全国知事会麻生渡会長=福岡県知事)は9日、中川浩明事務総長(65)の後任に、本県の橋本光男副知事(62)を内定した。22日の全国知事会で正式に決定する。知事会の事務方トップの事務総長に地方自治体出身者を起用するのは初めて。異例の抜てき人事となる。上田清司知事が麻生会長の要請を受けて推薦した形で、知事は同日、記者団に「マネジメント能力に優れ、粘り強い」と橋本氏を推薦した理由を述べた。
 知事会の事務総長は歴代、総務省(旧自治省)OBが占めており、片山善博総務相も就任前に「典型的な天下り団体」と指摘してきた。今回、地方自治体から初めて起用することで、こうした批判をかわすとともに、知事会主導で地域主権改革をアピールしようという狙いがあるとみられる。人選にあたっては麻生会長が、各都道府県に後任事務総長を推薦するよう打診。事務局のある都内に通える範囲の自治体幹部などが対象候補に上がり、最終的に麻生会長から上田知事に人選を要請する形になったという。上田知事は「麻生会長から『埼玉から一番、重い人(重職)を出してくれ』という依頼があった。ちょうどその前に橋本さんが退任する意向を私に漏らされたので、それなら受けてくれないかとお願いした」と経緯を明かした。
 橋本氏は川越市出身、埼玉大学卒。1970年に県庁に入庁し主に総務・人事部門を歩いた。2004年の埼玉国体開催に際しては、国体・国際スポーツ大会局長として手腕を発揮。その後、総合政策部長などを経て07年10月から現職。地方行政に精通した「まとめ役」として定評がある。橋本氏は今月28日に副知事を退任する予定。橋本氏は取材に「まだ、しゃべれる状態ではない」と述べるにとどめた。知事会の事務総長は本年度内に交代する方向は既に固まっており、退任する中川事務総長(元総務省消防庁長官)は元埼玉県副知事。
後任副知事に広畑氏起用へ 国交省から人選
 上田清司知事は9日、橋本光男副知事(62)の後任に国土交通省近畿地方整備局総務部長の広畑義久氏(50)を充てる方針を固めた。広畑氏について知事は「行改革推進本部や警察庁、UR(都市再生機構)など、幅広く活動してきた優秀な人材。柔軟な思考で新しい考え方を埼玉県の中に吹き込んでほしい」と期待した。開会中の12月定例県議会で人事案件として提案。同意されれば、橋本氏退任後の今月29日に就任する見通し。広畑氏は東大法学部卒業後、1983年に旧建設省に入庁。国交省大臣官房企画官、都市基盤整備公団企画課長、UR経営企画部チームリーダー、住宅企画官、警察庁運転免許課長などを歴任した。

本記事では,全国知事会における事務総長職への内定状況について紹介.2010年12月9日付の読売新聞*1,同年同月同日付の日本経済新聞*2,同年同月同日付の時事通信*3,2010年12月10日付の毎日新聞*4,同年同月10日付の毎日新聞*5,同年同月同日付の東京新聞*6においても報道されている,同職への現在の埼玉県の副知事がご就任される内定に関する報道.本記事では,①「各都道府県に後任事務総長を推薦するよう打診」され,②「事務局のある都内に通える範囲の自治体幹部などが対象候補」として,③「最終的に」全国知事会長から埼玉県「知事に人選を要請する形」と取られたと,他の記事と比しても,選考の手順が,やや詳しく記載されており,参考になる.
「地方制度改革」では,「各省別のキャリア・システムの中で獲得される執務的専門知識を有する官僚の協力が得られてはじめて,政策決定に関与する外部の専門家のアイディアは生かされ」*7ることもあるとも観察される一方で,本記事に言う「自治体出身者」の「内定」が実際にご就任された後でも,「各知事の見識に基づき自由に議論し,それを踏まえて主張し,行動」*8されれば,何も問題はないとも思わなくもないものの,例えば「地方の利益を代表する存在」*9として「地方六団体の総意」*10の形成において,相異が生じることにもなるのだろうか.要経過観察.

*1:読売新聞(2010年12月9日付)「知事会事務総長に異例の県職員出身、橋本氏内定

*2:日本経済新聞(2010年12月9日付)「知事会事務総長、自治体から起用 埼玉県副知事の橋本氏

*3:時事通信(2010年12月9日付)「事務総長に橋本埼玉副知事=異例の県職員出身−全国知事会

*4:毎日新聞(2010年12月10日付)「知事会事務総長、自治体から起用 埼玉県副知事の橋本氏

*5:毎日新聞(2010年12月10日付)「橋本副知事:知事会事務総長へ 後任に国交省・広畑氏 /埼玉

*6:東京新聞(2010年12月10日付)「全国知事会 橋本副知事が事務総長内定

*7:木寺元「地方制度改革と官僚制」『年報政治学2008-Ⅱ 政府間ガバナンスの変容』(木鐸社,2008)306頁

政府間ガバナンスの変容 (年報政治学)

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*8:片山善博『日本を診る』(岩波書店,2010年)60頁

日本を診る

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*9:村松岐夫地方自治』(東京大学出版会,1988年)186頁

地方自治 (現代政治学叢書 15)

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*10:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)56頁

地方分権改革 (行政学叢書)

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