◇職員をリストアップ 周南市は、スポーツの全国大会や長期海外派遣などの経験がある市職員を活用する仕組みを作り、年内にも派遣を始める。これまでにバドミントンなどの元国体選手や元甲子園球児らのほか、国や県などの出向経験者もリストアップ。地域活動など幅広い場面での活躍を期待している。市によると、スポーツ・文化の分野では、陸上(国体)やソフトテニス(全日本実業団選手権など)、ホッケー(全国クラブ選手権など)、サッカー(天皇杯)などで活躍した20〜40代の市職員が計29人。派遣経験者は、海外4人▽国(旧自治省)1人▽県など55人▽地方公共団体3人▽自治大学校46人−−の計109人に上る。市はこれらで職員が培った知識や経験を市民のスポーツ・文化・地域活動などに生かそうと、現在「人材バンク」に近い形での派遣体制づくりを検討中。この他でも、災害などのボランティアや地域のレクリエーションなどで活躍する職員がいれば、順次加えていく考えだ。市人事課は「まだまだ検討すべき課題は多いが、年内には人材を活用するシステムを作って派遣を始めたい」としている。【内田久光】

同記事では,周防市において,種々のスポーツ・文化等の経験を有する職員や他の自治体及び各種団体への出向経験を有する職員が身に付けている様々な経験や知識を,地域のスポーツ・文化活動で利活用ができるように,「人材バンク」のような派遣制度を設ける予定であることを紹介.同記事の内容については,未だ同市HPには掲載されていないようであり,具体的な制度内容(全体像)も十分に把握できていない.公務員の専門性には,その職に起因する専門性(スペシャリスト)のみならず,個々人の経験に基づく専門性(プロフェッショナルズ)と敢て腑分けすれば.後者の専門性については組織間での移動が可能*1とされている.同制度は,前者の専門性もまた,「疑似的」はあるが組織間での移動が可能な価値を含むものであることを証明することになるか,はたまた,単なる最大動員としての制度か.興味深い.
また、人事育成の観点から同制度を考えてみると,出向経験による技能を開陳する「キャリア・デベロップメント・プログラム」*2としても,興味深い制度.(毎度おなじみの参照文献ですが)財団法人日本都市センターが,全国の都市自治体に対して,2007年11月〜2008年1月に掛けて実施した郵送質問紙調査でも,都市自治体職員の行政機関等への公的部門への派遣制度について尋ねている.調査結果からは,研修プログラムがある都市自治体は77.0%であり,外部派遣制度はほぼ「標準装備」に近い研修制度といえる.そして,その派遣先は,当該都市自治体が所在する都道府県が約8割とある.より現実的な行政課題への接近や職員間のネットワーク形成,そして,何よりもコストの観点からは,都道府県への派遣が大半を占めていることには納得.また,3割は国の機関へ派遣がなされている*3.派遣後の人員配置に関しては,同調査では尋ねていないため把握はできない.断片的にではあるが,観察をさせて頂いた都市自治体のうち,比較的中小規模であれば.比較的派遣先に相応の配置がなされることも多い模様.ただし,その場合であっても,派遣時に体得した各種技能(もちろん,派遣先で,組織間において汎用性の高い各種執務技能の提供があることが前提とはなるが)を各職場で十分に活かし切れているかについては,下名では把握しきれていない(これはむしろ職員個々人の資質の問題か).今後も観察を続けたい.

*1:田尾雅夫『会社人間はどこにいく』(中央公論新社,1998年)126頁

会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで (中公新書)

会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで (中公新書)

*2:佐野陽子『はじめての人的資源マネジメント』(有斐閣,2007年)109〜110頁

はじめての人的資源マネジメント

はじめての人的資源マネジメント

*3:財団法人日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』(2008年3月)194〜195頁