう.
また,後者の「国と地方の協議の場」の部分については,同勧告では.同場に関する「たたき台」「試案」が示されてはいるものの,「国と地方の適切な役割分担の実現が強く求められていることにも鑑み,この際,国と地方の双方の代表者が一堂にに集まる集会をできるだけ速やかに設けて,「国と地方の協議の場の法制化」について率直に意見を交換し,双方の合意を目指すべきである」(45頁)との提案が行われており,地方六団体の提案*3を配慮されてか,同場の具体的な内容については,国と地方の双方で確定すべきであるとしている.
同委員会における『勧告』が,地方分権改革推進法第10条第1項にいう「地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針」*4となるためのものとすれば,同委員会における『勧告』という文書の性格から考えてみた場合,同部分の理解は,意外と難しそう.
つまり,同勧告では「たたき台」「試案」との明記がされている以上,「国地方調整会議(仮称)」に関して,具体的な検討・措置がなされることは,同委員会としての本意ではないようでもあり(下名個人的には,「たたき台」「試案」からも興味深い論点が種々想起されますが),同提案の本文内容をもって,今後策定が想定される『地方分権改革推進計画』及び同計画を踏まえた「新・地方分権一括法」としての措置とされていることを見込まれていているようにも考えられる(ただ,その場合,同勧告の意思としては,同場本体についての「速やか」な設置は想定されていないように考えられなくはない,と理解することが適当なのでしょうか).または,同提案部分は,『第1次勧告』における「第4章現下の重要二課題」*5のように,あくまで補助的な提案と位置付けて理解することが適当なのだろうか.難しい.