兵庫県は8日、本年度中の制定を目指す「受動喫煙防止条例」(仮称)の骨子案について、県民の意見を募るパブリックコメントを10日から1カ月間実施すると発表した。「全国一厳しい」とされた規制の当初案は、業界団体などの反対を受け、骨子案で大幅に後退。「健康が本当に守れるのか」といった疑問の声もあり、県はさまざまな意見を参考に最終案をまとめる。
 今年7月に有識者らの検討委員会がまとめた報告書を基に、県は条例骨子案を検討。だが業界団体の強い反対を受け、報告書の内容を一部緩和した。神奈川県が昨年施行した全国初の防止条例と同程度の厳しさとなり、約1年間かけて話し合ってきた検討委の一部委員からは、内容の後退に反発も出ている。
 骨子案では官公庁や病院、大学を除く学校、児童福祉施設喫煙室の設置や使用を認めず、全面禁煙化。百貨店やスーパー、公共交通機関の駅などに加え、客席が75平方メートルを超える飲食店や宿泊施設ロビーは、喫煙室設置で分煙を義務付ける。一方、75平方メートル以下の飲食店やロビー、理容・美容店は、客の参考になるよう、喫煙対応についての表示を義務化したうえで、喫煙も認める。パブリックコメントは12月9日まで実施する。意見を踏まえ、条例案を決定した後、2月の定例県議会に提案する方針。可決されれば、1年の準備期間を経て2013年4月の施行を目指す。問い合わせは県健康増進課TEL078・362・9146

本記事では,兵庫県における受動喫煙防止に関する条例案パブリック・コメントの開始に関して紹介.
2011年5月26日付同年10月10日付の両本備忘録にて記録した同県による同条例案.「平成23年11月10日」から「平成23年12月9日」までの30日間のパブリック・コメントを開始.同案に関しては,同県HPを参照*1
本記事にて紹介されているように,同条例案の整備のなかで,上記本備忘録でも記録した「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会」の報告書からの変更もある.具体的には,パブリック・コメントにあわせて掲載されている資料「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」における規制内容について」*2が分かりやすい.同資料を拝見させて頂くと,上記の本備忘録にて記録した,兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会の報告書段階では「民間施設等」に関して「禁煙義務」と置くことが想定されていたものの,「分煙義務」と改められたことが分かる.
同変更に関しては,本記事では「業界団体などの反対を受け」,2011年11月9日付の毎日新聞では「飲食業界などの反対を受けて」*3,同日付の読売新聞では「客離れを懸念する飲食店や経済界の反発を受け」*4と,報告書案の段階からの変更要因を報道.
自治体の場合は,業界の利益を直接左右する政策が少ないこと」「住民の移行が直接反映する場合が多いことから」「利益団体の影響は必ずしも大きくはない」*5との観察結果も示されてきた.一方,本記事の報道から推察すれば,「団体側からみると,政治実施過程への関与は中央よりも地方において活発」*6な様相も窺えなくもなさそう(か).同条例案の整備のなかでの報告書案からの変更が,同県側のパブリック・コメント前の各団体への「プレ接触*7に基づくものであるのか,又は,パブリック・コメントを迎えるにあたり,同県側の深謀遠慮に基づくものであるのか,その過程も要確認.

*1:兵庫県HP(交流・地域参画と協働パブリックコメント県民意見提出手続(パブリック・コメント手続)について)「「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」のパブリック・コメントの実施について

*2:兵庫県HP(交流・地域参画と協働パブリックコメント県民意見提出手続(パブリック・コメント手続)について「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」のパブリック・コメントの実施について)「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」における規制内容について」

*3:毎日新聞(2011年11月9日付)「受動喫煙:兵庫県が条例骨子案発表 民間施設の分煙を容認

*4:読売新聞(2011年11月9日付)「兵庫「受動喫煙防止条例」案 飲食店 分煙でOK

*5:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)96頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*6:久保慶明「ローカル団体の存立・行動様式」 辻中豊,森裕城編著『現代社会集団の政治機能』(木鐸社,2010年)270頁

現代社会集団の政治機能―利益団体と市民社会 (現代市民社会叢書 2)

現代社会集団の政治機能―利益団体と市民社会 (現代市民社会叢書 2)

*7:原田久『広範囲応答型の官僚制』(新山社,2011年)92頁

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)