全国市長会の森民夫会長(新潟県長岡市長)は3日、岩手県達増拓也知事、盛岡市の谷藤裕明市長と相次いで会談した。森会長は東日本大震災で被災した市町村の行政機能を回復するため、同会として全国の市町村から職員を派遣することを伝えた。被災地からは現時点で計550人程度の派遣を求められており、早ければ1週間程度で派遣を始めるとした。
 森会長は被災自治体への職員派遣について「り災証明の発行や避難所の運営など1カ月から数カ月間の短期派遣のほか、土木や建築など復興にかかわる1年、2年など中長期の派遣をしたい」と説明した。岩手県内からは計約150人の派遣要望が出ているが、沿岸自治体への応援で手薄となる内陸自治体への派遣も検討するとした。達増知事は「市町村の行政機能回復・強化が(復旧・復興の)1丁目1番地で、派遣を頼りにしている」と話し、職員派遣の動きに謝意を表した。

本記事では,全国市長会を通じた,被災自治体への職員派遣の方針について紹介.2011年3月15日付及び同年3月30日付の各本備忘録でも記録した,被災自治体への他の自治体からの職員派遣の取組.本記事では,全国市長会としての派遣方針を報道.同会の同方針に関しては,同会HPを参照*1
具体的な「職種等」は,「比較的短期的な派遣要望」は,「避難所管理・運営,救援物資管理・配送,罹災証明書発行等の事務に係る一般事務職の要望が多数」であり,「中・長期的な派遣要望」は「被災市町村の実情に応じ」た「一般事務職・建築職・土木職・保健師など多様な職種で多様な職務内容の要望」*2が示されている.「要望人数」は,市町村からの派遣要望ではあるものの,県単位で集計した結果を拝読させて頂くと,「岩手県」に位置する市町村からが「153人」,「宮城県」に位置する市町村からが「225人」,「福島県」に位置する市町村からが「86人」,「茨城県」に位置する市町村からが「70人」,「千葉県」に位置する市町村が「16人」と2011年3月30日現在では「合計550人」*3の要望状況にある.
同資料内の「市町村職員の派遣スキーム」というポンチ絵を拝読させて頂くと,被災市町村が職員派遣を求めたい場合の手続としては,次の通りとなる.第一に,「総務省」「公務員部」,そして「被災県」の「市町村課」からの「照会」を踏まえて,「被災市町村」は,同市町村が位置する「被災県」の「市町村課」に対して「派遣要請」を行う.なお,派遣要請に際しては,「職種」「人数」「職務内容」「派遣希望期間」を記入する.第二に,「被災県」は,その要請の「取りまとめ」を行い,「総務省」の「公務員部」に対して「派遣要請」する.第三に,「総務省」の「公務員部」は,本記事でも紹介されている「全国市長会」,そして「全国町村会」に対して「派遣要請の提供」をはかり,その後,各会は,第四として,派遣市町村へ「派遣可能性の照会」を図る手続になる.第五には,照会を受けた市町村から対応の手続となり,上記の主体を「全国市長会」「全国町村会」,「総務省」の「公務員部」,「被災県」の「市町村課」の順で「派遣市町村」の連絡が伝わることになる.これらの後に,最後に,「被災市町村」から「派遣市町村」に対して「最終的な派遣要請」*4が行われる.既存の災害相互援助協定等に基づく,ドナーたる特定自治体と被災自治体との間(bilateralism)のみならず,ドナーの共同運営による特定機関を媒介とした多自治体間(multilateralism)におる職員派遣として図られている模様.興味深い.
ただ,「短期の職員派遣」は,2011年3月30付の本備忘録でも記録したように,職員の派遣に際して,制度上は,「数週間,数か月,もしくは1週間程度の交替制による数か月程度の短期の派遣」には「職務命令による派遣の扱い(公務出張)」とされるものの,「中・長期の職員派遣の場合」となる場合には,やはり「地方自治法第252条の17の規定に基づく派遣となることが想定される」との見解が示されている.そのため,後段の「中・長期」の場合,派遣された職員の方々は,同法上は「派遣を受けた普通地方公共団体の職員の身分」となり,「給料」,「退職手当を除く」「手当」「旅費」の負担は,「当該職員の派遣を受けた普通地方公共団体の負担」*5となる.ただ,これら給料等の「派遣市町村」の負担を想定すれば,如何にその負担を「深く分かち合う」*6かが,制度運用上の課題とも考えられなくもない.上記の「派遣要請」の記入時に求められている「標準様式」*7のなかには,「当該期間内で派遣職員が交替することも差し支えない場合には,その旨付記」することも「記入要領」*8として付記されていることからすれば,当分の間は,同一職員の方が「中・長期」に派遣されるとしても,一定期間の後には,「派遣市町村」には戻られ,その後,再度派遣される,「職務命令による派遣の扱い(公務出張)」の断続的利用により,実施されることにもなるのだろうか.要経過観察.

*1:全国市長会HP(全国市長会最近の動き)「東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼)

*2:前掲注1・全国市長会東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼))10頁

*3:前掲注1・全国市長会東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼))10頁

*4:前掲注1・全国市長会東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼))6頁

*5:前掲注1・全国市長会東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼))1〜2頁

*6:金井利之「自治制度(行政体制)の10年」『ガバナンス』No.120,2011年4月,34頁

ガバナンス 2011年 04月号 [雑誌]

ガバナンス 2011年 04月号 [雑誌]

*7:H.A.サイモン,V.A.トンプソン, D.W.スミスバーグ『組織と管理の基礎理論』(ダイヤモンド社,1977年)216頁

組織と管理の基礎理論 (1977年)

組織と管理の基礎理論 (1977年)

*8:前掲注1・全国市長会東北地方太平洋沖地震に係る被災市町村に対する人的支援のための職員派遣について(依頼))8頁