熊本県は19日、教育、選挙管理など10の行政委員会すべてで、非常勤委員の報酬を月額制から日額を基本とした制度に見直すと発表した。2月議会に条例改正案を提出する。県人事課によると、県の全行政委員会で見直しを実施するのは珍しく「委員の活動実態を踏まえた報酬体系にしたい」としている。
 同課によると、対象は75人で現在は3万7千〜25万7千円の月額報酬だが、委員会によっては業務をしたのが年間10日程度の例もあった。見直し後は、現行の額の約3分の1を基礎報酬として支給した上で、委員会出席など業務があった日数について、1日当たり2万3100〜2万5700円を支払う。年間2千万〜3千万円の経費削減が見込まれる。
 行政委員の報酬をめぐっては、勤務日数が少ないのに月額で支給するのは地方自治法違反とした昨年1月の大津地裁判決を受け、一部自治体で日額制への見直しが進んでいる。

青森県は19日、選挙管理委員など非常勤の行政委員の報酬について、現行の月額制から日額・月額併用制とする条例改正案を、24日に開会する県議会2月定例会に提出すると発表した。県によると、併用制が導入されれば都道府県では初めてのケースとなる。
 改正案では、現行の月額報酬の2分の1に相当する額を基本とし、会議などに出席した委員に日額報酬を支給する。委員の日額報酬は、日額制を採用する他県の半額程度に当たる1万8000円、各委員会の委員長、会長は2万円とする。県は(1)委員の職責の重さ(2)勤務日数に応じて支給するという地方自治法の規定―などを勘案し、併用制の導入を決めたと説明している。
 県によると、月額制の2009年度は、9委員会の80委員に計約9422万円が支給される予定。併用制が導入されると、10年度の当初予算の支給見込み額は約7862万円で、1500万円以上を削減できる。ただ、勤務日数が多くなった場合、一部委員の報酬は逆に増加する可能性もあるという。
 弘前市民オンブズパーソンは「勤務実態がなくても報酬が支払われるという月額制の甘い汁を残した。全くの論外だ」と批判している。

第1記事では熊本県,第2記事では青森県における行政委員会の委員報酬の見直し方針について紹介.2009年1月23日付の本備忘録にて取り上げた,行政委員会委員報酬の「月額制」に関する違憲判決を受けて,同年2月12日付同年8月23日付同年11月25日付の各本備忘録で言及した報酬制度の「見直し」に向けた,各自治体における検討事例.
第1記事の熊本県に関しては,2009年11月25日付の本備忘録にて取りあげた「人事課」による「具体策の検討」を踏まえてか,同記事にも紹介されているように,2010年2月12日付の本備忘録にて取りあげた静岡県における「全ての委員会における非常勤委員報酬」の「「日額」制」が,(結果的にでしょうか)「政策波及(policy diffusion)」*1された模様.
第2記事の青森県に関しては,「行政委員会(監査委員,公安委員会,育委員会,人事委員会,選挙管理委員会労働委員会,海区漁業調整委員会内水面漁場管理委員会及び収用委員会をいう.)の適切な委員報酬のあり方等について検討するに当たり,県内各層から幅広く意見を聴取する」*2を図ることを目的として設置された「青森県行政委員会委員報酬検討会議」において検討.同検討会では,第1回では「各都道府県の行政委員会委員の報酬額一覧(金額順)」*3や青森「県の各行政委員会の活動状況等」*4,第3回では「欧米の行政委員会制度」*5等,非常に参考となる資料が整理,公表されている.
特に,第2回の配布資料である「各行政委員会委員の主な月間業務状況」*6及び第3回配布資料である「各行政委員会委員の月別活動状況調」*7では,個々の委員及び各行政委員会における「役所に出向く意味での勤務」である公式の委員会出席以外での「潜在的待機状態」*8ともいえる公式開催以外での「事務局との打合せ」「会議の事前検討」「情報収集等自主的活動」の様子が把握できる(大変重要な資料ですね).
ただ,同検討会が2010年1月に取りまとめた意見書では,「県内各層から幅広く意見を聴取」することが目的であったことをも踏まえてか,「本検討会議で委員から出された主な意見」*9を,「両論併記」*10(正確には,個論併記のようではありますが)の形式が採用されている.同県では,このような多論を踏まえてか,本記事でもあるように「現行の月額報酬の2分の1に相当する額」を,いわば「基本」級的に月額支給され,「会議などに出席した委員に日額報酬を支給」される「併用型」を採用される模様.
果たして,他の都道府県において,今後,静岡県熊本県のような「日額制」の検討・採用をされることになるのか,青森県のような併用」制の検討・採用をされることになるか,または,「月額制」を持続されることとなるか,その報酬という制度選択の様相は,要経過観察(この観察課題も,できれば,少しまとめてみたいですね).

*1:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

*2:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議)「青森県行政委員会委員報酬検討会議設置要綱」第1条

*3:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議:第1回(開催日平成21年11月6日))「資料3各都道府県の行政委員会委員の報酬額一覧(金額順)

*4:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議:第1回(開催日平成21年11月6日))「資料2本県の各行政委員会の活動状況等

*5:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議::第3回(開催日平成21年12月18日))「資料2欧米の行政委員会制度

*6:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議:第2回(開催日平成21年11月24日)))「資料1各行政委員会委員の主な月間業務状況

*7:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議:第3回(開催日平成21年12月18日))「資料1各行政委員会委員の月別活動状況調(平成21年2月,4月,7月,10月)

*8:碓井光明『政府経費法精義』(信山社,2008年)199頁

政府経費法精義

政府経費法精義

*9:青森県HP(組織でさがす総務部人事課青森県行政委員会委員報酬検討会議)『行政委員会委員報酬のあり方に関する意見書』(青森県行政委員会委員報酬検討会議,平成22年1月)1頁

*10:武智秀之『政府の理性、自治の精神』(中央大学出版部,2008年)143頁

政府の理性、自治の精神

政府の理性、自治の精神