滋賀県嘉田由紀子知事は4日、公開討論型の世論調査を新たに導入する方針を表明した。数千人規模の県民に協力を求め、十分な情報を提供し、責任を伴った世論を把握する手法で、エネルギーや社会保障地域主権改革などをテーマに想定している。
■エネルギーなどテーマ
 メディアが大衆向けに流す情報や恣意(しい)的な質問などの影響を受けない状況で県民の真意を探り、県の政策や関西広域連合の取り組みに役立てる。同調査は1990年代に米国の政治学者が提唱し、国内でも一部自治体が実践しているという。調査は2〜3日かけて行い、特定のテーマについて議論を深めてもらう。最初の判断と問題の本質を理解した後の考え方を比較するなど合意形成のプロセスも重視し、参加した県民それぞれが満足する答えを導き出す。嘉田知事は「意識が多様化している成熟社会にふさわしい調査。エネルギーがいるが、ぜひ今年どこかでやってみたい」と述べた。

本記事では,滋賀県における世論調査の取組方針を紹介.本記事では概括的な記述ではあるものの,本文から推察させて頂くと,恐らくは,2008年9月1日付の本備忘録にて記録した神奈川県,そして,2010年2月1日付の本備忘録にて記録した藤沢市による「討論型世論調査(Deliberative Poll)」を導入される方針の模様.ただし,同取組方針に関しては,現在,同県HPでは確認できず.公表後,要確認.
現在,同県では「県政全体に関する満足度と県政の当面する主要課題等をテーマ」の把握を目的として世論調査を毎年実施されている.例えば,2011年度版の世論調査である「第44回滋賀県世論調査」では,「県内在住」の「外国人を含む」「満20歳以上の男女個人」を対象に,「選挙人名簿および外国人登録原票」を「抽出台帳」として用いて,「層化二段無作為抽出法」により「標本数3,000人」*1を抽出し,実施している.本記事を拝読させて頂くと,これらの従前の世論調査に留まらず,「議論」にも重きを置かれているようでもあり,「適切な仕掛けがあれば,ある程度の人々は,それなりにデモクラシーに関与する可能性」*2を具体化されている取組としても理解できそう.興味深い.
方や,上記の通り,現在でも,本記事にいう「数千人規模の県民に協力」を通じた,世論調査を実施はされている.そのため,既存の上記の世論調査と,新たな世論調査との間の「参加のゆがみ」*3の虞をどのように棄却されるのか,今後の具体化の過程も,要経過観察.

*1:滋賀県HP(組織から探す広報課県政世論調査)「第44回滋賀県政世論調査」1頁

*2:田村哲樹「デモクラシーのためのアーキテクチャアーキテクチャをめぐるデモクラシー」宇野重規, 田村哲樹, 山崎望『デモクラシーの擁護』(ナカニシヤ出版,2011年)206頁

デモクラシーの擁護 ―再帰化する現代社会で―

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*3:ジェイムズ・S・フィシュキン『人々の声が響き合うとき』(早川書房,2011年)84頁

人々の声が響き合うとき : 熟議空間と民主主義

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