佐賀県と県市長会、町村会3者のトップらが対等に協議する「県・市町行政調整会議」の初会合が6日、県庁で開かれた。子宮頸(けい)がんワクチン接種の公費助成のあり方を協議したほか、県が県営事業の市町負担金廃止を初めて提案した。
 県側は知事、副知事や関係本部長、市長会と町村会は正副会長ら各3人が出席し、座長に古川康知事が就いた。会議では、町村会が子宮頸がんワクチンの予防接種費用を県内5市町が助成する状況を挙げ、全県実施の検討を求めた。ワクチン接種だけでなくがん検診とセットで取り組む必要性も指摘され、古川知事は「検討したい」と前向きな姿勢を示した。次回、国の予算状況などを踏まえ議論する。
 道路や土地改良事業などの県営事業負担金について県は、市町負担金と県からの補助金を原則廃止する考えを提起。市町側は「すぐにできるものと時間をかけるものの整理を」「市町によって損得の差が出てくる」などの意見が出た。今後具体的に検討する。各市町が運営する国民健康保険の統合では、連携会議を12日に発足し検討を進めることを確認した。県から市町への権限移譲も協議した。次回は11月下旬で調整する。

本記事では,佐賀県に設置され,同県と同県内の市長会,町村会から構成される「県・市町行政調整会議」の第1回会議の開催について紹介.2010年9月12日付の本備忘録にて取り上げた,同会議.同会議の同回の概要に関しては,同県HPを参照*1
同回の「議事次第」*2を拝読させていただくと,同回では,「県庁本館4階」の「正庁」にて開催され,まずは「座長選任」と「知事,市長会会長,町村会会長の「あいさつ」が行われたのち,構成員から提出された6つの「協議事項」が協議が行われた模様.会議は,2時間.具体的な協議項目は,「町村会」からは「子育て支援のための「子宮頸がん」対策について」,「幹線(国道)乗合バスの運行確保に向けた取組について」の2項目が提出,残り4項目に関しては,県から提出されたものとなり,「国民健康保険の広域化について」,「県営事業負担金の廃止について」.「県から市町への権限移譲について」と「今後のスケジュールについて」*3とある.
佐賀県・市町行政調整会議に関する規約」*4第1条を拝読させて頂くと,「市町の行政に影響を及ぼす県の施策の企画及び立案又は実施」に関して「県と市町が協議を行」うことで「施策の立案段階から県・市町が緊密に連携すること」を目的として設置され,その開催に関しては,「知事」が「事前に市長会長及び町村会長の同意を得」たうえで,あわせて,「協議に附すべき事項を示」すことより同「会議を招集」することができ,一方,同会議の構成員である「市長会長又は町村会長」側からは,「知事に対し,協議に附すべき事項を示」すことで「臨時に行政調整会議の招集を求めること」と同規約第5条により規定されており,その開催に関して原則的には知事による主催とされるものの,市長会,町村会側からも「臨時」会議を求めることもできる,とある.また,「協議」内容に関しては,「協議に附された事項の取扱」に関しては,「県,市長会及び町村会の一致をもって,協議が整ったものと」とされ,これにより「協議が整った事項」に関しては,「県,市長会及び町村会」に「協議の結果を尊重する」ことが同規約第5条により求められている.これらのことからも,同会議は,いわゆる「相互理解による,契約による」「自由な合意」に基づく「側生組織」(lateral organization)*5としても整理ができそう.
ただ,同規定内で用いられている「協議」という文言を用いられた各条項を拝読させて頂くと,同会議に企図される「「協議」とは,関係」する知事,市長会,町村会が「同等な立場で参加する会議ではない」*6か否かは,判然とはしないものの,同規定第7条第3項では,「協議が整わなかった事項」に関しても「当該会議においてその後の取扱いを定めるもの」とされ,何れかが「離脱」*7の路線選択を,一方的に最後通牒されることなく,「「協議」以前に「下協議の下協議」「本格的な事前協議」」*8が図れるとも察せられるものの,同会議において,その路線選択に関する意思の表示も行われる模様.「摩擦や紛争や分裂的行為を抑止するそれ自体の公式手段を欠いている」*9とも解されることもある「側生組織」としての同会議においては,協議事項によっては,一方の構成員の現行の負担を分有又は移管を求めることになり,場合によっては,「協議が整わな」い場合を取り扱うことも想定されなくもない,今後の協議過程についても,要経過観察.

*1:佐賀県HP(県政の運営施策佐賀県・市町行政調整会議)「開催内容 第1回佐賀県・市町行政調整会議

*2:佐賀県HP(県政の運営施策佐賀県・市町行政調整会議開催内容 第1回佐賀県・市町行政調整会議)「第1回佐賀県・市町行政調整会議次第

*3:佐賀県HP(県政の運営施策佐賀県・市町行政調整会議開催内容 第1回佐賀県・市町行政調整会議)「第1回佐賀県・市町行政調整会議 協議事項について」(佐賀県・市町行政調整会議事務局,(佐賀県経営支援本部市町村課))

*4:佐賀県HP(県政の運営施策佐賀県・市町行政調整会議)「佐賀県・市町行政調整会議に関する規約

*5:チェスター・I.バーナード『組織と管理』(文眞堂,1990年)150頁

組織と管理

組織と管理

*6:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)219頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

*7:A.O. ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』(ミネルヴァ書房,2005年)25頁

離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書)

離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書)

*8:今井照「都道府県・市町村関係の制度と実態」『Jurist』No.1407,2010.9.15,116頁

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

*9:前掲注5・チェスター・I.バーナード1990年:157頁