地方自治体が国の補助金を受けて整備した施設について政府は、本来の用途以外の転用や譲渡を認める基準を、今夏ごろまでに大幅緩和する方針を固めた。完成後10年たてば自治体が自由に転用でき、補助金の返還も不要となる。関係省庁が近く新たな基準を定め、自治体に通知する。
 例えば、国の補助金を受けて建設した学校や幼稚園を、国に報告するだけで高齢者向け福祉施設や地域交流拠点に転用できるようになる。建設したものの利用者が増えず、維持管理に費用がかさむ施設を、自治体が廃止することも容易になる。補助金の使い方を定める補助金等適正化法などでは、補助対象施設の耐用年数(建物は多くは50年)が過ぎるか、補助金を全額返還すれば、自治体が転用や譲渡、取り壊しを自由にできるとしている。耐用年数に達しなくても、所管省庁に申請して承認を受ければ転用などが可能。しかし、承認基準が省庁ごとに違うほか、転用後の用途を所管省庁の関係分野に限定するなど様々な条件がつくことも多く、自治体からは「制約が多い」との不満が出ていた。補助金を所管する各省庁の連絡会議が近く、新たな指針をまとめる。新指針案では、「おおむね10年経過すれば、補助目的を達成した」とみなし、10年後からは原則として自治体が報告すれば、国が転用などを承認したものとして扱う。その場合、省庁は補助金の返還を求めず、用途や譲渡先にも過剰な制限はしないようにする。10年たつ前でも、災害で施設が壊れた場合や、市町村合併に伴って施設を転用・廃止する場合は、10年経過した場合と同じ扱いにする方向だ。ただ、今回の規制緩和は、国の補助金行政の枠内での改革。自治体の間では「自由に使える自主財源を増やすべきだ」との声が多い。(五郎丸健一)

同記事では、国庫補助金による補助対象資産の転用等を認める期間を、今後政府では、10年間に短縮する方針であることを紹介。同記事にいう、「政府」が具体的にどこを指しているか、そして、具体的な工程はどの様なものかという詳細については、他の新聞情報を検索しても、掲載されておらず把握できない。ただ、「仕切られた中での自由」が向上されることは、「仕切られた中での秩序」よりは好ましいことになるかと思う。
振り返って見れば、地方分権推進委員会第2次勧告内の「第4章 国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保」にある「III 存続する国庫補助負担金に係る運用・関与の改革」では、次のような答申が示されている*1

(5)補助対象資産の有効活用、転用
 社会経済情勢等の変化により、補助対象資産である施設に係る行政需要が設置当時から変化したような場合において、一定期間経過後において地方公共団体が住民のニーズに応じて他の公共施設・公用施設への転用が実施できるよう、制度・運用の大幅な弾力化・簡素化を図ることとする。
 その際、以下のような措置を講ずる。
?転用を承認する際の要件、条件については、補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度を超えて地方公共団体に制約を課すことがないよう、補助目的の達成、当該補助対象資産の適正な使用のために必要最小限のものとする。
?補助金等適正化法施行令14条に基づく処分制限期間は、地方公共団体のニーズを踏まえたものとするよう、各省庁において見直しを行うこととする。とりわけ、鉄筋コンクリート造の建物等については、地方公共団体の強い要望を踏まえ、補助金等の交付目的の達成を阻害しない範囲で処分制限期間を短縮すべく、見直しを行う。
?補助金等の交付の目的及び補助対象資産の種類に応じ、一定期間経過後において、地方公共団体が他の公共施設・公用施設へ転用しようとする場合には、国の個別承認に代えて届出制とするよう各省庁において具体的な運用の指針(基準)を定める。

読み返して見れば、同勧告では規制緩和する路線では一貫しているものの、各省への承認基準や処理制限期間については、各省の判断裁量を与える内容となっている。同記事の取り組みが実現された場合、利用期間を超過すれば、自治体の判断裁量の対象へと自動移行することになる、というものかと思われるため、各省からの判断からも回避することができるよう。ただ、実際に同年限が確立した場合であっても、全ての施設をある程度一律の年限で移行することには、各省から「個別特殊事例」としての除外要請が出てくることも想定される。その場合、それぞれの一件審査は、どのような場で、如何に進めるのだろうか。

*1:地方分権推進委員会『第2次勧告