多摩市議会が統一見解としてまとめた市の事業評価に対し、阿部裕行市長ら市幹部が質問する意見交換会が1日、同市役所で開かれた。会派ごとに行っていた事業評価を今年から改め、議会の総意として出されたものを今後の政策に反映させようと初めて実施された。しかし、普段は質問に立つ市議が逆の立場になると、まともに答えられず、防戦一方で、意見交換とは名ばかりの会だった。
 冒頭、マイクを握った阿部市長は、「(事業評価を)会派ごとではなく議会の総意としてまとめていただいたことは大きな一歩だ」と持ち上げた。だが、中身については「両論併記のものや内容が曖昧なものも多い。議会としての意思を明確にしてほしい」と、議会側に先制パンチを打ち込んだ。議会は2011年度の事業のうち、8事業に絞り、事業評価を行い、これに対し、後藤泰久副市長が質問に立った。後藤副市長は、若者や女性たちが参加できる仕組みを作るため、訓練の内容を改めるべきだと判断された消防団に関する事業について尋ねた。
 「訓練内容についてどのような方向性で改善すべきなのか」と問うと、加藤松夫市議は「災害が起きた時に消防署との情報共有ができるような訓練をすべきだ」と的はずれな答弁をした。また、民間に比べ、経営努力が足りないと指摘された公立保育園の運営についても、「大幅な見直しや改善の具体的な方法は」と質問。岩永久佳市議は「現状は、公立保育園廃止論を乗り越えられるだけのパフォーマンスができていないという意味。具体的な議論はこれから」と、述べるにとどまった。
 議会では決算認定の際、各会派ごとに事業評価を行っていたが、同じ事業についても評価がバラバラで、市側は参考にすることができなかった。そこで議会の存在意義を高める意味でも、統一見解を出すことになったのだが、結果、具体性に欠ける進言や指摘ばかりで、意見交換の場でも質問にも答えることができなかった。さらに、統一見解といいながら、両論併記以外にも、少数意見を書き込んだ箇所も散見し、後藤副市長からも「議会としての総意なのか」と突っ込まれた。安藤邦彦市議は「議会としての合意形成を行うのは至難の業。試行錯誤の段階で完全な一致ではないが、議論したことに価値がある」と強弁した。だが、意見交換会を傍聴した多摩市議会ウオッチングの会代表の神津幸夫さん(73)は「政策に関する具体的なやりとりを期待していたので残念」と不満な様子だった。

本記事では,多摩市における同市議会による事業評価に関する意見交換会の開催概要を紹介.
同市議会では,「決算・予算の連動」の具体化を目的」としして,2011年度の「決算審査」と2013年度の「当初予算審査」を行う「予算決算特別委員会」を設置.2012年「9月19日から27日までの7日間の日程」に決算審査を行われ,同月「20日・21日・24日」には「4つの分科会(総務・健康福祉・生活環境・子ども教育)」を設け「事務事業評価」*1を実施.同事務事業評価の結果は,同市HPを参照*2
今回,同市議会が評価を実施された事務事業は以下の8事業.各評価毎で,まずは分科会内での意見の一致度を評価,そして,その意見を踏まえた当該事業への提案をそれぞれまとめている.評価と提案のみを抽出すると以下の通りとなる.

事業名 評価 提案
庁舎管理経 大勢一致 改善し継続する
消防団運営経費 大勢一致 現状のまま継続する
多摩市社会福祉協議会助成事業 全会一致 改善し継続する
いきがいデイサービス事業 全会一致 改善し継続する
環境衛生管理経 全会一致 改善し継続する
住宅耐震改修等促進事業 全会一致 改善し継続する
公立保育園管理運営費 全会一致 改善し継続する
図書館運営事業 全会一致 改善し継続する

評価では,「大勢一致」が2事業,「全会一致」が6事業.提案では,「現状のまま継続する」が1事業,その他の7事業は「改善し継続する」との結果にまとめられている.
同市議会が用いた「事務事業評価シート」*3を拝見させて頂くと「必要性」「公共性」「費用対効果」「成果」の4つの評価項目を設け,それぞれの評価項目に6つの「評価基準」を置き,「きわめて〇〇性が高い(25点)」から「〇〇性がない(0点)」の6段階で各会派毎に「事前評価」.この各会派毎の事前評価結果をもとに,上記の分科会が4つの評価項目への「評価点」を付けて「分科会評価」としてまとめている.ただ,この事前評価と分科会による「評価点」との間では,事前評価において会派が最も多く評価項目としてあげた評価基準を,そのまま分科会の評価点として採用されているわけではない.「全会一致」と「大勢一致」とに分科会で評価されている8つ事業では,各会派毎の事前評価における各評価項目の評価結果は,各会派毎での評価が項目毎に多寡があることも分かる.実際の分科会での評価結果に至るまでに,どのように集約されたのだろうか.要確認.
とはいえ,まずは,議会内での「自治体政治レベルの党派的権力」*4を超えて,評価結果の一致への試みは,興味深い.本記事にて紹介された,2012年11月1日に開催された「「議会の評価」に関する市長等との意見交換会」」*5の結果も,議事録等で公表される場合には,こちらも要確認.