志摩市役所の新庁舎が同市阿児町鵜方に完成し16日、開庁した。2004年の合併以来、旧5町に分かれていた行政機能を1カ所に集約し、新たな一歩を踏み出した。
 新庁舎は鉄骨鉄筋7階建て延べ約1万平方メートル。1階には各種証明などの窓口や税、福祉関係を配置。交流の場となる情報コーナーなども設けた。2階にはレストラン、6階には展望ロビーがある。駐車場は平面と立体の2カ所を整備し、計約200台収容できる。昨年6月に着工し、今年8月末に完成。総工費は29億1900万円。統合庁舎完成で、住民サービスの向上や、各課間の連携がしやすくなるなど行政効率化が図れるとしている。16日朝、正面入り口前で開庁式があり、竹内千尋市長が「新たな志摩市の歴史が始まる。市民の笑顔で満たされるよう努力していきたい」とあいさつ。テープカットなどで完成を祝った。

同記事では,志摩市において,新庁舎が建設されたことを紹介.志摩市では,2004年の合併後に「機能別」に「分立」*1した組織機構である分庁方式を採用.今回の新庁舎建設により,いわゆる「本庁方式」へと機能が「統合」される模様.
8月25日付の本備忘録で紹介した,『合併市町村職員研修の支援方策についての報告書』に集録された伊藤正次先生によっても,同市の分庁方式に関しては分析されており同市の取り組みを「合併後,比較的早期に職員の一体性を醸成し,統合的な人事管理体系を構築することに成功した」(118頁)との評価が示されている.これは,同報告書に集録されている,木寺元先生による合併市町村における人事管理に関する分析結果では,「分庁方式を採用した場合は,重複する部局の存続が認められがたいため,必然的に管理職ポストは整理せざるをえない」*2ことをも反映してのことなのだろうか.
一方で,同稿では,同市の観察結果から「庁舎間の地理的懸隔がもたらす調整コストは依然として高い」*3とも分析も示されている.そこで,本庁舎から志摩市内の各分庁舎の距離を同市HPで見てみると,*4,阿児分庁舎へは本庁舎から徒歩3分,磯部分庁舎へは本庁舎から国道167号を7キロメートル(約15分),浜島分庁舎へは本庁舎から阿児線を10.5キロメートル(約20分走る),大王分庁舎へは本庁舎から国道260号を9キロメートル(約18分走る),志摩分庁舎へは本庁舎から大王を通って国道260号を23キロメートル(約30分走る)とあり,確かに各「分立」組織機構間での離間距離もまた高い模様.それゆえに,伊藤正次先生の結論の一つである「分庁方式の長期的な持続可能性は,必ずしも高くないのかも知れない」(123頁)との見通しは,まさにその通り.
合併市町村の33.3%が採用した「分庁方式」*5も,遠くない将来には「統合」路線を歩むことになるのだろうか.

*1:金井利之「空間管理」森田朗編『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)166頁

行政学の基礎

行政学の基礎

*2:木寺元「合併市町村における管理職人事の調整」財団法人自治研修協会『合併市町村職員体制の支援方策についての報告書』(2008年)133頁

*3:伊藤正次「合併自治体における分庁型組織体制の現状と課題」財団法人自治研修協会『合併市町村職員体制の支援方策についての報告書』(2008年)202頁

*4:志摩市HP「志摩市役所へのアクセス

*5:総務省HP・市町村の合併に関する研究会『「平成の合併」の評価・検証・分析』(2008年6月)37頁