「天下り」と呼ばれる自治体職員の再就職をめぐり、千葉県の取り扱いが同じ首都圏でも東京都、神奈川、埼玉両県と大きな開きがあることが分かった。千葉だけは毎年の公表規定が明文化されていない。県関連団体や民間企業への再就職も、神奈川などのような一部禁止・自粛規定はない。地方公務員の再就職の取り扱いは各自治体に委ねられているが、千葉県は自主的に対応の変更予定はないという。 (白名正和)
 県が九月議会で、議員の質問に答える形で退職幹部の再就職状況を公表したのを機に、四都県の公表基準などを本紙が調べた。再就職に関しては、千葉以外の三都県はいずれも取り扱いを要綱などで明文化。課長級以上の再就職先や役職の公表を規定し、毎年ホームページでも公開している。千葉には「基本方針」があるが、中身は二項目で、実質的に民間への再就職で公共事業にかかわる営業活動を二年間行わないよう規制するだけだ。民間への再就職も、神奈川、埼玉は一定期間、職務で関係があった企業への再就職を自粛・禁止する。千葉は「職業選択の自由がある」(担当者)と制限していない。外郭団体などへの再就職も、埼玉は50%以上出資するなど関係の深い団体へ役員として再就職するのを原則禁じる。神奈川は、再就職を繰り返す「わたり」を禁じ、退職金や功労金の受け取りも禁止を明記。千葉は退職金を支給しないよう再就職先の団体に指導しているのにとどまる。再就職については、国家公務員法で各省庁によるあっせん禁止などを規定している。地方公務員の場合、各自治体の独自の判断で要綱や、大阪市のように条例で規定する自治体もある。千葉県は今後についても「地方公務員法で規定されれば対応する」(担当者)にとどまっている。
◆過去3年分 県課長級以上の6割も
 県によると、二〇一〇〜一二年度の課長級以上の退職者二百七十二人のうち、六割の百六十五人が県の紹介で団体や民間企業に再就職している。再就職先は、八十三人が民間、三十九人が県が25%以上出資するなど関係の深い公社や外郭団体、四十三人が公益法人や国の機関だった。直近の一二年度の再就職者は五十六人で、県は「雇用する会社などの要請に応じただけ」と説明するが、県を通じて毎年五十人程度が再就職していることになる。部長級以上が役員として再就職することが多い外郭団体には、常勤役員の平均年収が千二百万円と高額な幕張メッセやかずさDNA研究所なども含まれる。この中には一九五五年度から五十八年間、県OB十七人が再就職を繰り返す県信用保証協会長職といった「指定席」もある。県が外郭団体と位置付ける三十七団体には、一一年度に補助金など計百四十五億円が支出されたが、常勤役員は八十二人中四十人(昨年七月現在)を県OBが占める。民間企業への再就職(過去三年)を県の部署ごとにみると、公共事業が多い県土整備部が最多の四十一人。県は再就職先の企業に工事費など二百七億円を支出している。再就職先企業への事業発注に関し、県は民間に再就職する職員に二年間は県への営業活動をしない誓約書を提出させているとしている。

本記事では,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県における幹部職員の再就職の公表状況を紹介.本記事は,同紙による調査結果.後期の講義のテーマである地方公務員の人的資源管理のうち離職管理の資料として有用.同紙(web版)に掲載されている4都県の公表等に関する制度の内容は,次の通りに整理されるという.

自治体名 団体への再就職 民間への再就職 公表規定
埼玉県 一部団体へは禁止 再就職の禁止規定あり あり(課長級以上)
千葉県 (明文規定なし) 県への営業活動を一部制限 なし
東京都 (規制なし) 都への営業活動を一部制限 あり(課長級以上)
神奈川県 退職金はなし,わたりは禁止 再就職の禁止規定あり あり(課長級以上)

本記事で紹介されている1都4県のうち,東京都の公表の現状は,2010年10月12日付の本備忘録で記録した「都庁版人材バンク」を通じて,再就職状況を公表する.同バンクに関しては,同都HPを参照*1.公表されている2009年度*2,2010年度*3,2011年度*4,2012年度*5の公表分を再整理してみると,以下の通りとなる.
【局長級】

年度 監理団体 報告団体等 公益団体 民間企業 再任用 その他
2009 8 3 1 0
2010 5 7 0 2 0 1
2011 10 5 3 0 0 1
2012 5 6 3 0 0 0

【部長級】

年度 監理団体 報告団体等 公益団体 民間企業 再任用 その他
2009 11 9 17 18
2010 17 12 22 16 15 5
2011 12 5 18 17 12 7
2012 16 5 13 10 8 5

【課長級】

年度 監理団体 報告団体等 公益団体 民間企業 再任用 その他
2009 27 8 28 13
2010 30 5 22 11 40 26
2011 20 6 20 12 32 24
2012 38 18 31 24 35 20

上記の公表結果からは,再就職された各職位の職員の場合,まず局長級では,「都が出資又は出えんを行っている団体及び継続的な財政支出,人的支援等を行っている団体のうち.全庁的に指導監督を行う」「監理団体」が再就職者が多く,次いで,部長級では.局長と同様に監理団体と「都の財政支援等が少なく,運営状況の報告のみを受けている」公益団体と民間企業がほぼ拮抗.最後に,課長級では監理団体と公益団体,そして,再任用制度を通じた再就職者数が多いことが分かる.「人材の維持・引止め」としての「リテンション」*6としての再就職か,継続雇用としての再就職か,他道府県の動向も要確認.