若手職員に議会を深く知ってもらおうと、和歌山市は今議会から、市役所本庁舎と東庁舎の局長室または部長室のテレビで議会放送を始めた。職員研修の一環として、班長以下の職員は一日に議員一人の一般質問を最初から最後まで見ることができる。
 市によると、ケーブルテレビのアナログ回線を活用して放送。これまで、議会を傍聴するためには3階の議会フロアに行く必要があったが、基本的には課長職など幹部職員のみが赴き、その他の職員らは質問終了後に答弁書を見る程度だった。今回からは、所属する局・部内でテレビを通して傍聴することができるようになった。
 一般質問初日の13日、トップバッターの浦平美博議員が教育委員会に対し質問。そのため、教育局長室には若手職員が集まり、「こういう風になってるんやな」などと話しながら質問の様子や大江嘉幸教育長の答弁を見守った。教育総務課の大北洋史事務主任(34)は「きっちり見るのは初めて。すごくいい機会」。人事課は「将来、答弁書を書く必要がある職員が議会の流れや動きを知ることは重要。自分の仕事内容がどのように議論されているのか、今後の仕事の進むべき方向を知ることができる」と話している。

本記事では,和歌山市における職員研修の取組.
本記事を拝読させて頂くと,同取組では,ケーブルテレビを通じて放送される議会の放映を,従来は同市役所「3階の議会フロア」のみで放送されており「基本的には課長職など幹部職員のみが赴き」視聴していた状態から,「市役所本庁舎と東庁舎の局長室または部長室のテレビ」で視聴を可能とすることで,「班長以下の職員」でも「一日に議員一人の一般質問を最初から最後まで見ることができる」こととしたもの(勤務時間中に「局長室または部長室」へと赴き,視聴することが容易であるかは判然とはしませんが,むしろ一般の職員の皆さんは,議会審議には日常余り接する機会がないものなのですね.なるほど).
全国市議会議長会が実施されている「市議会の活動に関する実態調査結果」を拝読させて頂くと,「平成22年1月1日〜12月31日」間では,「本会議・委員会の放映方法」*1は,最も公開・放送が行われている本会議に関して拝見していみると,まずは「モニターテレビ」を利用する自治体が56.6%(458市)と最も多く,次いで「インターネット」の「録画映像」の配信が37.0%(299市),そして,本記事でも紹介されている「ケーブルテレビ」に関しては36.0%(291市)とあり,3番目の利用状況であることが分かる.
方や,これらのメディアを通じて放送されるその視聴状況は必ずしも判然ともしない.例えば「質問の場と化していた議会」が「討議の広場」*2と移行することで「公開の場における真剣なプロセス」*3であると視聴者が増加することになるか,とはいえ,議会という場が議論の場へと移り変わった場合でも,住民にとっては「人は積極的に真実を避ける」「合理的な非合理」*4な行動をとることになるのか,考えてみたい観察課題.


*1:全国市議会議長会HP(調査・研究市議会の活動に関する実態調査結果:平成22年中(1.1〜12.31))「18. 本会議・委員会の公開・放送状況」41頁

*2:江藤俊昭「議会の政策法務 住民代表や合議体という議会の特性から考える」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)430頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

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*3:片山善博『日本を診る』(岩波書店,2010年)6頁

日本を診る

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*4:ブライアン・カプラン『選挙の経済学』(日経BP社,2009年)231頁

選挙の経済学

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