仲井真弘多知事は12日までに、安全保障に関する研究や情報収集する課を来年4月に発足させることを決めた。米軍普天間飛行場の「県外移設」要求の公約実現に向けた取り組みをさらに具体化する。また、県として来年4月から米国内に情報収集の拠点を置くことについて、外部に委託する方向で調整を進めている。
 県によると安全保障に関する課は知事公室内に置く。現在、同室で基地関係を扱っている基地対策課と返還問題対策課とは別に創設する。職員は2〜10人となる見通し。新たな課は、仲井真知事が来年4月から本格的に始動させる安全保障問題全般を研究する研究機関と関連する。
 防衛省は在沖海兵隊の駐留目的について周辺国への「抑止力」としての役割を挙げているが、新たな課では、これらの主張に対する検証や、在沖米軍基地の意義などの研究や情報収集を行う。仲井真知事は今年9月に米国ワシントンで開かれた、日米の有識者が沖縄の基地問題や安全保障政策を議論する国際シンポジウムに出席し、米国内で初めて普天間飛行場の県外移設要求を訴えた。新たな課の創設で、公約実現に向けた取り組みを理論面から支える狙いがある。。

本記事では,沖縄県における機構改正の取組方針を紹介.
本記事にて紹介されているように,同県では「知事公室」内に,「基地対策課」が設置.同課では,沖縄県行政組織規則第13条の5により,「基地対策の総合的企画及び調整に関すること」,「駐留軍基地等に係る調査及び対策に関すること」,「軍用地の整理縮小及び返還促進に関すること」,「日米安全保障条約日米地位協定及び周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成11年法律第60号)に関すること」,「駐留軍基地等周辺生活環境の整備に関すること」,「駐留軍等の行為等による問題の対策に関すること」,「基地問題に係る連絡調整会議に関すること」,「関係団体の指導及び育成に関すること」,「他課の所掌に属するものを除く」「旧日本軍接収用地及び旧琉球政府の土地賃借権の登記抹消に関すること」,「自衛隊に関すること」,そして,「その他基地渉外に関すること」*1の11の事務が所掌されている.同県HPの「県庁内組織一覧」のサイトから,本記事でも紹介されている「基地対策課」とともに,「返還問題対策課」*2が配置されているようではあるものの,「沖縄県行政組織規則」では,「基地対策課」に関する所掌事務のみが規定(また,同サイトは,「基地対策課」と「返還問題対策課」の何れからも,「基地対策課」のサイトとなっている.何故だろう).
本記事では,2012年4月から「安全保障に関すると研究と情報収集」を所掌する課を新たに設置する方針が報道.上記の通り,現行の基地対策課でも「駐留軍基地等に係る調査」が所掌されており,新設される課でも所掌されるであろう調査業務も実施.本記事を拝読させて頂くと,新設される課では「抑止力」の「主張に対する検証」,「在沖米軍基地の意義などの研究や情報収集」を行う方針であることも紹介.「基地対策課」は残置されるとなると,調査をめぐる分掌は,下名の関心から興味深い点.「基地対策課」での調査がより政策や実際の意思決定に直接的な影響を与える「手法としての調査利用(instrumental use)」*3とすれば,新設される課では政策立案者が実務家の知識や理解,姿勢のレベルに影響を与えるような「概念としての調査利用(conceptual use)」として分掌されるのだろうか.より具体的な分掌状況は,同課の設置後,要確認.
なお蛇足.「基地政治」に関しては,「国の行政中央集権化しているかどうかも,おおきな違い」*4があるとも観察されることもある.同仮説の検証もまた行われると,興味深そう.

*1:沖縄県HP(沖縄県法規集)「沖縄県行政組織規則」(昭和49年3月30日,規則第18号)

*2:沖縄県HP「県庁内組織一覧

*3:Nutley,Sandra M.,Isabel Walter, Huw T. O. Davies(2007)Using Evidence: How Research Can Inform Public Services,The policy press:36.

Using Evidence: How Research Can Inform Public Services

Using Evidence: How Research Can Inform Public Services

*4:ケント・E・カルダー『米軍再編の政治学』(日本経済新聞社,2008年)333頁

米軍再編の政治学―駐留米軍と海外基地のゆくえ

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