2009年度に部長、係長を廃止し、中間管理職が課長のみの「フラット制」を導入した大磯町の組織改革が、3年余で見直される。同町は17日開会の町議会3月定例会に部長を復活させる部等設置条例案を提案する。中崎久雄町長は、フラット制では、問題を担当者が抱え込み、意思決定にも遅れが出るなどの弊害が出たとしている。係長も復活させ部長、課長、係長の責任者を再配置。ピラミッド型の組織に戻すことで情報共有やチェック機能の強化を図る。5月1日施行を目指している。
 部制の廃止は、元同町町民福祉部長で06年に当選した三好正則前町長の公約だった。「フットワークのいい、活力ある組織を目指す」として、09年4月の機構改革で、それまで4部あった部を廃止。課を横並びで町長に直属させた。課の内部でも係長を廃止し、課題ごとに担当者を置いた。行政改革で注目されたフラット制は、次長や補佐など肥大した中間管理職や、係長を廃止し、意思決定のスピードアップ、権限の下方委譲、職員の専門性と自主性を育成する試みだ。
 しかし、大磯町の場合、課長と担当者だけという構造の中で、特に若手担当者にとっては負担が重かったという。職員数の問題などから県などが採用している「グループ制」を導入できなかったため、問題を一人で抱え込み対応に苦しみ、意思決定ができずに業務が遅れがちになることもあったという。また、上司が課長だけなので、チェック機能も十分に働かなかった。ポストの削減は職員の意欲低下を招いた面もあったという。今回の機構改革では、町長の下に政策総務部、町民福祉部、建設経済部と危機管理対策室を新たに設置。現在の11課5室を3部11課1室1センターに再編する。課、センターの下には計29の係を置く。現在の「すぐやる室」は廃止するが、町民福祉部町民課町民協働係に「すぐやる窓口」を置く構想。多様化、複雑化する町民ニーズに応えるには、個々の力だけではなく、組織の力で取り組むとした。なお、空席になっている副町長ポストについても、早急に人選を進める。 

(高知滞在中は記事の確認をしていませんでしたので,やや古い記事となりますが)本記事では,大磯町における組織改正の取組方針を紹介.
同町では,2008年2月に策定された『第4次行政改革大綱』に基づき,「地域主権型社会に対応したコンパクトでフラットな行政機構を構築」を目的に実施された「行政機構の見直し」*1.同見直し以前の同町の「機構」*2図からは,1参事5部長体制となり,各課の下では班が複数配置.方や,現行の「大磯町行政機構図」を拝見させて頂くと,なるほど,町長‐副町長の下に各課を配置する「フラット制」*3を採用されていることが分かる.
一方,2011年3月に策定された『第5次行政改革大綱』では,「多様化,高度化する町民ニーズに対応できる柔軟かつ機動的な組織づくりに向けた,行政機構全般の総点検と不断の見直しを進めます」とも明記.本記事を拝読させて頂くと「決裁の迅速化」*4のようにまさに意思決定の迅速化を企図された同制度が,実際には「意思決定ができずに業務が遅れがち」となるディレンマも生じていたことを紹介.まさに,「組織のフラット化もメリットばかりではな」く「デメリットとして顕在化」*5されたとの判断なのだろうか.「行政機構全般の総点検と不断の見直し」により見直される「フラット制」後の機構でも,一度経験された「フラット制」の「メリット」は「メリット」として全て放棄されることなく,上手く反映された意思決定速度の迅速化もあわせて具体化されると興味深そう.

*1:大磯町HP(政策・まちづくり第4次行政改革大綱がまとまる)「大磯町第4次行政改革大綱 実施計画書平成20年度〜22年度」5頁

*2:大磯町HP(政策・まちづくり第三次行政改革行政改革推進委員会:平成19年度第2回(平成19年11月20日開催)「資料2組織の機構改革(案)

*3:大磯町HP(政策・まちづくり第4次行政改革大綱がまとまる)「大磯町行政機構図(平成23年4月4月日)」5頁

*4:大磯町HP(政策・まちづくり第三次行政改革行政改革推進委員会:平成19年度第1回(平成19年8月8日開催)「資料4組織機構改革について

*5:稲継裕昭『地方自治入門』(有斐閣,2011年)154頁

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

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