南山城村が、来年度の村職員(一般行政事務職、保育士)採用試験の受験資格として、新たに「村内在住または在住見込みの方」という条件を加えたことが分かった。手仲圓容村長は「いざという時のため村内に住んでもらう必要がある」と説明するが、受験資格を住所地で制限することになるため、競争試験の平等取り扱い原則との関係で議論を呼びそうだ。
 村によると、来年度は一般行政事務職、保育士のいずれも若干名の採用を予定。今月7〜18日に応募を受け付け、10月に第1次試験がある。受験資格の住所地要件は今回新たに付けたもので、逆に年齢は30歳以下とし、前回より範囲を広げた。村によると、現在、村職員50人のうち約半数が村外から通勤。三重、奈良県から通う職員もおり、手仲村長は「災害で道路が通行止めになったら」と不安を口にする。村の人口減に歯止めをかけたい意味もあるという。村は、転入する新職員のため、村内に4戸ある職員住宅(うち3戸が空き家)をリフォームして用意する。
 これに対し、総務省公務員課は「一般的には、広く優秀な人材を確保するため、特段の事情がない限り平等に取り扱うことが望ましい。しかし、職務のため最少かつ適当な限度の要件を定めることはできるので、その必要性があると首長が判断したということでは」と話している。【三野雅弘】

同記事では,南山城村において,職員採用を開始したことを紹介.同受験要件は,同村HPを参照*1.受験要件では,「南山城村内に在住又は在住見込みの方」を前提とされ,「高等学校卒業以上の学歴若しくはこれと同等以上の学力を有する昭和54年4月2日以降に生まれた人」(「平成21年度南山城村職員採用試験要綱」より)とあり,学歴,年齢要件の前提として,同村の居住要件が置かれている.
まずもって,同記事にも言及されている同要件は,地方公務員法第13条の平等取扱の原則との適合性が懸念されそう.地方公務員法への解釈では,受験資格を定めた同法第19条への行政実例(昭28・6・26自行公発124号)では「へき地勤務の職について,当該地域の近辺に居住する者に限り受験資格を与えることも可能であることされている」とされていたものの,「このような取扱いは,本来,任地は任命権者の裁量による」として,「将来の人事異動に当たり任地を制約することとなるおそれもあるので,きわめて疑問」*2との見解も示されている.また,同行政実例が示された1950年代後半とは「今日においては,住宅事情,交通事情等が異なってきて」いることから,「へき地にも優秀な人材を配置することができる」ことからも,「居住地を制限せず広く募集するように運用が適当」*3ともある.これらからは,居住に関する受験要件を設けないことについての,「制度規制」*4が推奨されてきたともいえる.
同要件が,受験要件に止まるのか,採用後の勤務条件として拘束されることとなるのか判然とはしないものの,同種の受験要件の他自治体における規定の有無と採用後の運用については,要確認.

*1:南山城村HP(新着情報)「平成21年度 南山城村職員採用試験について

*2:橋本勇『新版 逐条地方公務員法』(学陽書房,2002年)261頁

新版 逐条地方公務員法

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*3:金子善次郎編『総論・人事機関・任用・海外派遣』(ぎょうせい,1991年)296頁

総論・人事機関・任用・海外派遣 (地方公務員制度)

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*4:金井利之『自治制度』(東京大学出版会、2007年)41頁

自治制度 (行政学叢書)

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