鳥取県内で「町村福祉事務所」の設置に向けた動きが本格化した。日吉津村、江府町、日南町の3町村は来年4月の開設に向けて準備を進めており、他の町も検討中。生活保護の支給決定など県が行っていた福祉業務が移管され、町村でも福祉サービスが一元的に提供できるようになる。
 福祉事務所は社会福祉法に基づく設置義務がある県と市のほか、条例で町村も設置することができるが、これまで県内にはなかった。県東、中、西部、日野の各福祉事務所が所管する生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法の福祉3法に基づく業務を移管。町村が生活保護の申請受け付けから保護の決定や支給、母子家庭の相談など総合的に支援する。ケースワーカー等の配置が必要だが、人件費や運営費は国の特別交付税で措置される。島根県では本年度、全国初の全13町村設置が実現した。
 鳥取県では昨年10月から各町村長らに制度を説明し、行政懇談会などで意見交換。今年5月には先進地の島根県飯南町福祉事務所の職員を招き、県と全町村が合同で勉強会を開催するなど設置に向けた検討を開始した。来年度設置の日吉津村、江府町、日南町の3町村のほか、伯耆町では11年4月設置を目指して準備を進めるなど、県西部を中心に機運が高まっている。県福祉保健課によると、「専門職員が確保できるのか」「住民と近すぎてプライバシーに関する仕事はやりにくいのではないか」など一部で懸念の声もあるが、飯南町福祉事務所の担当者は「より住民に近いところで福祉・保健業務が一元的に提供できるメリットは大きい。住民の生活実態を十分に把握し、きめ細かい対応ができる」と住民サービスの向上をあげている。
 日南町では、すでに有資格者を対象にした町職員の採用募集を開始。内田格福祉保健課長は「サービスの一元化で住民の利便性も高まる」とし、県福祉事務所との業務引き継ぎや研修期間として6カ月を見込む。県は今後、ほかの町に対しても引き続き勉強会や情報提供などを行う予定で、福祉保健課は「町村に総合窓口を設け、生活保護等のサービスが完結する仕組みが望ましい。円滑な移行に向けて町村と協議しながら進めたい」としている。

同記事では,鳥取県内に位置する町村において,福祉事務所の設置に向けた取組を紹介.福祉事務所の設置状況については,厚生労働省HPを参照*1.2009年4月1日現在では,全国で27町村に設置されている福祉事務所.同記事にもあるように,お隣の島根県では,2006年から段階的に町村福祉事務所を設置し2009年4月より同県に位置する全ての町村に,同県の権限が移譲されて設置*2
職員配置,組織,運営費補助等の「規律」*3を通じて,「政策コミュニティ」*4が形成されると解されることもある同機関.県からの移譲後に,その「課業負担(ワーク・ロード)」*5に対して,各町村が堅固となりうるかは,要経過観察.

*1:厚生労働省HP「福祉事務所

*2:島根県HP(市町村課市町村への権限移譲)「平成21年度からの市町村への権限移譲項目

*3:大橋洋一『行政規則の法理と実態』(有斐閣,1989年)212〜213頁

行政規則の法理と実態

行政規則の法理と実態

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)150頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*5:田辺国昭「生活保護政策の構造(2)」『國家學会雑誌』第101号3・4月号,1988年,160頁