横須賀市が直面している人口減少問題に有効な打開策が見つからない。ことに他の都道府県や海外との転出入の差(社会増減)は転出超過が続いており、財政改善の観点からも定住促進が急務だ。市は春にも地元経済界と協力し、子育て世代に照準を合わせた定住支援サービスを探る。
 横須賀市の推計人口は41万5千人(昨年12月1日現在)で、前月からは200人を超える減少だった。41万4千人(同)を抱える藤沢市に肉薄されており、近く追い抜かれるのは確実な情勢。2007年に市の出した推計では「25年には36万人にまで減少する」とみられている。なかでも勤労・子育て世代の転出が大きい。昨年1〜11月の社会増減数は1200人のマイナスだった。20〜30代の転出超過数は900人を超える。
■転出抑制
 市は08年度から5年間の期間で、新婚・子育て世代が初めて住宅を市内に取得する際の助成や、民間賃貸住宅を借りる新婚世帯への助成などを制度化した。これまで3200件の申請があり、交付決定額は12億円に達した。
 ただ現実には申請者のうち4分の3を、既に市内に在住している人が占めているため、新しい定住人口の創出よりも転出抑制策としての色彩が濃い。もともと横須賀の住人には地元志向が強く、助成金が流出の歯止めになったかどうかの判断はつきにくく、市政策推進部も「期待した効果はついてきていない」と認める。地元の信用金庫では定住支援制度に合わせた住宅ローンを用意している。それでも実際の市場は「新規取得より借り換えに主流が移っている」のが実情だ。
■官民連携
 市は12年春、横須賀商工会議所と連携した新たな定住促進支援策に乗り出す。
 地元経済界から子育てサービスに関する情報を集めてインターネットで提供し「市民が普段感じている満足度を市外へ伝える」(政策推進部)枠組みを検討中。厳しい財政事情を背景に、住宅取得の助成から軸足を移す狙いもある。ただ湯口勉・浜銀総合研究所主任研究員は「人が都心部に回帰する流れは続いており、東京や横浜、川崎、埼玉で伸びる余地がある一方、半島部分が置き去りにされている構造は変わっていない。状況改善には大胆なことをやる必要がある」とみている。

本記事では,横須賀市における定住促進の取組を紹介.2002年以降,人口推移は漸減傾向にあり,「平成22年12月31日」現在では「417,788」*1名にある同市.本記事の中段では,民間賃貸住宅を借りる場合への助成制度の実施状況を紹介.
同助成制度は,「スイートホーム応援制度」*2.同制度の申請のしおり,を拝読させて頂くと,「結婚を機に新居を求める新婚世帯」が,同「市に魅力を感じて定住するよう」に,「まず」同「市に住んでいただく」ことを目的に,「新婚生活の地」に同「市を選んでくれた方」へ「家賃の1か月分に相当する額を奨励金として交付」する制度.なるほど,確かに,助成制度の整備段階では,市外からの新たな転居を想定した制度としても想定されていた模様.
交付条件を拝読してみると,「礼金のない民間賃貸住宅を借り,婚姻前後6か月以内に当該住宅に住んだ方」であること.「夫婦ともに40歳未満の方」であること,「生活保護を受けていない方」であること,「夫婦のいずれかが日本国籍」であること,「税と各種料金に滞納がない方」であることの5つの要件であり,これらの5つの要件を満たしたうえ当該「夫婦」が「当該住宅に6か月以上住んだ後」に「交付され」*3ることが記載.そのため,明確には,市外在住であることは,これらの交付要件には置かれてはないとも解される.上記目的と交付要件の規定との「齟齬」*4によるものであるのだろうか,本記事を拝読させて頂くと,「現実には申請者のうち4分の3を,既に市内に在住している人」であるとも紹介.事業の実施段階での目的が転移されるようでもあり,悩ましい.

*1:横須賀市HP(市政情報横須賀市紹介市の概要人口・統計)「横須賀市の人口推移(明治41年〜)

*2:横須賀市HP(くらし・環境住まい横須賀に住もう! ファーストマイホームは横須賀で!スイートホーム応援制度 補助金)「スイートホーム応援奨励金交付申請のしおり

*3:前傾注2・横須賀市(スイートホーム応援奨励金交付申請のしおり)1頁

*4:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),214頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

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