政府は三日、道州制特区推進法で道だけに認めている権限移譲の提案権を、地方自治法に基づいて複数の都府県で結成する広域連合にも拡大する方針を固めた。提案権を広げることで、道州制のモデル地域を道以外に設け、国民の関心を高められると判断した。五日召集される通常国会道州制特区推進法改正案を提出する考えだ。
 同法では、提案権は道のほかには、三つ以上の都府県が合併して新たに誕生する都府県に限っており、事実上、道に限定している。広域行政をめぐっては、大阪、京都を軸にした二府八県と大阪市など四政令市で現在、関西広域連合を今年七月にも設立する動きが加速している。広域連合への加盟を検討している自治体から、道州制特区推進法の適用を求める意見が出ており、政府は提案権拡大が必要と判断した。ただ、通常国会は、衆参ねじれ現象の下で、二〇〇八年度補正予算案と〇九年度予算案審議がもつれる公算が大きく、各府省提出法案は絞り込む方向だ。このため、関西広域連合設立が七月よりずれ込む見込みとなった場合、同法改正案の提出見送りもある。
 提案権拡大をめぐっては、昨年十一月の全国知事会議で、高橋はるみ知事が提案権適用地域の拡大を求め、麻生太郎首相が検討する意向を表明していた。

同記事では,道州制改革特区法において認められている権限移譲の提案権を,広域連合にも認めるよう,同法を改正する方針であることを紹介.
2008年3月25日付の本備忘録でも取りあげた同事項であり,同改正案の淵源は恐らくは道州制ビジョン懇談会の『中間報告』.同報告では,「同法に関しては基本的に府県が合併しなければ道州制特区の適用が受けられないという課題があるため、経験上至難とされる都道府県の合併に固執することなく,既に地方自治法に規定されている広域連合などについても道州制への移行の前段として特区の適用ができるようにすべきである」*1とされており,同法の適用範囲を拡大する考えが示されていた.
同記事のみの情報に限定されるため,同法改正の内容が判然としないものの,恐らくは,道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律第6条1項に基づく,道州制特別区域基本方針の変更についての提案(変更提案)を,広域連合も行うことが可能になるものと考えられる.具体的な措置としては,まずは,道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律第2条(この法律において「道州制特別区域」とは,北海道地方又は自然,経済,社会,文化等において密接な関係が相当程度認められる地域を一体とした地方(三以上の都府県の区域(平成十八年四月一日現在における都府県の区域をいう.)の全部をその区域に含むものに限る.)のいずれかの地方の区域の全部をその区域に含む都道府県であって政令で定めるもの(以下「特定広域団体」という.)の区域をいう)のうち,後者に関して,その構成自治体の数を,n≧2と改正されることになるのかとも思われ,「特例主義」*2的な同区域が「普遍主義」的な展開に結びつくともいえそう.
ただ,同条の「自然,経済,社会、文化等において密接な関係が相当程度認められる地域を一体とした地方(三以上の都府県の区域(平成十八年四月一日現在における都府県の区域をいう.)の全部をその区域に含むものに限る」との書き振りは,文面の読み方によっては3以上の都府県の区域のみを含むことが要件とされているとも読めなくはなく,政令による指定さえされれば現行でも3以上の都府県からなる広域連合に対しても,区域指定の適用が可能ではないかとも思われる.同条文の解釈上は難しいのだろうか.良く調べてみなければ.
道州制に対しては,「どのような事務を国から地方に移行すべきで,そのためには現行の47都道府県体制では不具合があるので道州制が必要だとの指摘はどこにもない」*3との現実的な指摘もあるように,同法の改正もまたは,実際に広域連合側から具体的な変更方針の提案が行われるか否かが,まずは前提となりそう.例えば,地方分権改革推進委員会の『中間報告』において言及ししていた,「従来,都道府県域をまたぐ広域的な事業者や事業活動等に対する許認可・監督等の権限は,主に国がこれを担ってきたが,そのうち特に報告徴収,立入検査等の権限については,域外事業者等に対する都道府県の権限を法令解釈上明確にし,あるいは法令改正によってこれを都道府県に付与することなどにより,都道府県が中心となって対応する仕組みに改めるなど,都道府県の広域的な役割の拡大を検討すべきである」*4のうち,事業者に対する許認可・監督等の権限のうち一部については,都道府県ではなく広域連合に「移行」することもありそう.より具体的な提案候補としては,「関西広域連合(仮称)」の設置後の「第3フェーズ」*5までに,具体的な方針提案事項がまとめられるか否かが興味深い動向か(昨今の自治行政関連における関西地域の動向は,興味深い).
なお,蛇足.個人的には,例えば,(恐らく広域連合の構成都道府県の上限数はないとも考えられるので)47都道府県で一つの広域連合を設置し,政府側に対して同法に基づき,道州制特別区域基本方針の変更提案を行うと面白いのかとも思われるが,おとそ気分(と言いましても,下名,下戸ではありますが)の初夢か.

*1:内閣官房HP・道州制ビジョン懇談会道州制ビジョン懇談会中間報告』(平成20年3月24日),26頁

*2:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*3:片山善博「何のための道州制かを忘れてはならない」『ガバナンス』№.93,2009年1月号,26頁

ガバナンス 2009年 01月号 [雑誌]

ガバナンス 2009年 01月号 [雑誌]

*4:内閣府HP(地方分権改革推進委員会委員会の勧告・意見等)『国の出先機関の見直しに関する中間報告』(平成20年8月1日)7頁

*5:関西広域連合HP「関西広域連合の概要